第65話

「あーっと……アイス」

「スズメでー」

「めだね、じゃあ明治めいじ

截拳道ジークンドー

「はやっ、ど、ど……髑髏どくろ!」

「おっと、ろかぁ、漏斗ろうとで」

「とかぁ、じゃあ、トロールと言おうかな」

「ルイ18世」

「またかよ! 内山おめーそれ何回やるんだよ! おい!」

「19世以降は公式に即位して認められてないからこれ以上は使わない」

「ルが来るたびにそれを使うのは卑怯だと思うんだ」

「そーだそーだー、もっと語彙力見せろー」

「正直言おうか……高校生にもなって暇つぶしにしりとりしてるのなんて僕らくらいじゃないか?」

「まあねえ」

「いいじゃんしりとり、結構楽しいでしょ」

「とにかく、いだな! えっと……だ!」


 バスの中僕と細川君、田中君、園田さんの4人はしりとりをしていた。

かれこれ1時間はずっとこれである。正直僕は飽き始めている。

後ろを覗けば誰かが持ってきていたのであろう、トランプやウノで遊んでいた。


「なぁ、誰かトランプやウノは持ってないのかい?」

「私もってないなー、あ、井伊直正いいなおまささんで」

「同じく、持ってきてないよ、斎藤龍興さいとうたつおきで」

「何、この戦国押し木下秀吉きのしたひでよし

「そこで木下出すお前もお前だがな、あーっと、……島津しまづ

「づ? づってあったっけなぁ」

「おーい、しりとりそろそろお終いにしろ、次のパーキングエリアで休憩だ」

「ういーっす、じゃぁ、パーキングエリアについたときに残してたら負けな。

負けた奴はジュース驕りだったよな、これは園田さんかな?」

「ええー!? えっと、えっと、あ! づら!」

「うーん、やっばいなぁ、ライターで」

「タかぁ、ちょいと長考」

「おう、もうパーキング入るぜ、こりゃ内山の負けかな」

「ターコイズ」


入る直前に回してあげる事にした、勝つためだ許せ。


「っちょー! ギリギリはせこくない! さっきまで早業回答してたのに、ここで、わざと長考とかいっただろ! ずっけーぞ!」

「はい、パーキングエリアに入ったよ」

「まった、止まるまで止まるまでだ! えっと、ずだよな、図画工作ずがこうさく!」

「自分で決めたルール返すのはずるくないですかー! く、く、空調くうちょう!」

「うだね、えっと、そうだ! うるし!」

「し、かぁ…………」

「わざとらしく考えるの無しだろ! そうやって止まる直前に回すのやめよ!」


すでに駐車する為の場所につきバックを始める、結構ギリギリだったな。


「シャーロック・ホームズ」

「そりゃないぜ! ずるい、ずるいぜ! ちんちきしょう!」

「お前ら、しりとりでよくそこまで熱くなれるな、ほら、ついたぞ、ここでトイレ休憩と昼食だ、1時間後にバスに集合だからなー」


 その言葉と同時にクラスメイトはぞろぞろとバスから降りていく。


「おーい、小泉さん、休憩所についたよ、そろそろ起きたら?」


 白熱のしりとり合戦を繰り広げる中でもずっと寝ていた小泉さんの肩をゆする。


「んう? ああ、結局ずっと寝てたのね、おはよう」


 今度は平手打ちを喰らわずに起こせた、あれを何度も受けたくはない。


「はい、おはよう、僕達も降りよっか」


既に田中君達は降りている、さて、昼はどうしたものか。


「何食うべ?」

「ごめん、その前に僕トイレ」

「私も今のうちに言っとくー」


 細川君と園田さんはトイレへと向かっていく、まあ、携帯があるしそれで連絡取ればいいしね。


「田中君と小泉さんはトイレ大丈夫? 僕は今は平気」

「俺も後でいいや、バス乗る前に行く」

「私も今のうちに行っておく」


 そういって小泉さんもトイレに行ってしまう。


「んじゃま、三人が来た時に飯が食えるように適当に席取りに行きますか」


 と言う訳で、フードコートへ、数名が既に陣取り始めていた、僕らも取り急ぎ席を確保しておくとしよう。あそこなんて、どうだろうか。


「田中君、ちょっと奥の方になるけど、5人座れそうだよ、あそこ」

「お、じゃあ、あそこにしようか、急げ急げー」


 奥の席と言う事もあって、特に邪魔もなく確保に成功する。


「後は来るのを待つだけだなー」

「僕ここにいるから、先に何食べるか決めてきていいよ、後、蕎麦屋があったから、そこで掻き揚げ蕎麦とちくわの磯部上げ乗っけたの注文しといて」


サイフから野口さんを一枚だして田中君に渡しておく。


「おっけー、何にしよっかなーっと」


 田中君は一人で食事の注文に歩いていく、ま、僕はのんびりパズルゲームにでも興じるか、スマホにはいくつか暇つぶし用のパズルゲームを入れている。バスの中だと酔うのでやらないけどね。


「あれ? ウッチー一人? お友達は?」


 そう声をかけてきたのはカラオケ以来、何度も僕に話しかけてくる、野村文さん

中間テストの時にも勉強を教えて欲しいと持ち掛けられたので田中君や須々木君他にも数名で勉強会を開いた、野村さんは不服そうだったが。


「いや、田中君と細川君、それと園田さんと小泉さんが一緒、田中君は昼食の注文に言ってもらってね、他の三人は用を足しに行ってるよ」

「ふーん、隣座るねー」


 野村さんは田中君がさっきまで座っていた席に僕の了承を得る前に勝手に座り喋り始める、やれ。あの子がその子がと噂話を話始める、何も言わなければずっとだ正直苦手、人がどうこうは僕は気にしない気になったら聞くのが早い。


「お待たせ内山君。それと野村さん、何でここにいるの?」

「あれ、本当だ何で野村さんがいるの? 田中君は?」

「あれじゃないかな? なんかお蕎麦とハンバーガー店の袋持ってるけど?」


 三人が戻ってくると同時に田中君も僕の料理そして自分のご飯を買って戻ってきてるようだ、これでようやく解放される。


「ああ、蕎麦は僕が買いに行かせたんだ、ハンバーガーは自分の分かな?」

「おーう、これ、内山の蕎麦なー、あれ? 俺の席は?」

「ああ、僕がどくよ、こっち座ってなよ、食べるもの決まってるなら僕の分と一緒に買ってくるけど? 決まってる?」

「私もハンバーガーでいいわ」

「あ、私もー」

「了解、じゃ、僕もハンバーガーでいいか、じゃ行ってくるね」

二人からお金を預かって、田中君と入れ替わりで細川君が店の方へ消えていく。

「野村さん、班の人の所に戻らなくて大丈夫?」

「んー、ちょっとくらい平気でしょ、自由行動中だし」


 彼女の話はまだ終わらず、蕎麦をすすりながら右から左へ受け流す。

園田さんは相槌は打つがどことなく疲れ気味だ。

田中君は完全無視、というかハンバーガーに夢中って感じだ


「……ねぇ、野村さん、いいかしら?」


小泉さんが口を開いた、あ、これはやばい怒ってる顔だ。


「なになに? ちょっと顔怖いんだけど」

「あんたのせいよ、さっきからずっと誰かの悪口交じりの噂話、他に話す事無いの?あんたのそのつまんない話聞かされる身になりなさいよ」

「小泉さん、いいすぎ」


蕎麦をすする手を止めて、さすがに諫める、公共の場で喧嘩されても困るしね。


「あっそ……気分最悪、向こう行くね、バイバイ」


喧嘩にはならなかったが、野村さんはその言葉だけで機嫌を悪くして席を立つ


「みんなー、お待たせー、買ってきたよ」


野村さんが去ると同時に細川君が返ってくる。


「おかえりー、お腹すいてるから気が立っちゃったんだ、小泉さんもご飯食べて、気持ち落ち着けよ、ね」


 場を和ませるかの如く話題を変えようと、様々な話を始める、コーヒーの喫茶店が出来たというお話は聞いていたが、美味しいのか今度の休日ランニングの日にでも行ってみるか。


「あ、そうだ他にも一緒にポテトもどうですかって言われて、買っちゃった、皆で食べてよ」


 細川君は自分のお小遣いを削って、フライドポテトまで買ってきたようだ、感謝の言葉を述べてから数本頂くとしよう。


「いやー、小泉さんってあんな風に怒るんだねー、こう、キリッって感じでちょっと怖かったなぁ」

「寝起きでちょっと気が立ってたのもあったわ、でも、噂話とかそういうのあんま好きじゃないから」

「ふぅ、食った食った、あれ? まだ食い終わってないの?」


 さきほどまで黙々と食事をとっていた田中君がようやく口を開く、食事に夢中ではなしすら聞いてないって感じか……それくらい図太けりゃなぁ。

その後は食事を食べ終わり、少し売店を見て、お菓子なんかを購入してバスに戻る


 また数時間はバスに揺られる事に成るだろう、またしりとりを始める前に、先ほど売店で買って来た、トランプを見せてやることにする。くいつきは悪くなく、皆でトランプをしながら、目的地までそれで時間を潰すことになった、そして、ようやく到着するのであった。僕らの止まる宿泊施設へと。







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