In the rain, at the bus stop
2.In the rain, at the bus stop(1)
さて、そんな、いつもと変わらない退屈な日を過ごして、4月も半ばが過ぎた頃。
霞ヶ丘に、雨が降る。天気予報によると、この先一週間、低気圧が包み込み、このしとしとと降る雨は続いていくとのこと。
私は、そんな降り続く雨の霞ヶ丘の風景、窓の外の風景を時折見つめては、物思いにふける。
桜の季節は、短い。
こんな、ちょっとした雨降りによって、この間まで咲いていた桜は、あっという間に散ってしまい、葉桜へと変わってゆく。そして、それが春の終わりを告げるのだろう。晴れやかな皆の心を置き去りにして。
私は、そんな景色を眺めるも、すぐに手元にある古典の教科書とノートに目を走らせる。そう、一般生徒と同じように。興味がないものを、一生懸命取り組む振りをして、努力すれば、それなりに認められる。……世渡りの上手い人は、そうやってやっていくんだな、とかどうでもいい事を考えながら。
私はそんな感じで授業を受けていた。……その時、私は少しばかり違和感を感じた。視線を感じる。私は思わずその方向をちらりと見る。その違和感は間違いではなかった。注意力散漫な私を見つめる、葉月の姿があった。
首を傾げて葉月の方を見るも、葉月はそんな私に気づき、視線を自分の教科書に即座に動かした。
……感じ悪。
私は、心の中で悪態をついた。
その日の昼ご飯。私はいつものように葉月と一緒にご飯を食べる。
長く続く雨は、昼になっても止みそうになかった。
「有遠ってさ」
葉月が突然口を開いた。
私は今日買ってきたわかめご飯おにぎりを口にいれようとしたところ、葉月の言葉が聞こえ、何だろうとその手を止める。
「世渡り下手そうだよね」
藪から棒に何を言い出すんだ、この女は。幼なじみだから許せるけど、本当に失礼極まりない発言だぞ。
私は心底呆れたように、こう返す。
「ほっといて」
「まあ、授業中の様子を見れば分かるけどね。 あー、本当に興味ないんだなあ、って一発で分かるっていうか」
「それはお互い様でしょ」
そう言い返す。葉月だって、私の話をちゃんと聴いてない時は、すぐ分かるんだから。
葉月は肩をすくめながら、こう言う。
「かもね」
「何、そのスカした反応。 余裕ぶってるっていうか」
「え? だって、有遠見てると思うもん。 やっぱり私の方が世渡り上手だなー、って」
「うわぁ、自意識過剰」
そんな、嫌みったらしい台詞をぶつける。当の葉月は何処吹く風。まあ、こんなやりとりに慣れていると言う事もあるが。
窓の外は、相変わらず雨が降る。私と葉月は、その音をバック・グラウンド・サウンドに、昼ご飯の一時を過ごしていた。
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