再会
新入生への簡単な集会が終わり、体育館からかえってすぐ
「緊張したね美和ちゃん。もう、早く教室でぼーっとしたくて帰りたかったよ~。」
と、友達になったばかりの美和ちゃんにボヤいた。
「あれ?クラス発表の表、見ないで帰ってきたの?」
「え、うん。だって私の友達ほとんど文科系強いところいっちゃったし、ここ私の家から結構遠いし、知り合いいる気がしないから。それに、美和ちゃんが最初に友達なってくれたから、なんだかいいかなぁ~って。」
私はアッケラカンと答えた。
「あ、そうだね。でもね、すごい人がクラス一緒になってるよ。ゆうきちゃんも名前はきいたことあるんじゃないかな?野球で有名だったから。」
「え~、他のソフト部ならしってるけど、野球部までは知らないよ。」
全く興味ありませーんっとばかりに。
「結構ファンとかもおおいんだから、えっとね(近藤)くん(近藤学)くん。かっこいいし、ピッチャーだし。」
聞き覚えのある名前に、一瞬戸惑った。
「え?まな・・・ぶ?学がうちの高校にきてるの?」
「やっぱりしってるんだね、有名だったもんね。」
ニコッと笑う美和ちゃんに、全力で否定した。
「違う違う、学は小学校の同級生で、中学入った途端、急に転校しちゃったの。一応、仲良くしてたはずなのに・・・何も言わず転向しちゃってさ。え?で、その学がいるの?」
キョトンっとしていると、背後から声がした。
「あの~俺の名前、連呼されて。ちゃんと聞こえてますよ~。」
振り向きざま、ついボソッと
「げ、本当にいたんだ・・・。」
「ひさしぶりだな、背、のびたな~。ってもまだチビか。少しは感動の再会に喜べよ。」
あの学だった。
けれど、どう言葉をかけていいか分からなかった。
「あ、うん、ごめん。突然でびっくりして。えっと・・・。」
「相変わらず、素直じゃないな。かわいくうれしいよ~とかいえないの?」
おどけてみせる学に、何かイラッときた。
「はぁ?なにそれ、そう言えると思う?あんな突然いなくなったりしてさ。」
突っかかった私を制したのは、意外にも美和ちゃんだった。
「まぁ~まぁ~・・・お二人さん、新学期だし初日なんだから、お互いとまどうよね。」
「俺、とまどってねーし。」
「私だって、別に。」
「いいから、いいから。今日は挨拶でいいんじゃない?察するにー,二人にはこれからゆっくり話さないといけない事ありそうだしー・・・。」
何かを含んだかのように、ニコニコしている美和ちゃん...
「だから、私は別にもう、ないし・・・。」
「へ~、じゃ俺もない。今日はあれだろ、新入生の顔合わせ程度で、授業ないんだよな。なら、俺帰る。」
な、何言ってるんだ?コイツと思い、けど先にそれを言ったのは美和ちゃんだった。
「ええ?ちょっともう帰っちゃうの?確かに授業ないけど、ホームルームとか・・・。」
「だるいし、かえって素振りする時間にあてたいんだよー、じゃないとここの学校、野球部ほんと、強いからな。」
答えながら、カバンを背負った。何回ってやりたい衝動にかられた。
「相変わらず野球ばかなんだねー。」
「その野球ばかに影響されて、野球はじめた男勝りはだれだろーな・・・。」
言い出しっぺの私が、慌てて答えた。
「わ、わたしは、元々純粋に野球好きだったの、だから別に、ほんと・・・早く帰れば?」
「なんだか、二人ってにてるね~。おもしろい。」
そんな私達をニコニコと様子を見ている美和ちゃん...
「ちょっと、美和ちゃん、そこ和むタイミングじゃないって。それに、似てないし。」
「そそ、にてね~よ。俺のほうがもっと、繊細だわ。じゃ、またな。」
学が言ってることは間違ってない。
幼なじみだった学が小さいころから野球好きで頑張ってる姿に影響された私は、周りの目も関係なく少年野球にはいった。
練習が終わっても近所に住んでた学と、ボールがみえなくなるまでキャッチボールをした。
あの頃はわからなかったけど、地域の野球チームでも学は将来期待されたピッチャーだった。
そんな、うまい学に追いつこうとしてた私。
そのおかげで、中学のソフトじゃすぐ、一年生で唯一のレギュラーだった。
ただ、突然何も言わず引っ越し、転校をしていった学にショックだった。
ずっとキャッチボールの相方になれよな、って言ってくれたのは学だったから。
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