第46話

 グラバーを駆りしばらく進んでいると。日が暮れ始める。そろそろかな。


「サク。そろそろ野営にしようテントを準備する」

「っと。そうね。さっき取った馬肉で桜鍋……と、言いたいけど料理酒が無いわ」

「そんな!? よし帰還魔法でセルカンドに戻って……」

「やめなさい! せっかくここまで来たのに」

「冗談だよ。仕方ない街につくかどこか最寄りの街で料理酒が手に入った時にするとして。こっち使う? 貰ったままで食べてなかった魚だけど」


 冗談を一つ言ってから僕が取り出したのは牡蠣フライさんに貰った魚数匹。

サクはこれを見るといいもの持ってるじゃないと早速捌き始める。

川魚は綺麗に内臓を抜かれ串に刺され焚火に当てられていく。


「しっかし上手なものだ。魚まで捌いちゃうだなんて」

「うちは平日はパパもママも仕事で忙しいから夕飯自分で作ったりするのよ」

「へぇ……。僕なんてそういうのはほとんど母さんに任せてるや。休日の朝ごはんとか母さんが風邪で伏せった時くらいだね。料理するのは」

「別に今となっては普通の事よ。はい焼けたわよ。」


串に刺さった魚を頬張れば塩加減の丁度良い。熱々の魚の味が口に広がる。


「あちちっ。ああでもうまいな。あっさりとした味だけど。こう舌に残る感じ」

「ええ。身がしっかりしてるからかしらね。とてもいい美味しいわ。そういえば気になってたんだけど。どうして空腹度なんてゲージがあるのに空腹感や満腹感は得られないのかしらね」

「ああ。それか。僕も気になって調べたんだけどね……」


 サクなら僕に聞かずとも自分で調べてたと思ったが違っていた。ゲームの攻略にはいらないからだろうな。さてこの世界で満腹感を感じない理由なのだが、その理由を話すのにはクローズドβという開発者以外の選ばれた一般人がテストプレイする更に前。開発者のみで行ったテストプレイで起きた事件にまでさかのぼる。


 このゲームというかリアルギアには最初は電気信号によって満腹感や空腹感を与える機能もあった。ここまでならフルダイブのVR技術って凄いよねで終わっていたのだが。そのテストプレイヤーは満腹度を得られるからと言って碌な食事を取らずにいた。まあ当然のごとく栄養失調で病院行き。それにより機体の改善を余儀なくされた

 

 ちなみにこれはリアルギアの開発が行われ始めて最初期に起きた問題だったそうなさてこの事を話せばサクは。


「そういう事情があったんだ。よく調べたわね。かなり前の話よねそれ」

「まあね。どうにも気になると調べ始めてしまう性質があるんだ僕には」

「ふぅん。じゃあこのゲームのタイトルってなんで、テイマー・フェレット・オンラインだと思う?」

「うーん……テイマーは契約と使役を意味してて。オンラインはMMOの性質のことを言ってて。多分フェレットは探索者を意味する言葉じゃないかな」

「え? それなら私たちのチーム名になってる『searcher』じゃないの?」

「それが調べてみると、フェレットは動物のフェレット以外にも探索者の意味も持ってるみたいだよ。それと執拗に追い回すとか根気強く探索するとかね。プレイヤーにもとにかくウサギを追い立てるフェレットのように探り回れという意味も込めて安易にsearcherではなくferretと言うタイトルにしたのかもね」

「へぇ~。そういう事なら。早く王都に言って探索者として活動したいわ!」

「別に王都じゃなくてもいいと思うんだけど。なんで王都に拘るんだい?」


王都に向かう理由について掲示板を開いても行けばわかる以外に何もないのだ。


「噂ばかりだけどいった事がある街や村に転移できる転移魔法を習得できるとか。これが本当なら習得しておけば移動なんかが楽になるわよね。それに王都の周辺にはまだ未探索の多くの遺跡が点在するって噂だしね。」

「確かにそれが本当なら行くべきだけど。姉さんに聞いてみる?」

「それは駄目。ファングさんと話すのは王都についた時よ」

「意地を張るねぇ。さてとそろそろ昼休憩のログアウトだ僕はお先に失礼するよ」


そう言ってからサクのまた後での声を後ろに聞いてからログアウトするのだった。


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