第43話

 昼休憩を終えて二人揃ったのでサファードに向けて出発。依然として目的地たるサファードは見えない。街道があるから道に迷うことはないだろうが。やはり時間がかかりそうだ。


「コージィ。やっぱり馬と契約した方がいいと思うのよ。そうじゃなきゃ今日中にサファードにつくかも怪しいわ」

「見つけ次第それがいいかもね。問題は見つからないという点だけど」


サクはこの前契約した馬がいるが僕にはいない。そのため結局は徒歩での旅となっている。出てくる魔物がいくらか代り映えしはじめたので。思ったより進めていないのも原因だろう。ここに来る前にあった馬鹿に硬いムカデの他にも。


「しっかしとうとう魔法を使い始めたわねゴブリン」

「カーレッジがいれば心配ないけど。万が一被弾すれば致命傷だろうね」


 杖を持ったゴブリンが炎の魔法を掛けてきたのは少々危なかったと言わざるを得ない。カーレッジが防御してくれたため。よかったが魔法攻撃は今の防具では防げないのでもろにダメージを被ることになる。


「僕としては僕の毒魔法もサクの剣もカーレッジの拳も効かなかった。粘液状の魔物。スライムだっけ? それが危なかった。接敵された時はどうしようかと。」

「カーレッジの動きが完全に止められてたものね。そこで杖を振りかぶって殴るコージィもどうかと思うけど」

「あれは普通に殴ったんじゃなくてブラストノイズといって杖で殴ると音の衝撃波が出るという魔法を乗っけて殴ったのさ」

「このゲームはスキルの取り方次第で接近戦も遠距離戦もできる可能性があるのが面白いわね。コージィは完全に魔法使いタイプだから前に出ないと思ってたけど」

「前に出る際のカバーするのがカーレッジ。友情のスキルを発動させれば何処にいようと防御してもらえるからね」

「いろいろ考えてるわねぇ。あ、ちょっとだけ待ってもらえる?」


 そういうとサクは弓を取り出した。なんでも剣術と回避があがった後に弓スキルも上げ始めたようだ。一番安物の弓を構え放てばその先の獲物へと突き刺さる。

そこにいた獲物は鹿。この平原で何度か群れを見つけており。その度にこうして弓を射かけている。ようやく一回成功したのだ。


「やた! 当たったわよコージィ」

「当たったはいいけど致命傷ではなかったみたいだね。勿体ないし追いかけるよ」


 すぐにサクと自分にウィンドダッシュをかける。一斉に逃げていく鹿だが。弓を射かけられた鹿はその足は遅くウィンドダッシュをした僕達なら追いかけれる程度だった。サクはもう一度弓を構えるのではなく。腰につけたナイフを投げて鹿の背中に投げつける。走りながらじゃ弓を射かけるのは難しいからの判断だろう。

そのナイフの一撃で鹿は崩れ落ち。アイテムを残して消えてしまう。


「今日は鹿鍋ね!」

「お見事。ようやくウサギ以外の初めての獲物かな」

「森に入ればその限りではないけど。今はサファードに向かいたいしこれで十分ねそれじゃ街道に戻りましょ。時間はまだ残ってるし少しでも進みましょう」

「いやあ……それは無理じゃあないかな?」

アイテムを回収しているサクの背中に声をかける。

「どうしてよ?」

「顔を上げればわかるよ」

「何よそれ? …………きゃあああああ」


 サクが顔を上げた瞬間悲鳴を上げる。

そりゃ目の前に自分よりも大きな恐竜がいたら誰だって驚く僕だって驚く。

確かあの恐竜は父が見せてくれた図鑑に載っていたユタラプトルという恐竜だったか。中々大きいな。一体だけか?それなら……


「ギャォォォオオオ」

「「「「「グギャア! ギャアギャア」」」」」


 そんな都合のいい展開はないか。目の前にいるユタラプトルに呼応するようにその後ろから音を立てながら近づいてくるのが5体。全部で6体か。目の前にいる奴よりは一回り小さい。こいつが群れのリーダーってところか


「ほら。尻もちついてないで早く立って。応戦するよ」

「ごめん。油断してたわ。勝算は?」


 サクの手を取り立ち上がらせる。謝罪の言葉と同時に勝算を訊ねてくる。


「なんとかなるんじゃない? そうだせっかくだしあいつに乗るとしよう。トカゲライダーとか中々面白そうじゃないか」

「あんた何考えてるの!? でも面白そうね。なら雑魚をまずは片付けないとね!」

「その通り! カーレッジ。殺さない程度に。そのデカいのを抑えておけ。その間に僕らは周りの奴から片付ける! ウィンドランス!」


 風の槍を一体のユタラプトルと思うのに放てば串刺しになった瞬間に消える。

まぁこの辺りじゃ十分に育ったスキルで魔法は魔法防御能力さえなければほぼ貫通だ魔法に耐性がなけりゃ一撃か。


「てりゃあああ! 連続切り!」


 サクも一体のゆたらユタラプトルに向けて連続した斬撃を繰り出す。いちいち叫んでいるのはスキル気合の効果を出す為。なんでも叫ぶと攻撃力が増すとか。


「今度はそっちと」


 サクと僕により雑魚はみるみるうちに沈んでいく。リーダーのほうはカーレッジに阻まれ僕らに手を出すことはできない。スキルを上げて正解だったな。残るはリーダーだ! さてと契約と使役の力の行使は簡単。素手で魔物に触れて契約と言うだけなのだが。相手が自分のスキルよりも一つでも高いスキルを持ってると不発に終わる。その為かなりのハイリスクでもあり。出来なかったらその場でお陀仏なのだ


「待たせたねカーレッジ! よっしやるぞ。契約!」


 カーレッジの抑える。ユタラプトルリーダーに触れて叫ぶ。するとすぐにメニュー画面には契約の成功と契約しますかと出るのだった。


【ウォレスラプトルと契約しますか YES/NO】


 やっぱりこの世界では名称変わるのか。もともとユタラプトルとはユタ州の泥棒(ラプトルとはラテン語で猛禽や掠奪者とかを意味するらしい)という意味でつけられたものである。おそらくこういった名前がつくという事はこのウォレス大陸の全域に住んでいるという事なのかもしれない。まあ契約は成功これで足になりそうな魔物をゲットだ。


「無事成功だね。後はこいつ……こいつじゃ失礼だな。そうだなあ。」


折角だし名前を付けたやることにしよう。英語読みで略奪者は確か。


「…………略奪者グラバーとでも呼ぶとしようか」

「あ。それネームド条件よ。ネームドにしていいの? 自分で契約した魔物のネームドがどうなるかとか私知らないんだけど」

「まあ、どうとでもなるさ。よろしくなグラバー」

「ギャウ」


 つぶらな瞳が中々愛嬌がある奴じゃないか。さっそく背中に乗ってみる。

鞍が無い為ごつごつとした鱗の感触が直に尻に来た。これは早急に尻に敷く物を用意すべきだな。


「コージィ。日が暮れてきたわ。街道に戻ってキャンプにしましょう」

「了解。とりあえずはグラバーは使役状態。ふむ敏捷よりも筋力タイプっぽいな」

ひとまず、僕らはラプトルとの対決を終えて。街道沿いに戻りキャンプを取る。

これで昼は終わり。夜も歩くことにして一度休憩と相成った。


【名前】

グラバー(ウォレスラプトル)


【ステータス】

HP:1890

MP:0

筋力:300

生命:89

器用:106

敏捷:105

知性:19

精神:0

魅力:27

幸運:10

【習得スキル】

強奪18/走行13/筋肉14/突撃12/回避11


【特殊スキル】

鉤爪13/美瞳5/増援:☆

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