第18話
森に到着してから早四日が経過した、この四日はウォレスの時間ではなくリアルの時間である。そんな僕が手に入れた結果を説明するとしよう、
外周を回りおおよその探索範囲を確定、それだけでウォレス時間で二日を消費した、最初の一日目はこれで潰れた。
その時闘ったのはゴブリンはダガーなどの小さい刃物ではなく、槍などの長物を持った奴も出てきた。といってもその程度では僕の魔法の射程の差は覆せないので余裕だった。他には夜行性と思われたウルフが昼間から飛び出して襲ってきたが、その際のウルフは随分と痩せていた。おそらく、森の縄張り争いに負けた奴らなのだろう、苦も無く退治出来た。
そして、森の中、こちらは見ないものが沢山出てきて、大いに収穫があった。
蝶々や芋虫、甲虫といった虫類を籠や水槽に捕獲してしばらく観察したりもした。
特に現実では絶滅危惧種に指定されているような虫とも出会えた、中でもお気に入りは。
「すっごいなぁ、こいつはリアルじゃそうそう拝めないよなぁ。」
そう独り言を言いながらゲームのメニューウィンドウからスクリーンショット機能で取った写真を少しだけ見る。
このゲーム気に入った風景や魔物などの写真を収める機能がある、それで取ったのはこちら。日本ではブリーダーが育成するがゆえに種としての絶滅は起きないとされている、オオクワガタのそれである、こうして自然界を歩く姿はレアだろう。他にもいろいろな虫の写真をとったが、中でもお気に入りがこのオオクワガタである。
ゲームの中なら一匹くらいと思ったがすぐに止めた、自然は自然のままであってほしいと思った次第である。他にはいくつか草原では見られなかった、植物や茸などを採取して調べてみた。具体的には皮膚にあてて毒性があるかを調べたり、観察スキルで調べれないか試したり。結果、薬草や香草そして数種類の毒草、茸の方も食べれそうな物と毒があるものが豊富に手に入った。
その植物の性質などはスケッチと一緒にいくらか買い込んで置いた本に記しておく
それにより「筆者」も「写生」も順調に伸びている、後、スクリーンショット機能を使っていたら「撮影」というスキルが手に入った。決してゲームをプレイするだけなら使用するかも怪しいシステムがスキルの発動に関与することもあるとは少々驚きである。なんでもしてみるというのはとても大事な事なのだろう、現在は三日目の最後のログインである昼。
キャンプ地は森の中に現在は設営していた、探索を終えた場所に逐次、設営しなおすなどして、探索の効率化を図っている。いちいち、キャンプに戻る手間よりも、テントを持って森に入り、時間になったら設営する方が、安全かつ効率的であった。
地図は8割がたが完成されている、まだ、見ていない地域は森の最奥部あたりといった所だろうか。とはいっても、これは最初に指定した探索範囲内の地図であって完全に探索したわけではない、まだまだ奥はありそうだと思う。
残念ながら、今の所遺跡を見つけ出すには至らなかった、まぁ、オオクワガタを捕まえれば好事家に売れそうではあるが。まあ、それは僕の趣味に反するので行わないことにする、お金の為だけに捕まえるのは何か違うだろう。
そうして、森の中を数時間探索する、が、ここにきて最難関に出くわすのだった。森を歩く際は横などの藪なども警戒して進む、その警戒は正解であった
だが、それにより見つけた問題を解決させれるかはまた別だろう。警戒の為に見ていた藪の中にはその存在がいた、恐るべき存在が黄褐色に黒い横縞を持つ、その縞模様は周囲に溶け込むための擬態。よくよく見なければきっと気づかなかったかもしれない、こいつはきっと油断したところを襲うために僕に忍び寄って来ていたのだろう前肢の筋肉はとてもよく鍛えられていた、それは人間が意図してつける筋肉ではなく野生で培われた筋肉だ。きっとその前肢についた爪に裂かれてしまえば、いともたやすく僕は赤い華を咲かせることになるだろう。上手い洒落を言ってるわけじゃない、本当にそう思わせるほどにその獣は雄々しく荒々しくいっそ神々しいと言ってもいいだろう双眸で僕を見つめる。
「うっそ~ん」
そんな存在に対して僕はもはやこの現実から逃避を始めたくなり、そんな間の抜けた一言が口から出てしまう。そして、この間の抜けた言葉を皮切りに大きく跳躍し襲い掛かってくる。どうやら僕は目の前に立ちはだかるこの猛獣と戦う事になるようだ動物園などで子供に大人気な存在。そうベンガルトラと。
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