第53話
昼休憩を澄ましてログインをすればその場にはサクとねるさんしかいなかった。
「あれ? おじいさんはまだお昼ご飯?」
「えっと、おばあちゃんがお布団しまうのを手伝ってるときに腰をやっちゃって、今日は整骨院さんの所にお世話になるからご一緒できないって」
おじいさん……無茶しちゃったか。でも、おじいさんがいないと今日はどうしようかな。ここら辺をキャンプ地にしてスキル上げでもするか?
「あ、おじいさんから伝言があります。三人で進めるなら進んで構わないと、自分は転移魔法もあるから後でも追いつけるだろうしって」
「なるほど。なら進めるだけ進んでしまおうかな、サクもそれで構わない?」
「私はむしろ歓迎ね。おじいさんがいるおかげで楽させてもらった分ここからは任せなさい」
頼りになる一言だ、なら進んでいこうかカーレッジとサクを前衛にして進む事に。
「そういえば、ねるさんは魔物との契約とかはどんな感じかな? 僕は目の前のゴーレムとウォレスラプトルの二体。サクはウマだけ」
サクはめぼしい魔物がいないだけで契約はする気はあると言うがいつになるやら。
ねるさんが強力な魔物と契約してれば前衛を任せれるが。どうだろう
「私ですか。私はゴブリンとオオカミです。でも、ゴブリンは戦闘のスキルは伸ばしてなくてもっぱら農業を手伝ってもらってるんです。オオカミも子供のオオカミだからあまり強くないですし。見ます?」
是非見せてもらう事にすると。ねるさんはオオカミを出す、でてきたオオカミは確かに僕が依然見たオオカミよりも小さく野生を感じさせないようにも見える。
ねるさんの足元でくるくると駆け回り尻尾を振る姿は愛玩動物としてのそれだ。
「強そうには見えないわね。むしろ戦えるのかしらこれ?」
「う~ん……鍛えてみたら化けたりするかな? あ。でもオオカミって群れで戦うタイプだし、それ系のスキルがあるかも? ほらグラバーの増援みたいなの」
「あれはかなり破格な能力よね、問題は数を揃えないといけない所だけど」
グラバーの増援のスキルは正直言うとかなり破格と思える効果だった。
そのスキルの効果は発動してから数分だけ。自身のステータスを保留リストにいるウォレスラプトルの数*10%(最大50%)増強されるというスキル。まあ今の所はグラバー以外はウォレスラプトルはいないから効果は発揮される事は無いのだが。
「ない、ですね……成長したら。出るのかなぁ?」
ねるさんはしゃがみこみオオカミを優しくなでる。やはり愛玩動物のそれだな。
「二人とも和やかに話してる所に悪いけど。敵が来たみたいよ」
サクが僕らに声をかける。やれやれ一筋縄ではさすがに登らせてくれないようだ。
現れたるはゴブリンよりも一回りも大きく筋肉質な魔物。武器もより大きなものに加えて盾も装備しており。みるからに襲い掛かる気満々な姿だ。
「て、敵!? 確かおじいちゃんがいってたボブリン!」
「カーレッジ。サクの防御、ねるさん何か魔法は使える? もしくはサクと同じように前で戦えるなら隙を見て攻撃よろしく。僕は援護魔法をかけるから」
僕は杖を振り上げ魔法を唱える。唱えるのはオートヒール。徐々にHPを回復させるものだ。これをカーレッジにかけておけばいちいち回復魔法を掛けなくても済む。
「えとえと……! ストーンショット!」
ねるさんも懐から小さな杖を取り出すとボブリンに向けると石の礫が放たれる。
遠距離で急に放たれたその魔法を防ぐことも避ける事もできず当たるのだが。
その威力は微々たるもの。ストーンといってるし土魔法だろう?
「うう、あまり効いて無さそうですね、ごめんなさい」
「気にしなくていいさ、サク! 一気に片を付けよう、アタックサウンド!」
杖の先から大きな音が響きだす、アタックサウンド。味方の攻撃力を一時的に上昇させる援護魔法だ。
「任せなさい! はぁぁあああ!!! って!? 盾で防ぐなんて反則よ!」
ボブリンへ気合を込めて切り伏せようとするもその攻撃は盾に阻まれる。平原でもそうだったが防御行動を取る敵が増えて来たな、ならこっちだ!
杖先から出る音を換える。ディフェンスノイズの嫌な音で敵の防御行動を崩す。
サクはそのチャンスを逃すことなく剣を振りかぶりボブリンを倒すことに…………
成功しなかった。ボブリンは盾での防御ではなく、盾とは別に手に持った剣でサクの剣をはね返し、すぐに反撃と言わんばかりにサクへ切りかかる、カーレッジの防御も間に合わずもろに貰ってしまう。まずいなヒールを。
「私が回復します! ヒールウォーター!」
僕が回復するよりも早くねるさんが回復をかけてくれた。よしここは僕も加勢して速攻で決めていく
「出し惜しみはしない。ウィンドランス!」
魔力を惜しまずに風の槍を撃ちまくる。ディフェンスノイズが切れたために防御行動としてボブリンは盾で槍を受け止めるが。
この風の槍は貫通性がそれなりにある。ボブリンの盾だろうとお構いなしだ。
「これで最後よ!」
サクは僕が魔法を射込んでいる側面に回りゴブリンの腹を切り裂きようやく撃破するのだった。
「ふぅ、危ない所だったね。まさか剣で受け止めて反撃すると来たか」
「防御行動ならず反撃行動といった所ね。これと同じのがまだ何回も出てくるってのは怖いわね。攻撃も早くてゴーレムが反応できなかったし」
「警戒を怠ることなく、慎重に進もうか。カーレッジが反応できないのは致命的だな。ここにきて鈍重のスキルが足を引っ張るか」
そうしたボブリンの反撃に負けずに僕たちは山道を歩いていく。
ほどなくして昼が昇り切った時。その景色が見えてきた。
「あ! サクさん、コージィさん、あれって!」
ねるさんは僕たちの視界に入ったものを指さす。ようやく見えたか。
「うん、あれが僕たちが目指している王都。見えて来たって事はそこそこ高く上ったって所かな。ここまでくれば後少しだ」
「その少し!がちょっと苦戦しそうだけどね、目の前に敵を確認よ構えなさい」
僕たちの前に先ほどのボブリンがまたしても登場する。しかしそれは一体ではない2体か厳しいな、1体でも苦労してたのに2体とは……まあ、なんとかしてみるか。
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