第40話

 日曜日が明けて週初めの月曜日。今日も今日とて寝癖との悪戦苦闘をするが敗北整髪剤を使わなければやはり解決するものではないか。

自転車に跨りのんびりと登校路を走るこの調子なら遅刻はないだろう。


「おーっす内山。頭のそれ治せねーのな」


 登校路の途中で田中君が声をかけてくれたので。自転車から降りて田中君と歩いて登校することにした


「やあ田中君。そうなんだよ何度か整えようとしてみたんだけど出来なくてねぇ」

「整髪剤持ってるから学校ついたら使う?」

「ありがとう是非貸してもらいたい。本当は髪がべたつくから嫌なんだけどずっとこのみっともない癖毛を直したいとは思っていたんだ」

「別に俺はアホ毛って感じでいいと思うぜ」

「アホ毛と言われるのも心外だ。それじゃあ僕が阿保のようじゃないか」

「ごめんごめん。でも悪口じゃないんだぜ。ホントホント」

「わかっているよ。そろそろ学校だね。今日も一日頑張っていかないとね」

「ああそうだな……やっべ! 宿題やってきてねぇ。内山見せてくれ!」

「今日だけだからね。次からは忘れないように」

「さんきゅー! 持つべきものは友達だぜ!」


 そんなふうな会話をしながら校門をくぐり中履きに履き替え教室に入れば。教室には半分くらいの生徒が入っていた。数人が挨拶をしてくるので挨拶をし返す。

席につくと。田中君は早速宿題を見せて欲しいというのでノートを手渡すことに。

それの代わりといって手鏡と整髪剤を借りたので早速癖毛を抑えることに。


「あ! ウッチーじゃん。おっはー!」


 そう言って声をかけてくるのは野村さんだ。金曜日のカラオケで声をかけてくれた人物だったな。


「おはよう野村さん。そのニックネーム流行ってるのかな?」


 それを言うとどうやら冴島さんを中心に浸透していっているようだ。まあ別段問題があるわけでもない。そう考えながら髪を整える作業に戻る。


「何々? アホ毛直してるの? 可愛いのにもったいな~い」

「僕にとっては可愛いも何もない。みっともない癖毛なんでね」


 こんなもんかな? うん癖毛は治った。この整髪剤べたつかないなどこで買ったか田中君に聞くとしよう。


「ふ~ん。あ。ウッチー宿題見せてくれない? 昨日やり忘れちゃってさ」

「ノートは今田中君に貸してるから見せれないよ。他の人に頼んでくれる?」

「そっか。ざんね~ん。じゃあ他の人に頼むね。じゃね~」


 そういうと残念そうに野村さんは僕の席を離れ別の人にノートを借りれるか聞きに行く。さてとロングホームルームまではいくばくか時間があるなぁ。

今後のゲーム内の旅行程予定でも立てるとしますかね。

ナンパ男もとい乙牌楽園は襲ってこないだろうし。心置きなく進める。

僕も馬と契約して。後は学術書の解読も進めていかないとな。

それに山道につくまでにサクの剣術スキルをあげなきゃだ。


「内山君。おはよう」

「あ。小泉さんか。おはよう」


扉から入ってきて僕の横に小泉さんが座る。いつみても奇麗な姿勢である。


「何書いてるのかしら?」

「ああ。ゲームの予定。テイマー・フェレット・オンラインって言うの知ってる」

「知ってるも何も。最近やってるわよ」

「へぇ~どこまで進んだ? 僕は未だにセルカンド。姉さんもやってるんだけどそのレベルまでまだまだ遠そうだよ」

「あら奇遇ね私もセルカンドよ。そろそろ次の街に行く予定だけど」

「「うん?」」

「ねえ。小泉さんのユーザーネームって……もしかして」

「内山君ってもしかして」


 気づけそうな箇所はいくらでもあったのではなかろうか? 僕はどうやら僕の思っていたよりも間抜けで鈍感のようだ。初対面の所作のよさといい。寝不足と夜更かしをしたであろう推定時刻の一致であったり。名前の類似性だったり。


「サク?」

「コージィ?」


 僕は気づかないうちにクラスメイトの女子と一緒にゲームをしていたようだ。

こんな偶然が起きうるとは誰が思ったか。漫画や小説の世界じゃあるまいし。

いや、事実は小説より奇なりという言葉があったか。


「ええっと……なんていえばいいのかな? こういう時」

「知らないわよっ!」


いつもは凛とした姿勢をした小泉さんが顔を赤くして大きく一つ叫ぶ。


「落ち着いてよ。まぁ。ゲームでもリアルでも友人ってだけだよ。これからもよろしくって事で一つ、相棒」


ゲームでもリアルでも友人が出来たのは僥倖だが。まさかゲームでもリアルでも顔を合わせる事になる友人ができるとは僕は思わなかったよ。


「ええそうね。これからもよろしく、相棒」


 そんな一言をいい笑顔で僕に向けてかけてくれる。自分で言うだけあって微笑むその姿は可憐で美しいものであった。





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