第18話 不穏。
「さーいーあーくー……」
私が住んでる、私の家の筈なのに、知らない奴に追い出された気分しかしない。大体、中央都市に住んでるのに、私みたいなのが苦手って……あいつはどうやって過ごしてるのか、それを問い詰めたい。
「……大丈夫かな、あいつは……」
私以外の人と、あいつが二人っきりになるのを考えてしまえば……なぜか心配してしまう。理由は全く分からない、ただ……もしかすると、だ。もし私が居ない所で何かが起きてしまったら……と考えてしまうからかも、知れない。
……正直、自分の事すらたまに分からなくなってしまう。
「……なんか気になる……」
今すぐ家に帰りたいけど……帰りづらい。まだあの知らない奴は家にいるだろうし、仕事の話をしているかもしれないから。……最悪、自分の家なのに帰れないってのは。
街で暇つぶししようにも、この辺りで……私が好きなものは無い。それに、一人で店を回ったところで、つまらない。
せめてヴィダがいれば、彼女の所に行っていた筈なんだけど……彼女はまだ南地方にいる。……やっと移動し始めたのが何とかわかるから……三日後、辺りに来るかもしれない。
……もし、あの知らない奴がレウィスに仕事を申し込んで、レウィスがそれを承諾したら……。
「私は行けない、ってことか……」
あの知らない奴は私の事……というよりも、私みたいな人間でない存在が苦手な様子。だから仕事が入ったとしても……うん、私は留守番、という形になる。
……最悪。
「何もしないって、つまんない」
翼を広げながら歩いても、誰も興味を示さない。最初のほうこそ、みんな変なものを見るような眼差しだったけど、今は慣れたのが分かる。
……久しぶりに飛んでみようかな。
「周りに人も少ないし」
一応、ちゃんと服を着ててよかった。いつも翼を洋服代わりにしてるから、たまに忘れてしまう事がある。まぁ……あいつに見られたところで、私は何にも気にしないけど。
個々の翼は私より少し小さいくらい、けど……それが四つ。それに加えて魔力もあるから……飛ぶこと自体、容易い。
「展開。……っと」
別に何か詠唱する必要もない。ただ癖みたいなもの。
最近飛んでいないから、少し不安になるけど……翼の展開は問題無い。
試しに軽く羽ばたいてみる事に。
「……うん、問題無しっと」
人間の身体のまま浮いていくのは、やっぱり慣れない事だ。龍の時だったら、まだ慣れているけど……うん、とりあえず問題は無い。
……相変わらず、客観的に見ても物理法則を無視しているとしか思えない、自分の翼なのに。
――――それじゃ、少し飛んでみるだけ……!
「……つっかれた」
何時間……いや、何分くらい飛んでいたんだろう。
天空から見下ろす街は……正直いつもと変わらない。ただ、なぜか楽しいと思えた。思えたけど……。
「……今度はあいつも連れてこよっと」
一人よりもあいつといたら、たぶん楽しいと思ってしまう。
適当に高い建物の屋根で休憩を取ることにした。
空が飛べるんだから、こうやって普通の人間がいけないようなところに行っては見たい気持ちだってある。
地面にいるときと違って風も心地良い、周りに人もいないから、私一人だけの空間みたいな物。
「今頃、何してるんかな」
それなりに時間はたったのだから、多分だけどあの知らない奴も家から出ていった筈。……もしかすると、あいつも依頼を受けたかもしれない。もしそうだったら……何時家に帰ればいいのか、わからない。
せめて合図の一つ、送って……って言っておけばよかったかもしれない。
……このまま寝てみようかな。どうせ誰も近づけないし、少しくらいなら……。
――――金属音が聞こえてくる。
それと同時に、周りの空気も変わっていくのが分かる。……大きい魔力の動きも、察知出来た。
こんな現象は初めて、ここまで高い金属音を聞くのも初めてだし、それに応じての魔力の動きも初めて。
……これは普通なんかでは無い、何かが起きている。それも…………
――――爆発が起きた。
ただの火薬で、とかの爆発では無い。魔術を使っての、魔力の爆発。
何かが私の近くにいる。……最悪だと思ったけど、暇つぶし、として考えれば……これはいいかも。
しばらく待ってみても、金属音は止まず、魔力の動きも未だに変。……何かが、私を狙ってるのが分かる。
咄嗟の事だったから爆発の元もみる事が出来ずに終わったから、念のため警戒を…………
「ミ 」
「 ツ」
「 ケ 」
「 タ 」
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