第11話

 街への帰還を果たすことに成功して、使い切った牛丼を買いだめして、集会所の一席で自分脳内会議を開くことにする。草原をこのまま探索するか、次の街へ向かうか否かが議題だ、そして探索するならどうすれば安全に出来るかの会議でもある。


 次の街に向かうかだが、これの答えは否で決まっている。

最初の草原で狼と相対して逃げるしか出来なかったのに、次へ行くことなどできるわけがないだろう。では、安全な探索の仕方だが、やはり有用なスキルを身に着けるべきだろう。隠れてやり過ごすとかはどうだろう、草の長い場所を選んで隠れながら進むとか、それ専用のスキルはありそうだ。もしくは先の牛丼も併せて食事アイテムを買い込んで、ウィンドダッシュで強行突破等だろうか。前者はともかく後者は探索なんて出来る方法ではないな、我ながら愚考である。


 やはり、新しいスキルを学ぶのが有用だろう、後は装備や道具を揃えるのもいいかもしれない。筆写や開錠スキルを伸ばせそうなアイテムを買っておくとしよう、他にも使えそうな物はGの許す限り購入しよう。

 早速街へと出れば、早朝とは打って変わり、賑やかな街並みを作り出している

そんな賑やかな街並みの露店や店の中ではアイテムが売り買いされていた、使えそうなアイテムを僕も探してみるとしよう。





 アイテムを全てのGを使い買い込んだ、小金持ちから一瞬で貧乏を通り越して一文無しである、だが、これも探索の為の投資、気にしてはいけない。


 最初は筆者の為の道具だ、筆記用具に鉛筆、ペンとインク、ノートを数冊とそれよりも分厚いハードカバーの本と羊皮紙をいくらか。どうやら筆写は地図も作れるようなので、草原の地図を作ってみようと思う。それならばノートや分厚い本よりも一枚の羊皮紙の方が様になるだろうと思って買ってみた。本当はあるならば方眼紙などが良かったが、どうやらそれを作るだけの技術はない模様。

ノートは簡単なメモをしたり情報を書いたり、分厚い本は今後見つけるであろう、古い本の解読作業用だ。


 次に購入したのは開錠の為のピッキングツールと鍵付き収納箱。ピッキングツールは開錠スキルに必要なアイテム、鍵付き収納箱はGをしまい込めるアイテムだ。

魔物にやられると本来Gを半分程度失ってしまう、しかしこの中には一定量のGをしまう事ができる、そうしてしまい込んだGは喪失しないというのだ。


 だが例外もあり、プレイヤーに倒されたり魔物の中には箱を奪ったりする物もおり、そういうのに倒されると喪失してしまう。だが、鍵付きと言うだけあって、鍵がついており奪えたとしても開錠スキルもしくは購入者の持つ鍵が無い限りは開くことができない。今回はGを仕舞うのが目的ではなく、開錠スキルのスキル上げの為に使う、鍵を使用せずにピッキングして開けては閉めるを繰り返そうと思う。


 しかし今回の一番の大きな買い物は一人用テントとそのテントでの休憩に有用なアイテムなどのキャンプ用品だろう。なんとこのテントは外で使うと一定範囲内をセーフゾーン、魔物が入れない場所にすることができる代物だ。更に、帰還魔法での帰還地点をテントにすることができるといった付属効果もある。しかし、設営には時間がかかるし、自分の持つ一番高いスキルを超えるスキルを持つ者には適用されないと来たものだ。幸いにして一番高いであろう僕の風魔法スキルはおそらくだが草原に出るだろうエネミーの大半を超えてると思う。


 また、テントがあれど食事アイテムが無ければ空腹で倒れてしまう、そのための牛丼は追加でがっつり買い込んでおいた。それと同時に折り畳み式のテーブルと椅子、ガスランタンなどの光源も買ってみた。地べたに座るよりは快適になるだろうし夜はランタンがあれば明るいだろう。


 後は虫取り網と水槽と籠も買ってみた。これらはあの池にいる、ヤゴやオタマジャクシを捕まえてみる為の代物だ。何がスキルの習得条件に繋がるかわからない、もしかしたらヤゴやオタマジャクシを捕まえるのも条件に含まれるやもしれない。

そんなこんなで無一文になった僕の今回の探索目標をもう一度思い返す


その1:草原の地図作成、前時代の遺跡、もしくは草原以外の何かを見つける事。


その2:草原で行える様々な行動を行い、それによるスキル習得を試みる事


 具体的には街を出てから池に直行、今の時間からウィンドダッシュを使えば、日暮れ前には到着する予定。そして日が暮れる前に速やかにテントを設営、設営が終わるころには夜になるだろう。そしたらセーフゾーン内で開錠スキル伸ばしなどあまり動かないでもできるスキルの向上などを行う。そこからしばらくは牛丼全てを消費するまで草原を探索、地図を作るのと他スキルを伸ばすの繰り返しだ。


 牛丼が無くなったら、テントを撤去そのまま帰還魔法でファウストに戻ろうと思うしばらくは街とお別れ、草原での野外活動が僕を待っている。独りと言うのは存外寂しいものだが姉も頑張っているだろう僕は僕なりにゲームのキャラクター、コージィとして探索者として行動しよう。そう考えながら街門を抜け草原へと駆けだす、姉が言っていた言葉を思い出し呟く。


「どうか、幸運の鼬よ、僕を導いてくれ」

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