第64話

 さて、またも数日たてばあっという間と言う訳ではないが、林間学校当日がやってきた、宿泊施設の有る場所まではバスで行く予定になっている。


 ここで林間学校の日程のおさらいでもしておこう。

一日目はバスで学校と提携している宿泊施設まで高速道路に乗るらしくその途中に昼休憩でパーキングエリアに止まるのでそこで昼ご飯かな。

現地到着は14時予定、到着後入舎式をして入室。

部屋割りは出席番号順(男女はもちろん別々だ)幸いにも田中君と須々木君と同じ部屋なので仲良しがおらずに退屈するという事はないだろう。


 16時まで自由時間、16時以降に入浴(入浴施設が併設されてるのでそこを利用)

入浴を澄ました人から夕ご飯、1日目の夕食は自分らで作らなくてもよく、キャンプ場の人達で用意してくれるとの事だ。

 18時からキャンプファイヤーをするそうで、そこからはほぼ自由行動。

明日に備えて寝るもよし、キャンプファイヤーを囲んで交友を深めるもよし。

消灯時間は22時との事。


 2日目だが、朝8時起床およびラジオ体操、実に健康的な始まりである。

僕は苦ではないが、普段早起きを常としない人からしたらつらいだろうな。

 そこから10時までに学校指定のジャージ等に着替え弁当を準備して登山開始。

登頂から下山まで5時間程度を想定の模様。 

 下山後15時30半あたりから飯盒炊爨の時間である、で、完成した班から食事および入浴。その後はまたキャンプファイヤーをする模様。まあ、昨日の焼き直しの日程になっている。


 3日目は8時起床11時までに着替え及び部屋の掃除。

11時に昼食および退舎式を行いバスで学校まで戻り学校で解散という流れだ


「おーい、ずっと立ち止まってるけど、集まれだってよ、内山!」

「うわぁ!?」

「いきなり大声出すなよ、こっちがびびるだろ、また、例の悪癖って奴?」

「あ、ごめんごめん、僕らのバスはあっち?」

「そう、こっちだよ、はよのろうぜ、俺達の班で最後」


 バスの方では既に今回、行動する班の田中君以外の面子が揃って待っていた。

小走りでそれに近づきお待たせと謝りつつバスに乗り込むと、遠藤先生が出席簿を持って待っており、僕らを見て出席簿に何かを書き込んでいる、きっと出席したかしなかったかのレ点か何かだろうな。


「内山の所の班だな、田中、小泉、園田、細川……よし、全員揃ったな! 一番前と二番目の席が空いてるからそこに座るといいぞ、誰か一人はすまんが先生の隣だ!」


 すでに後ろの方の席は埋まっており、前に4つ後ろに二つの席(うち一番前のひとつは遠藤先生の席)のいずれかに僕らは座ることに。


「んじゃま、ほい、これ一人ずつ振ってや、一番高い奴が座るところ選べる。同値は振りなおしな」


 田中君はポケットからスマホを出すとサイコロを振れるアプリを起動する。

サイコロは二つの模様、まあ振れ幅がある方が決着はすぐになるか。

そうして一人ずつ振った結果。


「はっはっは、運がなかったな、田中! ま、先生の隣で我慢してくれ」

「ちくしょう、ファンブルはファンブルはねぇよ……」


 おもいきり最初の一投でピンゾロ、両方とも出目1を叩き出して最後に選んだ結果先生の隣に、そして僕はと言うと。

「ダイス運いいねー、内山君」

「たまたまだよ、こういう日もあるさ」


 10の出目を出して、僕は通路側の席を獲得した。ちょうど田中君と通路を挟んで隣だ、僕は車酔いのしやすい体質故、極力外の景色を見ないで済む通路側を選んだ。先ほどの声は後ろの席の窓側を確保した園田さんの声だ椅子から立ち上がり声をかけてくれたのだ、今は細川君に座るように注意されて座りなおした模様。そしてそんな僕の隣窓側の席に座っているのは。


「…………」

「小泉さん、またゲームで寝不足?」

「…………すぅ」


 寝息だけが返ってくるばかりの小泉さんだった、きっと僕がログアウトした後もずっとやってたんだな、どうせバスで眠れるしとかそんな理由で、写メでも撮ってやろうか? それくらい許されてもいいと思う。


「そっとしといてあげなよ内山君、バスの中だしさ、ガム食べる?」


 後ろから細川君の声がして手が伸びてきた、2枚のチューインガムが差し出されていた、もう一つは田中君にとの事、ありがたくいただき、一枚を田中君に渡してあげる、ミントの香りが口いっぱいに広がる、うん美味い。


「そろそろ動きますんで、席にしっかり座ってシートベルトお願いします」


 運転手さんが遠藤先生に声をかければ、それと同じ文言が遠藤先生の大声でバスではしゃいでいた僕らに届く、えっとシートベルト、シートベルト、あ、小泉さんにも教えなきゃ、まあ、あの大声だし起きるかな……って、ええあれで起きないのか。


「おーい、小泉さん、そろそろ動くからシートベルトしてくださいだってさ」

声をかけてみるもまったく起きる気配はないさっきの大声で起きないのだから僕が呼びかけた程度じゃびくともしないか、どうしたもんか。

「起きろー、朝だよー、せめてシートベルトー」


 何度もしつこく強く揺さぶってみれば。


「うっさいわね! ごちゃごちゃと!」

「げぶらっ!」


 思い切りほほにビンタが飛んできた、おーう、強烈


「って、あれ? 内山君? あ……ごめん」


 ここが自分の家か何か、大方目覚まし時計とでも勘違いしたのかね、しかし、数秒すれば叩いたのが時計じゃなく僕と言う事に気づき謝ってくる。


「うん大丈夫、ちょっと目がチカチカするけど、僕は大丈夫、それよかシートベルトして、もう動くってさ」


 謝罪の言葉を言いながら小泉さんはシートベルトをいそいそつける、先生が後ろの席まで見回りを終えて最後の点呼の元、バスは出発し始める、目的地までのんびりさせてもらおう……叩かれて少々ひりひりする頬を撫でながら

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