第67話
「お~燃えてる燃えてる、内山、燃えてるぜ!」
田中君はキャンプファイヤーを指さしながらはしゃぐ、そりゃ、燃えてるだろう。
キャンプファイヤーなんだし。
「誰か、知り合いいないかな……っと、原山と立華さんがいるぜ、よーっす」
田中君は目ざとく原山君達を見つけるとそちらに駆け寄る。
「おう、田中と内山か、お前らも?」
「そんなところだよ、二人も?」
「ああ、バスじゃあまり喋れなかったからな、寝る前に少しだけ」
「ひゅぅ、キャンプファイヤーよりこっちのが熱々だぜ」
田中君がいつもの調子でからかえば、立華さんは見る間に顔を赤くする。
「あまりからかわないでくれないかな? 雪も困ってるし」
「ごめんごめん、じゃ、俺は別のと話してくるよ、んじゃ」
原山君に窘められると、その場を離れ他の人に話しかけに行く。
あの様子じゃもう少し話し込むのかな?
「悪い奴じゃないんだ、少しからかうのは許してやれよ」
「ああ、あいつはお調子者なだけと知っている、別にそこまで怒ってない」
立花さんもとなりで小さく首を縦に振っていた。
「僕も別の人と話してくるよ、ここで馬に蹴られてはたまらない」
僕も最後に少々からかいをいれつつ、原山君と立華さんから離れる。
別の人と言ったが、知り合いがいないものか……
適当に腰かけ、キャンプファイヤーを眺めていると、声がかけられる。
「寂しそうね、内山君」
「そういう君も独りみたいだけど? 小泉さん」
話しかけてきたのは、今日一日バスの中で寝ていた、小泉さん。
この後、消灯時間だけど、眠れるのだろうか、明日に支障がなければいいが。
「一人ぼっちで黄昏てる姿が寂しそうだったわよ、なんかおじさんみたいで」
「僕はまだ15歳なんだけど、おじさん呼ばわりは酷くないかな?」
「そうね謝るわごめんなさい」
「別に怒ってはないさ、しかしなんで僕に声をかけてきたのかな?」
「別に、そこにあんたがいただけよ、深い意味はないわ」
「そっか」
「そうよ」
そのまま、会話は終わり、二人で静かにキャンプファイヤーを眺めるだけに。
小泉さんは一向に座ることなく立っている、疲れないのだろうか。
…………気まずいな。
「黙ってないで何か話したら?」
「そうはいっても、共通の話題って言ったら……ゲームくらいか」
「最近は二人で探索行ってないわね」
「そだね、相棒も外套もないと背中が寂しいね、僕の外套どうなった?」
「とっくに出来てるわ本当は新しいのを買うのを勧めるけどね。今は何処で探索とか修行とかしてるのよ?」
「ファウスト前の草原だよ、景色もいいしね、のんびりスキル上げさ」
「またそこなのね、通りで最近は王都じゃ見ないわけね」
「野宿ってスキルがあってね、外でキャンプしてると取得可能っぽい」
「王都の周りの街を回ったりは? 掲示板にもいくつも情報が出てるわよ」
「まったく見てないね、ま、僕は僕なりに進めていくよ」
「8月にはTFO始まって以来のイベントがあるなんて噂もあるのに……」
「8月だし海か夏に関連したイベントかな」
「おそらくね、真東に港町があるし、そこら辺かも」
「そろそろ、僕も王都に戻るべきかね。」
「戻ってきなさいよ、私も一人じゃつまんないし」
「別の人とチームを組めばいいんじゃないかな、姉さんとかさ」
「ファングさんと私じゃまだ釣り合ってないの、丁度いいのがあんたなのよ」
「さいですか……」
林間学校に来てまでする話題がゲームとは僕も割と染まりつつあるようだ。
「あ、ウッチー、キャンプファイヤー来てたんだ……小泉さんも」
僕の方に駆け寄ってきたのは、今日の昼、小泉さんと少し言い争いになりそうになった、野村さんだった、わざわざ、話してる時に来なくてもいいじゃないか。
「私は邪魔そうだし、そろそろ部屋に戻るわ、じゃあね」
「あ、うん……またね」
小泉さんはあからさまに不機嫌になると、その場を離れていってしまう。
そりゃ、こうなるよね。僕はその後ろ姿に、返事を返すだけしかできなかった。
「何、あれ、今日の昼もだけど、小泉さんって何か感じ悪いわよね」
僕の隣に腰かけると小泉さんに対して開口一番これである。
「そうかな? 姿勢も礼儀も正しくて、いい人だと思うけど?」
「クールぶってて、可愛くないじゃん、ウッチーだって、本当は嫌なんじゃない」
この人は小泉さんの事をどうしても悪く言いたいようだ。
碌に話したことも無いというのに、ここまで悪く言えるのは特技ではなかろうか。
「別に嫌なんかじゃないよ、話してみれば、案外って人はごまんといるさ」
「でもパーキングエリアであれは酷くない? 人が話題出してるところにさ」
「お腹が空いて気が立ってたのと、ああいった手合いのお話が苦手だったのさ」
「なんか、小泉さんの肩持つけど、ウッチーってああいうのが好み?」
「別にそんなんじゃないけど」
「ふ~ん、私とかどう? 私、料理得意だし、ウッチー顔もいいし頭もいいし、彼女いないなら立候補したいなー」
「今そういう気ないから……そろそろ部屋に戻るよ」
ゆっくりと立ち上がり、部屋に戻る事にする。
「明日は山登りだもんね、なんで山なんて登らないといけないのかな。汗とかかくと化粧崩れちゃう」
「そう思うなら、明日は化粧をしないようにすればいいんじゃないかな、それじゃ、おやすみ」
随分と気疲れしてしまった、少なくとも、こうまで気疲れするような野村さんとは付き合う事はないだろうな。早く、部屋に戻って、寝てしまおう。
田中君はまだ、話し込んでいるらしく、当分戻りそうもない。
明日どうなろうと知らないからな、そう思いながら部屋に戻り就寝するのだった。
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