第14話

 一度食事休憩でログアウトしてから再びのログイン。

場所はテントを撤去したのでファウストの街門だ。

アイテムの購入などは既に済ましているので、このまま草原へと向かう事に。

草原の踏破はもはや片手間で行えるほどまでに達した。駆け足で走り続ける、道すがらに見えたゴブリンに向けて、風の矢を射込めば避けることもできずに貫かれる。


 ここまでは順調だ、問題は池を越えた先に出てくる狼の群れ、逃げるのは前回もやった方法を使えば簡単だが、撃退となると新魔法がどこまで活躍するかであった。

昼に差し掛かるところで、キャンプ予定地、もといいつもの池に到着。手早く三度目のキャンプ設営をする。さっそく、森を確認するために、日が暮れるギリギリまで進もうと思う。


 しかし迂闊だったのは、双眼鏡なり望遠鏡なりの遠くを見ることができるアイテムを買っておくべきだった。ファウストの店を覗いた時にはどこにもおいてなかったが、行商人が持っている可能性をもっと調べるべきだったろう。肉眼では捉えられないが、狼の目は僕なんかよりはるかによいだろう、更に言えば嗅覚も。


 きっと彼らは僕の事を早くに観測して今も、狙うのを待っているやもしれない、

警戒を怠らず、進む緑色の塊、森だと思わしきものが肉眼でも捉えられる。

だが、その大きさは小さい、きっと自分が思うより遥かに遠いのだと思う。


 日が暮れてきた、ここは一度、キャンプを設営してる場所まで帰るべきだろう。

が、そう思った矢先に草むらが揺れる、音は3つ………いや5つか!?

すぐに杖を揺れた草むらに向け風の刃を放つ、風の刃は草を切り裂くも僕の予想した目標にはかすりもしなかった。これは愚考であることも次に襲い掛かる正体が教えてくれた、杖を振るった事により満足に動けない僕に鋭い牙が襲い掛かる。


 狼だ前回同様、美しくも野生の荒々しさと強さを兼ね備えた黒い毛並み、ただ獲物を噛み殺す為に誂えた鋭い牙を持った獣だ。そしてそれは僕へと襲い掛かる、なんとか咄嗟に装備していた盾を向ければ。牙の攻撃は盾に阻まれ不発、しかし更にもう二体が左右から僕に向かって突進をしてくる。これを前に飛び出すように躱す、受け身の為に今回も草の上を転がることになる。だが、それで狼の猛攻は終わらない。


 転がった後、すぐに立ち上がろうとする僕に向かって二匹の狼がのしかかり押さえつけようとする。これを杖を前に出して抑える、狼の重さに樫の杖は悲鳴を上げるかのように音を立てる。本来これは魔法を使うための装備であって、狼や魔物の攻撃を受け止める役目を果たすものではない。だが、それを僕自身の探索者の腕力で上手い事折れないようにギリギリで保つ。二匹の狼がマウントを取ると同時に別の狼も僕の周りに集まり油断なく遠巻きではあるが僕を見つめる。そこまでして僕を食いたいのかこいつらは! だが、今回は逃げも隠れもしない真正面から倒して見せよう。


「これが僕の新しい魔法! ストーム!」


 いつものように気合を入れるために魔法の名称を唱える、すると風が吹き始める。

僕を中心として風は徐々に渦を巻き強くなっていき、それは竜巻へと変じる。

そして僕にのしかかり樫の杖を折ろうとする狼は強風に耐えきれず、吹き飛ばされる。また遠巻きに見ていた狼も異変を察知して後ろに飛び逃げようとする、竜巻は離れた敵に対しては効果が薄い、しかし狼程度ならばスキルによる補正もあり、巻き込み吹き飛ばしてしまう。


 今までのウィンドとはまさに桁が違うと言わんばかりに強力なストームの魔法は魔法使いである僕を中心に竜巻を起こし敵を吹き飛ばす魔法だ。自分が中心で、なおかつ竜巻は距離があれば威力が減衰するというネックはあるがそれを加味しても、狼たちを倒すには十分すぎる成果を見せた。


 竜巻が収まると、そこには狼の姿はおらず、変わりに元は狼の遺留品であろう、牙と皮が落ちていた。今回も勝利をもぎ取ることに成功した、そしてこの方法であれば、森への道を踏破することも可能だろう。消費量こそアローやカッター、ダッシュより重いが、この前上げていた「瞑想」を使えば回復できる範囲内だ。


 この「瞑想」のスキル、どうやら目を瞑り深呼吸をしていれば、徐々にMPを回復できるという代物でもある。ひとまずは日も暮れている事だし、キャンプへと帰還魔法を唱えて帰ることに。そして、いつもの牛丼を食べてから寝るのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る