第4話

鋭い声にビクッとして、反射的に振り返る。

そこにはだいぶ歳を取ったお婆さんが、こちらに向けて猟銃を構えていた。

銃口は鈍い光を放ちながら、真っ直ぐと俺に標準を合わせている。


――ヤバい、このままじゃ殺される!!


命の危機を感じた俺は、両手を挙げて降参のポーズを取りながら弁明した。



「わーっ俺、悪者じゃないです!迷い込んだんです!迷子なんです!オネガイですから銃を下ろして……!!」


「迷子?何でこんなところで迷子になっているのさ?まぁ、危害はなさそうだしいいけど」


弁明にすらなってない俺の悲鳴に、お婆さんは首を捻りながら銃を下ろした。


「た……助かった……」


とりあえず死ぬことは回避できたので、胸を撫で下ろしてホッとする。

しかし息つく間もないまま、お婆さんの質問が飛んできた。



「で、あんたどっから来たの?」


「え、えと……海崎区のほうから……」


「海崎!?またえらい遠くから来たねぇ。ここからは軽く3時間はあるよ」


「えっ3時間!?」


――そんなに長いこと寝ていたのか!


距離よりも、睡眠時間の長さにビックリした。

普段の寝不足が祟ったのかもしれない。



「そっかそんなに……電車ですっかり寝てたから分からなかったな」


爆睡してたことが恥ずかしくて、誤魔化すように頭をかく。

すると、お婆さんは不思議そうに首を傾げた。


「電車?ここに電車なんて通ってないけど」


「は?」


思わず聞き返す。


「若いくせに聞こえんのか。電車は通ってないと――」


「分かります聞こえてます!言葉の意味は分かるんです!!でも……」


お婆さんの言葉を遮り、自分が降りた駅を見る。


半分以上自然に溶けた駅。

長らく人の手が入っていないであろう、美しき廃墟。


――薄々勘づいてはいた。ただ、信じたくなかったんだ。


ぼんやりと駅を眺める俺に、お婆さんは容赦なく真実を突きつけた。



「電車は通ってた。でも、それは過去の話。もう何十年も前に廃線になったよ。今は、誰もいない」

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