第39話

「や。やぁ。よく来たね。お疲れ様。サファードに向かうのかな?」

「いいえ。ここに来たのよ。コージィ」


サクさんは馬から下りて僕に詰め寄ってくる。何だってんだよぉ!?


「軍師殿! 君じゃなくてサクさんが来てるんだけど!? どういう事!?」

『あっれぇ~? 言わなかったっけ? まあいいじゃん。僕はログアウトの時間なんで。まったね~』

「あ!? っちょ!? ま、待って」


制止しては見たもののグループチャンネルを切られてしまった。


「伏龍鳳雛とお話しかしら? コージィ」

「え? 軍師殿の事知ってるの?」

「ええ知ってるわ。あんたの一計についても全部話してくれた。自分を囮にしてこの大橋で待ち伏せ。挟み撃ちにするとか? この様子だと成功したみたいね」

「あはは……ま、まぁこれでトラブルはお終い。もうチームを組む理由もないだろ。また気の合いそうな人とチームを組めばいいんじゃないかな? なんだったらほら! 君の憧れの紅蓮傭兵団がいるよ! チームに入れてもらえるよう打診したらどうかな!」


 話を逸らしてみる。姉はあきれ顔をしていた。牡蠣フライさんとおじいさんも無言で横に避け様子をうかがっている。誰か一人くらい僕を助けておくれよ! 


「私がしたいのはそういう話じゃない! なんで一言も相談なしに決めたの!」

「いや。それは敵を騙すならまず味方からって言う言葉がありましてね」

「何よそれ! そんな事であんなひどい事よく言えたわね!」

「酷いこと言った件については謝るよ。でもああでもしないと自分が囮になるとか言うんじゃないの? 自分が蒔いたトラブルだからって。正直それは無理だったと思うんだよ。だって僕でもギリギリここまで引っ張ってこれたんだよ。」

「うぐ……そうだけど! それでも相談してほしかった! 私ってそんなに頼りない? やっぱりお荷物なの?」

 

 不安そうにこちらを見つめてくるサクさん。今更だが美人だなサクさん。そしてサクさんとの旅について思い返せば。僕は……


「…………そんなことはないよ。たった数日だけど君との旅は中々楽しかったし有意義だったさ」

「じゃぁ。チームを再結成しましょう。」

「ウェイ!? いやなんでさ。さっき顔も見たくないとか言ってたじゃん!?」

「策の為の行動だとしたらまあ納得したって感じよ。それとも何? こんな可愛い女の子が誘ってるのに断るつもりなの?」

「自分で自分の事可愛いって言う女の子って」


 瞬間拳が飛んでくる、それは僕を橋のふちまで吹き飛ばす威力であった


「ぎゃああああ。っちょ。た、助けて!? 落ちる! 落ちるぅ!」


牡蠣フライさんとおじいさんが慌てて引き上げてくれる。し、死ぬかと思った。


「殴られたいのかしら? で再結成する? しない?」

「もう殴ってるじゃないか! ……わかったよ。『searcher』再結成だ」

「ええありがとう。そうだ再結成にあたって。約束してもらえる?」

「何を?」

「今後ああいう策は無しで。やるとしても相談しなさい。私たちは対等な相棒よ」

「了解だ。まあ後にも先にもああいうトラブルはこれが最後がいいね」

「それといい加減。サクさんはよして。サクと呼びなさい。相棒同士なんだから」

「わ、わかったよ。さ……サク」

「おーっと! じいちゃん見てくださいよ。これが青春って奴っすかねー」


茶化されて僕は顔が赤くなってしまう。サクさん……サクも牡蠣フライさんの茶化しで気づいたのか顔を赤くしていた。そうなるなら呼ばせなければよかったのに。


「うむうむ。後は若いのに任せて。どうだい? うちで茶でも?」

「いいんすか! ゴチになりまーす。というわけでお疲れちゃん! コージィ」


二人は帰還魔法で瞬時に消えてしまう。最後に言いたい事言いやがって。まあ協力してもらったお礼はしないとな。


「コージィお熱い所悪いが傭兵代を出してくれるか? 弟割りで1万G用意してくれればいいよ。というかふんだくってたもんな。自分で用意はしてなかったんだな」

「別にそういう関係じゃないんだけど。はい割引はいいからふんだくった分持っていってよ、あぶく銭は持たない主義だ」

「毎度あり。しっかしいつの間に女の子とチーム組んでるなんてな。そっちの女の子? サクさんだったか? 私は紅蓮傭兵団のファング。堅物で真面目なうえ少々いやかなり癖の強い性格をした男だが。これからも弟と仲良くしてやってくれ」

姉さんはサクに向けて頭を下げていた。

「本当に紅蓮傭兵団の団長さん!? こ、コージィ知り合いだったの? それも弟って。リアル知り合い!? なんで早く言わないのよ! え、えっと。は、はい。わ、私オープンβの頃からのファンでして。あ、握手お願いします」

「それくらいなら。お安い御用。頑張って弟と共に王都にくるのを楽しみにしてるよ。弟よ今後は彼女を泣かさないように。何か弟の事で困ったらいつでも連絡くれ。フレンド登録をしようじゃないか」

「はい! あ、ありがとうございます。うわぁ。ファングさんとフレンドだぁ」


めちゃくちゃ嬉しそうだった。そして僕はそんなに信用がないのか。しどい


「ではまた会おう!」


そういうと姉はキリガさんとマリーナさんを伴い。帰還魔法で消えてしまう。


「さてと。もう夕方か。そろそろ夕飯時かな。あー疲れた」

「お疲れ様。今日はもうログアウトするんでしょ? 夜は」

「明日は平日だし。ログインの予定は無し。それじゃセルカンドに戻って先にログアウトするよ。お先」


僕は先にそう断ってからセルカンドへ帰還してログアウトしてしまう。

そのあとはいつも通り。お風呂夕飯学校の宿題で一日を終えるのだった。

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