第13話
今日も朝に目を覚まし、いつもの日課をこなす。ジョギングをしながら森には何があるのかと今からワクワクしていた。しかし姉に勧められるがままゲームにのめりこむ僕は案外と熱中する人間というわけだろうか。
思えばジョギングも最初は父に言われて始めたものだが、今ではどのコースで走るかとかペース配分なども自分で考えて工夫するようになった。姉や母には凝り性だと言われた、まぁ、凝っても誰かに迷惑をかけてるわけでもなし、気にしない気にしない。っさ、今日も帰ったらゲームを始めるとしよう。
◆
ゲームを始めるとそこは昨日設営したキャンプ地であった、時間は日が昇る前といった所か。空腹度は減っていない、このまま日が昇るまでは、筋肉スキル上げをする。そして日が昇った頃にキャンプを撤去、訓練を終えたら一度街に戻るからだ。
しかし、風魔法の伸びは相変わらず遅く、だんだん隠密スキルも伸びが悪くなってきた。これ以上はこの草原での成長は望めないという事なのだろう。
日が暮れ始めたので、今のうちに帰るために帰還魔法を唱え、街へと戻る。
街に戻ればいつもとやることは変わらない、集会所でアイテムを売却して減った空腹度を牛丼で満たす。正直に言うと、そろそろ毎日の牛丼に辟易してきた。
だが、今購入できる食事アイテムで回復量が高いのは牛丼なので我慢である。
そういえば、姉は今どこにいるのだろうか、姉もログインしてるようなので連絡を取ってみる。
「もしもし、姉さん?今時間ある?情報交換みたいなのをしたいんだけど?」
「お、その声は弟か、大丈夫だぞ、今はどこにいるんだ?会って話せるならそうしたいが」
「まだファウストだよ、夜だし宿屋の一室で休憩中」
「ふむ、私たちは既にファウストを発っているから合流はできなさそうだな」
「私たちって事はキリガさんやマリーナさんと一緒なのかな?」
「うむ、今は3人で3つめの街に向けての行軍会議をしていた」
大分、先に進んでいるようだ、しかし会議中なら邪魔ではなかっただろうか。
「じゃぁ、連絡を取ったのは拙かったんじゃないかな?」
「そんなことはない、大体の行軍予定はマリーナが建てるからな」
「リーダーは私だが考えるのはマリーナの仕事だ」
それは威張って言える事だろうか、後ろでマリーナさんが自分でもちょっとは考えてよね~など優しい口調だが注意をしている。
「人任せじゃなくて自分でも考えたらどうかな?姉さん」
マリーナさんの後押しをするべく、僕からも一言いっておく。
「うっ、善処しよう、それよりも何か聞きたくて連絡したんだろう?」
「ああ、そうだった、今、僕は最初のスタート地点の草原調べてたんだけど奥に進むと森が見えたんだ、何か知ってる?」
先行プレイをしていたのならば、あの森に何かがあるのを知ってると思う、少々反則だが、これも一つの方法だ。
「ああ。あの森か、あの森には大して何もなかった記憶しかないな」
残念な返答が帰ってきてしまった、苦労して観測した森はどうやら外れの可能性が高い、思わずため息も出る。
「溜息をつくな、これはあくまで先行プレイ時の事だから、もしかしたらという事があるかもしれんぞ。開発者が発売前のインタビューで、正式販売時には何もなかった場所にも遺跡などを用意するとコメントしていたし」
どうやら、まだ一縷の望みを託せそうではあった。
「まぁ、先行プレイヤーや前情報を知ってる奴ならまずは王都に向かうべきという情報を掴んでいる、スタート地点をくまなく探索しようって奴はそうそういないんじゃないんじゃないか?」
確かに連日連夜、草原で行動しているが何人か新規プレイヤーと思われるプレイヤー以外は見ていない。
「だが、弟よ、それは逆にもしかしたら凄い財宝を見つけれるチャンスかもしれない皆が何もないであろうと決めつけた場所でも諦めずに探してみようとする、実に探索者らしいぞ、弟よ何か財宝を見つけたら、是非また連絡をくれ、そろそろ二人がうるさいから切るとするよ」
「うん。そっちも王都最速到達だっけ、頑張ってね」
そう言い終わった後、僕は通信を切る。
何もないであろう場所でもあきらめずに探すのは実に探索者らしい……か。
よし!こうなったらどうやってでも成果を上げてみせるぞ!
とりあえず、今は残った時間で部屋の中でもあげられるスキルを伸ばしておこう。
ウォレスでの夜はそうやって更けていった、翌日、さぁ行くとするか。
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