第6.5話 パーティ前の不安?
奴らの居場所も特定できた。さぁ、パーティ会場へと移動しようではないか。現地には何人居るのかは分からないが、何の問題も無い。なんせ口うるさいとはいえ、最強の使い魔が仕えているのだから。
「久しぶりのパーティだが、大丈夫か?」
「私は平気。寧ろお前の方こそ……怪我しないかが、心配だけどね?」
いつものように軽口をたたけるくらいには平常なようで良かった。もし久しぶりの戦闘で、緊張しててうまく動けない……なんて事があったら俺の方にも問題が起こる。こいつの魔術に依存している以上、こいつの力が無ければ所詮一般人以下の存在だからな。
ゆっくりと街中を歩いていく。相手が一切動かないようなら、此方も急ぎである必要は無い。もし動きがあればアザルも伝えてくれるから、それならゆっくりと移動して行けばいいだけだ。
「……パーティ、なんて本当に久しぶりだけどね」
さっきまで軽口をたたけるくらいの余裕はあった彼女も、何時の間にか不安を感じる声で喋りかけてくる。確かに、久しぶりな事だ。
最後に”パーティ”をしたのは何時頃だったのだろうか。
「不安か?」
「……本当のことを言うと、少しだけ不安ではあるよ。れ……。……主様は私よりもずっとずっと弱いから」
ど直球に弱い、なんて言われるのは中々にクルものがある。が、彼女の言っていることは事実だ。こいつの力なしでは、俺は弱い。魔術の腕も無く、精々他の人より少し鍛えている程度だから。
それでも、こうも珍しく暗い雰囲気を出されるのは嫌いだ。
「そーだな、俺は弱い。正直お前が使い魔になってくれた事自体が奇跡だからな。だが、安心しろ」
暗い雰囲気を少しでも無くす為なら、少しくらい怒られても良い。頭に手を伸ばしては、撫で始める。これも彼女の不安を無くすための行動、ではあるかも知れない。
「……」
そして珍しく、反応も薄い。寧ろ撫でられているのを喜んでいるようにも見える。……こうも素直になられると、調子が狂う。
「いいか、俺が弱くても何の問題も無い」
「……それで主様が傷ついたら、どうするつもり……?」
「傷つくわけ無いだろ、馬鹿が。お前は俺の使い魔だ、最強の使い魔だ。
……これほど頼り甲斐のある使い魔がいる奴なんて、俺くらいだろうしな」
言ってることは全部事実だ。彼女以上に強いような人物なんて見たことが無い。そんなのが俺の使い魔、なんて……考えうる限り最高の状況だ。
こいつのちっちゃい不安、なんてすべて無に返せるぐらいだ。
「……そう、だな。確かに、私は最強だ。……最強の、お前の使い魔なんだからな?……だからその手を退かせ、私は撫でられるのが嫌い、だから!」
やっと調子を取り戻してくれたのか、手を叩いては頭から思いっきり退かしてくる。これで良い、こういう調子のほうが俺にとってもやりやすい。
二ヶ月くらい、一緒にいても彼女の考えることは良く分からない。唐突に名前で呼んでくると思ったら、次にお前呼び。そしたら、今度は主様、と呼んでくる。
此方を馬鹿にするような態度をしてきたと思ったら、唐突に甘えてこようとしてきたり、何なら今みたいに気分が落ち込むことだってある。そしてしばらくすれば今みたいな性格にも戻る。情緒不安定な奴だ。
だが、こうやって調子を取り戻してくれたのならやりやすい。
作戦すら無いが、それも最強の使い魔である彼女に取っては不要、寧ろ足枷程度にしかならないからだ。
さ、少し止まってしまったが、今度こそ、やっとパーティが始まる。
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