第54話

 敵は二体。詳細はボブリン、敵の獲物は剣と盾。遠距離攻撃が出来る武器の装備の有無は見た所なし。せいぜいがそこらの石を拾った投石と想定。

 こちらは3名(使役魔物はいないものとする)。戦闘方法は僕とねるさんは魔法。

サクは剣を使っての攻撃だが、サクは弓も使えたよな。うん、なら、ここは……


「コージィ! なに、ぶつぶつ言ってんの! 敵が来るわよ!」

「ああ、ごめんごめん、サク、ねるさん、下には下りずにここに陣取ろう。サクは弓で僕とねるさんは魔法で攻撃。敵は遠距離武器がなく。僕らは高所に陣取れてる。ここから一方的に攻撃していけば近づかれた時は坂を上って疲弊している。カーレッジとサクでどうとでもできる。」

「了解。それじゃ、行くわよ。それ!」

「後押しをさせてもらおうかな。いよっと」


 弓に矢をいくつもつがえボブリンへと放つ。まだ距離もあるからこのままじゃ当たる事は無いだろう。飛距離を出すために援護魔法を唱える。ウィンドの魔法。魔力を込めた量に応じて風を吹かせる魔法。そよ風から強風。追い風向かい風なんでもこざれ。ただしストームのような攻撃性能はないあくまで風を起こすだけだ。


 しかし、その風が今回は放たれた矢を後押しして遠く離れたボブリンに矢を充てる後押しの役目を果たすのだが盾に阻まれてしまっている感じ。うーむ賢いな。


「何発かヒットしたけど盾に防がれてるね、魔法の射程距離には入ってる。僕も魔法攻撃に入ろうかな、ねるさんもお願い」

「は、はい! ストーンショット。 え~い」


 杖から石の礫が発射されるが盾で防ぐか剣で弾くかで決定打にはならない。

僕もMPの消費量の少ないウィンドアローで牽制してみるが。アロー程度では盾は貫通しきれないか。だがうっとうしそうにしてるし。足は遅くなってる。消耗はさせれてるはずだ。この調子なら長くは保たないだろうね。


「うう~やっぱりダメージはいってない感じですね。ごめんなさい」

「気にしないで、敵は確実に消耗してるはずこのまま攻撃を続けよう」


 そう励まし僕とねるさんは魔法、サクは弓を撃ち続ける。だんだんと近づいてくるボブリンたちは盾や剣で防ぎきれなかった矢や魔法でダメージを蓄積されており。

僕らに近づき始めた頃合いには地に沈んだ。


「よーし、これで下に降りれるね」

「残念だけど、無理そうね。また3体おかわりが来たわよ」


 そういったサクの視線の前。坂道の下にはボブリンが更に湧いていた。しつこいなさてどうしたものか。このまま打ち続けてもまた増援が来るだろうし。


「すみません、MP切れでもうストーンくらいしかできません……」

「僕はまだ平気だけど……ちなみにストーンの魔法の効果は?」

「石を出すだけです、MPの量で大きさが変わって、小石程度の物から大岩も作れます。でも、私MP切れで出せたとしても小石程度しか出せませんよ」

「それで十分だ二人とも。正面突破で行こう、こういう案だけど…………」

「うまくいくかしらね、それ、でもまぁ、やってみなくちゃわからないわね」

「それしかないならそれで行きましょう! 頑張ります」

「よっし。じゃあ作戦開始!」


 僕の作戦は至極単純だ、ここは坂道だ、ちょうど物が転がりやすそうだ。

ではその転がす物を用意する、僕の馬鹿に硬くて重たい友達を。


「出て来い! カーレッジ! そして転がれぇぇぇえええ!」


 カーレッジを召喚して腕を足で抱え込むように指示して思い切り樫の杖で叩き坂に転がす。これを勇敢回転カーレッジローリングと名付けよう。

ゴーレムは見事ボブリン達に激突……することはなかった、あんな見え見えな岩誰だって避けれる僕だって余裕で避けれるだろう。しかしここまで僕の想定内だ

その為の隠し玉は既にカーレッジには仕込まれている。カーレッジはボブリン達の背後で急ブレーキをかけながら急旋回して向き直る。さぁ、見せてやれ切り札を!


「カーレッジ! 開け……ゴマ!」


カーレッジは丸まった状態から勢いよく手を広げるとその手に握られた小石の礫を思い切りボブリン達の顔面に投げつける。転がす前にゴーレムにねるさんが作り出したストーンで作った小石をあらかじめ持たせておいたのだ。MPで飛ばせないなら物理で飛ばせばいいだけだ。ゴーレムの剛腕から放たれた礫はボブリン達の顔面をことごとく吹き飛ばしていく。よしよし勝った勝負強いぞカーレッジ。

名づけるならば無謀岩石投射リスキーロックスローとでもしようか。


 折角のゲームなんだ必殺技なんかつけるとそれっぽいだろう。田中君とかこういうの好きそうだ。彼は少年系の漫画をよく好むそうだから。


「さぁ、カーレッジが開いた活路を無駄にしないためにも次が来る前に一気に駆け抜けるぞ! ウィンドダッシュ!」


 僕自身そしてサクがあらかじめ用意してねるさんと乗るウマにウィンドダッシュを駆け。坂をカーレッジよろしく転がるように駆け抜ける。ボブリン達はまだ出てきたが。うまい事抜けることに成功。よしよし。


「うまくいきましたね! コージィさん。ボブリン達、もう追って来てませんよ」

「だね、それよりも前を見てごらん、ようやく王都とご対面だ」

「凄い城壁ねアレが、ウォレス一の大国、王都よ」

「王都、王都って言うけど、正式名称が気になる処だねぇ。だけど時間が無い。下山出来た事だし、目視は出来るから近いかもだけどそろそろログアウトしたいかな。キャンプを建てないかい?」


 空を見ればすでに暗くなり始めている。すぐにでもキャンプを設営するべきだろう

僕の意見に二人からも反対は出ず。僕らはその場にキャンプを建て。夕飯の後はログインはせずに王都へは明日という事にして、この日はログアウトすることにしたのだった。



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