第42話

 日付が変わった土曜日。セルカンドから出発する日である。

時刻はウォレス時間にして朝8時。今日も早起きしてログインしたのだ。

サクはまだ来ておらず。入口の前で一人暇することになった。


 暇をつぶすために新しい魔法である音魔法を試す為に何ができるかを確認する。

一通り見終われば。杖を門の外の方に向けて魔法を行使する。味方支援の魔法や敵の妨害をする魔法もあるようだ。今後鍛えていっておきたい所だ。


 光魔法や毒魔法も使ってみる。ライトショックはとても役に立った。基本的に光源以外に使っていないが戦闘に取り入れれそうなのはどんどん取り入れよう。毒魔法も活躍させていきたい所だ。風魔法はしばらくお休みさせてもらおう。あまり強すぎるのも考え物だ。そんなふうに魔法を試しているとサクが歩いてくる。


「待たせたわね。っさ。行きましょう。目指すはサファードよね。ウィンドダッシュでさっさと行きましょう」

「空腹度が大変なことになるので却下。あ。そうだ残り食用はどうだい?」

「ああ。そういえばそうね。残りの食料はコージィのくれたウサギ肉はまだ残ってるけど香草なんかは残ってないわねもっと取ってきておきなさいよ。で。それを踏まえて今日はどこまで行くつもり?」

「あはは。適当に少しだけ取ったものだからねぇ。そういう事ならセルカンドで香草は買い足しておこう。幸いお金は残ってる。今日は順調にいけばラストル大橋を超えた所までといった所かな。ま、のんびり行こうよ」

「のんびりだなんて悠長な事言ってるのはコージィだけよ。もうほとんどのチームやクランが王都に進出し始めてるしその先の街を拠点にし始めてるのもいるわ」

「そうはいっても僕らは二人だけのチーム。ほかのフルメンバーのチーム。ましてや大人数たるクランを組めるほどの人員がいるわけでもなし。僕らは僕らのペースで行こうね」

「はぁ……了解。じゃあ。香草をいくらか買ってくるわ」

「そこは任せた。僕はしばらく先で狩りでもしてようかな」


 そういっていったん解散。僕はフィールドへと出ていく。

杖先を向け大量の毒の針をゴブリンに打ち込めば。ゴブリンは毒を喰らいその場に倒れる。ポイズンニードル一発一発の威力こそ微々たるものだが。連射性、速射性にすぐれる毒魔法の一つ消費MPもリーズナブルだ。今のところは見たことある魔物ばかりで特に苦労なく進める。


 セルカンドからサファードへは平原といった感じ。見晴らしがよく隠れるのは難しい。ラストル大橋でやった伏兵だって。僕だけでなくいたって冷静であれば簡単に二人を捉えていたやもしれない。まあそのための紅蓮傭兵団でもあったんだが。

毒の針を見える敵にどんどん乱射していくこれは楽しいな。倒し切れなくても勝手に毒状態になって倒れていく。毒状態は状態異常の一つ。これになると徐々にHPが減っていくという代物だ。さーてと次の獲物は……こっちだ!


「きゃあ!? ちょっとコージィ! こっちになんか飛んできたんだけど」


調子にのって乱射していたら。歩いてくるサクに向かって撃ってしまう。


「あ。ごめん調子に乗りすぎた。買い物は終わったのかな?」

「ええ。おかげさまでね。いきなり針が飛んで来て焦ったわよ。チームメンバーへの攻撃はダメージがないとは言え気をつけなさいよ」


 このゲームにおいて味方であるチームメンバーに対してはいくら攻撃してもダメージが入らない仕様だ。別チームで組む時も同盟システムと言うものがあるので。大丈夫だとか。


「それじゃ出発だ。前衛はサクそれとカーレッジに任せるよ」


 基本的に弱い奴しかいなかったが不測の事態に備えてここからはカーレッジを出す

カーレッジはゴーレムと呼ばれる魔物の一種。その防御能力はここらの魔物では傷一つつけることの出来ないレベルだ。とある場所を探索した際に手に入れれた僕のこの世界での信頼に足る友達だ。


「まあ。この辺りに出てくる敵で苦戦するような魔物は出てこないでしょう」

「どうだろうね。ラストル大橋の先からは強敵が出てくるかもよ」

「何が出ようと。この剣で切り捨てるだけよ。前衛は任せなさい」

「いやぁ。頼もしいなぁ。っとゴブリンが3体。弓が二人剣が一人だ」

「あら本当ね。っじゃ。突撃するから援護は任せるわ」


 そういうとサクは剣を抜き放ちゴブリンの群れに切りかかる。

剣を持つゴブリンが慌てて構えサクの剣を受け止めた。そしてそのチャンスを逃さないと言わんばかりに残りの弓ゴブリンが弓を射かけてくるが。その攻撃はカーレッジが阻む。ちゃちな弓程度じゃ傷一つつくことはない。その間に剣を素早く手元に戻したサクは剣ゴブリンを切り裂き倒してしまう。残った弓ゴブリンには僕が毒魔法のポイズンニードルを喰らわせて仕留める。はいお終いっと。


「やっぱりゴブリン程度じゃもう楽勝ね。っさ! 次に行きましょう」


そうゴブリン程度なら楽勝だったんだ。しかしラストル大橋を目前にして僕らは次に出てきた奴に僕らは苦戦するのであった。


「っちょ!? 剣が通らないんだけど! というかきもちわるっ! どうにかしなさいよコージィ!」

「僕に全部任せるのかい……いやしかしこの量は面倒だなぁ」


 僕らは取り囲まれていた。無数のムカデに。ただの百足ではなく。以前にも出会ったことのあるオオカマキリと同じくその大きさは普通のよりも大きい。

まああの時のよりは少し小さくカーレッジと同じくらいの大きさだが。

それが5~6体も集まれば。生理的嫌悪感はぬぐえないだろう。

 ムカデが僕やサクに自慢の顎でかみつこうとするもカーレッジがそれを阻む。

案外と攻撃力があり。カーレッジもダメージを受けるので随時治癒魔法で直す。

防戦一方。どうにかして反撃しなければ一向に大橋にはたどり着けないだろう。


「剣で攻撃したら丸まって防御するとか案外賢いわね。虫の癖して」


 サクが何度か剣で切り付けようとしてもムカデたちは器用にもその体を丸め。背中にある甲殻で受けきりほぼノーダメージで耐えるのだ。反撃しようにもこの様だ。


「同じくポイズンニードルが通らないな風魔法ならいけるかな? いやここは防御が下げれないか試してみるかディフェンスノイズ!」


 そう叫ぶと同時に杖先から周囲に音が響き渡る。するとムカデたちは身をよじらせ苦しみ始めた。よし成功だ! この魔法は音魔法の妨害魔法で敵の防御行動を妨げる事で防御を下げる効果を持つ。意外と思うが昆虫にも聴覚はある。大抵は足などだったかな? まあそれはそれとしてこれなら攻撃が通るはずだ。


「今がチャンスだよ。サク! カーレッジ!」

「ナイスよコージィ! とっとと倒れなさい! このムカデ共!」


 サクが剣を横薙ぎにはらえは複数のムカデを巻き込み半分に切り裂き。カーレッジも負けじと己の拳でムカデの腹を貫いていた。複数いたムカデは全て倒れアイテムだけが転がった。ふぅなんとか勝利。終わってみれば厄介なだけで強敵ではなかったな


「ナイスアシストねコージィ!」

「そっちこそナイスアタック」


手を挙げてこちらに向けてくるのでハイタッチを交わす。


「ラストル大橋が見えてきたよ。渡った先でキャンプにしよう」


 石造りで出来た堅牢な橋が見えてくる。ラストル大橋。セルカンドとサファードを繋ぐ唯一の橋である。


「早く来なさいよコージィ! 夕日が綺麗よ」

「はいはい…………うん、確かに綺麗な夕日だ明日も晴れそうだね」


 橋の上から見る夕日はとても赤く輝いていた。しかし明日から何があるかわからない。早々にラストル大橋を渡ってしまいテントを設営して昼のゲームは終了してお互いに。休憩することにするのだった。

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