第66話

 ようやく到着した僕らは少々退屈な入舎式を終えてから、荷物を整理するべく部屋の中へ、2泊分と言う事もありそれなりの荷物。それらを片付け終えて。ベッドに横になる、ふぅ、バスに座り続けもあって大分疲れた。


「おーい、内山ー、くたばってないで起きろよー、須々木がゲーム持ってるんだ」

「僕はパス、ほかの人と遊んできてよ」

「んなこと言わずにさー、ほら、スタンダップ! 起き上がろうぜ!」

「うおー、体をゆするなー、わかった起き上がるから」


 田中君の説得(物理)に負けて体を起こし、須々木君が用意してるゲームを見る。

床には陣取りゲームのボードゲームが敷かれていた。まあ、風呂までやらせてもらうとしようか。そしてしばらくゲームをするのだった

 さて、ゲームの結果なのだが。


「よっし、ツイてるな、2連勝だ!」

「このゲーム、バランスいいね、運の要素が入るから、予想が仕切れない所とか」

「僕もそう思う、田中でも2連勝できるくらいには運の要素は断ち切れないのさ」

「俺でもって何だよ、俺でもって! まー、俺は気分良く終われたし、いいわ」

「ふむ、もう一戦しよう、負けっぱなしは癪だからな」

「残念だけど須々木君、時間だよ、そろそろお風呂の準備をしよう」


 この部屋に入ってから僕らはこのゲームにずっと興じていたようで。

時計はすっかり16時を示していた、そろそろお風呂の時間である。


「うーっし、さっさといこーぜー、混む前に入っとくべきだろ」

「賛成、駆け足で行こうか」

「先言っててくれ、準備したらすぐに合流する」


 そういうので既にゲームをやる前に準備をしていた田中君と僕は先に部屋を出る。

部屋を出れば、数名が風呂へ行く道具を持って歩いていた。

考えることは皆一緒という事なのかね。


「やっぱ、もうちょい時間潰してから入る?」

「んー、おなかのすき具合は?」

「そこまで腹は減ってないかな」

「ならもう少ししてから入ろっか、戻ろう」

「りょーかい、おう須々木、もうちょい待ってから入ろうぜー」

「ああ、須々木君、おなかが空いてないなら、もう少し待った方がいいかも」

「ああ、僕なら平気だ、あまり食べる方でもないしな」


 というわけで、もう少し、待つ間、ゲームに興じる事に。

数十分した頃に遠藤先生が部屋に入ってくる。


「おーい、夕飯もう食べれるそうだ、風呂に入った奴は、いってよし、入ってない奴はまず風呂に入ってこーい」


 風呂に入るように催促してきた。


「っげ、もうそんな時間まで回っちまってたか、結構夢中になってたな」

「じゃ、のんびり風呂に浸かってから、ご相伴に預かりに行こうか」

「了解だ」

 

僕ら三人は風呂へと向かう、他の人は食事へと行き始める。

やはりというべきか僕らとは別の方向、食事をとるべく食堂へ向かう者が大半。

まあ、おおむね予想通り。


「もう入ってるやつの方が多いな、やっぱし」

「まあ、その分、湯船はすっかり空いてるさ」

「行く頃には御飯の席も空いてるかもね」

「だといいねぇ」


 1時間、風呂でしっかり今日の疲れを癒すように体を洗い浸かる。

廊下を歩いてる時に田中君は今日の夕飯が豚汁であると言っていた。

いいね、豚汁、野菜がたっぷり入っていると更によしだ。

そうして、浸かり終わるとご相伴にあずかる為に食堂へ。

ちなみに寝間着は学校指定のジャージの者がほとんど

一部には学校指定のジャージではなく、私物のジャージの者もいたが。


「そこ、三つ空いてるな、僕が席を取っておく、二人は先に取ってきなよ」

「お、わりぃな、じゃ、遠慮なくー」

「ああ、折角だし、須々木君の分も一緒に取ってくるよ」


 須々木君に席の確保を任せ、田中君と二人で御飯と豚汁を貰いに行く。

豚汁はお代わりする人も多く、残りぎりぎりだったとの事、食べ盛りの高校生が

明日から山登りと言うのに、夕飯無しはつらい、危なかったな。


「お待たせしたなっと、ほい、こっち須々木の分なー」


適当に、気持ち田中君は自分がお肉が入ってそうな豚汁を確保しつつ渡してく。


「ありがとう、それじゃ、いただきます」

「おなじく、いただきます」

「おう、いただきまーす……うまい! やっぱ豚汁は安定の美味さだな!」

「それには激しく同感だ、ただ、そんな大声で言う事でもないんじゃないか?」

「おいおい、旅先で美味いもんを食べたら、うまい! って叫ぶのが相場と決まってるんだぜ」

「叫ぶのが決まってるか否かは別として確かに美味いね、野菜もたっぷりだし、これは御飯も進むよ」


 豚汁をすすりつつ、ご飯を口にほおばる、御飯もうん、芯は残ってないし、べちゃっとした感じもない、いけるね。


「これはもう、あれだわ、御飯と豚汁一緒にしてかきこみたいわ」

「さすがにそれをこの場でやるなよ、褒められた食べ方じゃぁない」

「わーってるよ、今日は我慢するぜ」


 わかる、その食べ方はまたうまいんだよね、僕もたまに家でやった事ある。


「ふぅ、まだ残ってるかな、ちょっと行ってくるわ」


 田中君はご飯と豚汁の器を持って、おかわりを貰いに行く、ここは運しだいかな。

周りを見れば人はまばらになり始めていた、既に片付けを済ませ談笑する人や。

トランプやカードゲームをしてる人なんかが数名残る程度だ。


「豚汁は残ってなかったわ、でも代わりに残ってた野菜で漬けてた浅漬けくれた!ご飯はまだ残ってたから、これおかずにもうちょい食ってくわ」

「浅漬けと御飯って、気分は昭和の食卓だな」

「昭和でも、まだみそ汁と魚の切れ身はあると思うんだ」

「文句言うなら、浅漬けはやらんぞ」


 浅漬けは田中君が持っていった豚汁の器に山盛りに積まれていた、折角だ厚意に甘えるとしよう、既に空になった、御飯の器を僕も御飯でいっぱいにしてくる。

 そして漬物をおかずに食べることに、つけもののさっぱりした味はこれもまたご飯を進めてくれる、名わき役だ。須々木君は一杯で満足したのか、片付けていた。


 そうして、お腹いっぱいまで食べさせていただき。さあ部屋に戻ろうかと思うと。

外から赤い光が見えた、そういえば、もう18時なのか? どこか備え付けの時計でもないかと見渡すが見当たらない、携帯電話持っておけばよかったな。


「もう18時みたいだな、外出るのか? 僕は部屋に戻って明日に備えて寝ようと思ってるが、ただでさえ、あまり体力がある方とは言えないからな」


 須々木君が携帯電話で時間を確かめて、そう言ってくる。

田中君は、行こうぜと誘ってくるが、まぁ、明日もあるから無理はせず少しだけと言い含めて、僕らはキャンプファイヤーへと足を運ぶことに。


「二人もあまり夜更かしはするなよ、明日の山登りで痛い目みたく無いならな」


 ストレートな物言いが多い為、少々誤解される場面の多い奴と思ってたが。

彼は彼なりに少々強い口調ではあるが、気遣ってくれるのが見えた。

こういった普段とは違う状況で会話をして、違う一面を見たりして。

仲を深めあうのも林間学校などの理由なのかもしれない。

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