2.In the rain, at the bus stop(2)
そういえば、と私は葉月に問いかける。
「結局、どうなったのさ」
「何が?」
「部活。 あんだけギャーギャー言ってたけど、そろそろ入部届出さなきゃまずいんじゃないの?」
そう。実は葉月も私も、部活を何にするかは、決めてないのである。……、まあ、あまり威張れることではないのは事実。
私も私で、唯一いいかな、と思っていた軽音楽部に足を運んでみたはいいものの、なんとなくそこに来ていた人の人間性を見て……合いそうにないな、と断念した経緯がある。なんというか、音楽をやりたい、というよりも、好かれたい、とかかっこよくなりたい、とか、そういう見た目とかに目が向いている人ばかりだったから。身も蓋もない言い方をすれば、底が浅そうな人間ばかり。
まあ、高校生の軽音楽部をやりたい人間なんて、そういうものなのかもしれないけれど。
……と、言うわけで、私は晴れて無所属、帰宅部を貫く覚悟が出来たのである。
そして、問題は、さっきから暴言を吐いているこの女。
「帰宅部なんて世間体が悪い」とかなんとか言っていたけれど、私が聞く限りだと葉月も所属する部活が全然決まっていないのだった。体験入部は殆どの部活でやったにもかかわらず、だ。
「……、ほっといてください」
あ、むくれた。どうやら痛恨の一撃だったようだ。まあ、あれだけ巻き込んでおいて入部しませんでした、ってオチになったら、そりゃあ文句の一つや二つ、言いたくもなる。
けれど、私は、こういう展開になる予感はしていた。葉月の部活が決まらない、という、この展開は。
長く一緒にいると、分かる。……この女は、私以上に主体性が欠けている。つまり、どうしたい、という意思がない。本人曰く、主体性や意思はあると言っているけれど、それは間違いなく、彼女の父や母が植え付けたものを、そのまま出しているに違いない。そうとしか思えなかった。
だから、自分の意思で決める部活動なんかは、あれこれ手を出したあげくにどれも違う、となってしまうのだろう。
私は、わかめご飯おにぎりを一口飲み込んだ後に、葉月にこう言った。
「葉月ってさ」
その言葉で、葉月がこちらを向く。
「不幸せな人生送りそうだよね。 少なくとも私より」
「何、それ。 さっきの仕返し?」
「その通りでぇす」
私は悪戯っぽく葉月に笑みを向けると、葉月は呆れたように鼻を鳴らした。
ふと、窓の外を見る。
雨は、当分止みそうにない。
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