千足峠の由来

 昔、烏山からすやま那須なす家と常陸ひたち佐竹さたけ家が激しく争っていてな。

 その中でも最も激しいといわれた戦いの一つ、烏山河原かわらの戦いでのことだ。


 時の烏山城主、那須資晴すけはるが佐竹勢の兵に取り囲まれて、

「もはや、これまでか」

 と思ったとき、後から来た味方の軍勢が飛び込んできて助かっただ。


 しだいに形成逆転してな、烏山勢は佐竹勢を敗走に追いやった。

 しかし、ただで敗走したのでは佐竹勢も追い討ちに遭う。

 佐竹の殿様は一計を案じ、峠のてっぺんへ着くと、たくさんのわらじをわざと脱ぎ捨ててった。


 追いかけてきた烏山勢は、

「これ程のわらじを履きかえるは、まさに大軍なり、へたに追い討ちはできぬな」

 って、早々に引き返したってさ。


 軍勢が去った後の峠には、千足もあろうかというたくさんのわらじと、木々が風にゆれているだけ。

 それから、この峠を千足峠って呼ぶんだと。



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