第12.5話 龍の考えること1
「はぁ……」
私はあのメカニック、と言う奴は……苦手。私をただの『龍』として見ているからか、それともあの数々の変態的な発言のせいなのかは……自分でも分からない。ただ確実に言えるのは、奴が苦手だってこと。
何故かあいつにはよくメカニックの所に連れて行かれるのが、分からない。あいつは私の人見知りが解消するように、と良く連れて行くのだが、理由にはなっていない。そもそも話の通じるような相手でも無い。
「それより、帰ろっと……」
せっかく先に帰って良いって言われたから、特に街でしたいことも無いし、帰ることにする。この街はたしかに、私にとっては暮らしやすい所ではある、だからといって面白いことがあるかと言うと、それは違う。
良くも悪くも、この街は平凡すぎる。
私みたいなただの人じゃないような者が生きるとしたら、いい街だとはいえ……街自体に、することが全く無い。騎士団とやらの本部があるからなのか、それとも交渉の場としての理由なのか……ま、どうでもいいや。私がこうやって翼を広げて、ゆっくりと街中を歩けるのなら、他のことはどうでもいい。
「……退屈」
何ヶ月ぶりなんだろ。こうやって一人で歩いていくのは。
いつも隣には誰かが居るような状態で、一緒にいたから……こうやって一人で歩くのは、正直に言ってどこか寂しい。
長い間ずっとヴィダが隣に、そして最近はずっとあいつが隣に。
「……あいつ、か」
レウィス・ロイル。一応、今の私の主様。
魔力は普通の人より少なめだし、身体も普通の人より強い程度。はっきり言って主としては選択に入る余地すら無い。その筈なのに、何故かあいつに付いていけば面白いと思ってしまった。
だから契約を”してもいい”と私は出た。あいつが嫌だったら、拒否権もある。
だからあいつは契約に出た。ま、当たり前といえば当たり前だ。
私みたいな圧倒的な力を持つ龍なんて、誰もが契約したいに決まってる。誰もが、使い魔にしたいと思うのは当たり前な事だ。
だが、こいつは違った。
契約しても、昨日みたいにたまに仕事として私は力を使う。ただ、それだけ。後は何事も無いように、人間みたいに一日を過ごして、気がついたらそれが数ヶ月立っている。
はっきり言おう。つまらない生活。でも、私自身気がついたらこんな生活をどこか楽しんでしまっているかもしれない。
「自分の事もよくわからないって、ほんと最悪」
ま、それもどうでもいいや。今を楽しもうっと。
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