エピローグ
それ以来、僕がテイや直人に会うことはなかった。病を克服した彼はきっと、新しい地で新しい人生を歩むことにしたのだろう。でも、僕は未だに、時間を見つけてはあのファストフード店に行って、探している。店の隅の方の席で、教科書も参考書も見ず、一心不乱に何かをノートに書き綴る彼を。
彼は言った。所詮は書いたもの勝ちだと。
僕ははじめ、その言葉を受け入れられなかった。でも、今は違う。
結局小説というのは、書いたもの勝ちの世界だ。
そして、それでいいのだと。
僕は相変わらず、作家という自分の職業が大嫌いだ。かと言ってそれと同じくらいに、肉体労働も嫌いだ。僕はあまり体力がないし、打たれ弱い。けれど、そんなことよりもっと嫌なのは、憂鬱な気持ちでいることだった。過去にとらわれて一歩も進めない、そんなブルーな感情が、この世の何よりも僕は嫌だ。
だから、僕はまた筆をとって、物語を書く。
このまま何も書かずに終わるのなら、新しく何かを書いてやる。
だって僕は。
誰よりも、小説が好きだから。
アンチノベル・アンチブルー 名取 @sweepblack3
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