第4話

 目の前に広がるのは邪魔するものは何もない何処までも広がるかに見える大草原であった。吹き抜ける風は草を揺らし、爽やかな音をたてた、風は寒くもなく暑くもない春を感じさせる風だった、


「凄い………これ本当に仮想現実?」


 あまりの風景の凄さにこれがVR技術によって生み出された仮想現実なのかそうじゃないのか疑い始めてしまった。しばらく、草原の景色に見惚れ呆けてしまうも数分後、何か行動しなければと行動をすることにした。

 えっと、このゲームの主な目的は前時代文明の遺跡を攻略してその財宝を見つけ出す事だ。遺跡を攻略するにせよ、まずは情報だ街を探して進むべきだろう。

ご丁寧にスタート地点には道案内の看板が建てられていた。どうやらこのまままっすぐいけば街につくそうだ。

 意気揚々と元気よく出発するのだが、事はそうやすやすと進むものではなかったのだった。





「………こいついったいなんだってんだぁ!?」


 僕は追われていた、何にかと言えば、おそらく敵である。

禿げあがった頭と緑の肌に尖った耳、犬歯をむき出しにしおよそ理性的とは言えない雄たけびを上げる二足歩行の怪物。所謂、ゴブリンと言う存在だろう、まっすぐ進んでいるところにゴブリンと鉢合わせ、戦いは避けるべきだと逃げようとするも失敗。

更に言えば、すでに何度か攻撃を受けて、ボロボロの状況でもある、警戒の為に後ろを少し振り返ればゴブリンが棍棒を振り上げる瞬間だった。

僕はとっさに横っ飛びに転がりながら避け、すぐに立ち上がり逃げる為に走る、街につけばなんとかならないかなぁ!?

 と、そんな風にあくせく走っている僕の目の前から女の人が走ってきた。僕は咄嗟に避けるようにと叫ぶ。


「あ、危ないですよ!避けてください、というか逃げたほうがいいですよ!」

「ゴブリン程度に私が後れを取るとでも?弟よ」


 女の人は背中に背負った大剣を抜き放つと、襲い掛かるゴブリン達をいともたやすく薙ぎ払ってしまう、も、もしかして!?


「ね、姉さんなのかい!?」


 僕は大剣を持った女の人に話しかける、僕を弟と呼ぶのは姉さんだけだし、そもがこのゲームも姉さんから譲ってもらったものだ。確かに姉さんがここにいても可笑しくはないが、まさかこんな情けない所を見せてしまうとは。


「いやぁ災難だったな弟よ、大方街に行く途中ゴブリンと鉢合わせたという所か運のない奴だ」

「あ、うん、助かったよ姉さん、その通り、しかし姉さん、赤いね真っ赤っか、頭からつま先まで全部とは、一瞬誰かと思ったよ」


 目の前の姉は身長や顔立ちなどの身体的特徴はよくしる姉の物であったが、髪の毛や瞳の色は真っ赤に染め上げられていた。

 私服も赤系統の物が多かったが、この世界でもその趣味は変わらない様で、赤を基調とした鉄鎧の装備をしていた


「ああ、私は赤が好きだからな、どうだ?似合ってるだろう、大剣をかつぐ女戦士、格好いいだろう」

「驚くほど似合ってるというほかないね、小説なんかに出てくる女騎士とか女傭兵って感じだよ姉さん」

「弟は私にくっころ展開をしてほしいと、私はオークなんかに屈したりしない、っく、殺せ!」

「そんなことは言ってないし、それがどういう事なのか言ってる意味がわからないよ姉さん、それはそうとなんでこんなところに?」


 意味の解らないことを言い始めてしまった、増長させると話が進まくなるので無理やり話を進めようとする、そうすればすぐに我に戻り理由を話し始めてくれる。


「ああ、すまんすまん、そろそろリアルギアの初期設定やらゲームのキャラクター設定が終わるころだなと思って、迎えに来たのさ」

「しっかし、弟よ、ほとんどそのままじゃないか、せいぜいが眼鏡をはずして寝癖を整えただけって」


 余計な一言も一緒に言ってくるが無視する、そんな僕に姉はこれ以上何も言わずに街まで護衛をしてくれるのだった。






「っさ、ついたよ、あれが探索者の始まりの街【ファウスト】だ!」


 姉はそう言って、街の門を指し示す、あれから数分歩いてすぐに街の姿は見えた、どうやら逃げ続けて結構進んでいたようだ。


「ありがとう姉さん、姉さんには姉さんの都合があるだろ、ここまで来れたら後は独りで頑張るよ」

「うんうん、だが困った時はいつでも頼っていいからな、フレンド登録もしておこう、困った時は連絡してくれ」


 そういった後に姉さんはゲームウィンドウを開くと何やら操作する、そんな姿を見ていると、何やら音が鳴った。姉がゲームウィンドウを開くように促すので開いてみると「フレンド申請が来ています」と右端に表示されていた。


「これはフレンド機能と言ってな、ゲーム内で連絡を取り合えるようになったりする、いわゆるこのゲームでだけ通じる電話みたいなものだ」

「他にも、プレイヤー同士チームを組んだりする、チーム作成などもある、まぁ、説明書は弟の事だ読んでいるだろう、それを思い出してくれ」


 ………ああ、そういえば、書いてあったな「フレンド登録、チーム作成」

フレンドになったプレイヤーとはゲーム内で連絡を取り合うことが可能何だったか この場合は姉と取れるようになったわけだ。

チーム作成は2~6名のフレンドないしプレイヤーが協力して遺跡探索や仕事をできるようになるシステムだったな、こっちはまだ使わなそうだ。


「ありがと、何かあったら連絡させてもらうよ」

「ああ、それじゃ私は別のフレンドと狩りの約束があるから、それじゃ、お互い、幸運の鼬に導かれんことを~」

「幸運の鼬?まぁいいや、さてと、情報収集始めるか、遺跡の情報からかな」


そう呟いてから僕も姉とは別の方向を向いて情報収集のために歩き始めるのだった。

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