1.New days are boring(4)

 帰り道。

 私と葉月は、並んで帰り道を歩く。

 放課後から1時間の間の部活見学だったのに、葉月はあれもこれもと言い出して、結局、私は全く興味ないにもかかわらず、英語研究会、合唱部、柔道部と3つも見学する羽目になってしまった。……柔道、って。葉月が柔道が得意だなんて話、聞いた事が無いぞ? そう指摘したら、「これも勉強」とか言い出すものだから。

 何の勉強だよ。……まったく。

 と、言う訳で私はへとへとになりながらも、葉月と帰り道を歩いていたのだった。


「……で。 結局お目当ての部活は見つかったの?」


 私は葉月に問いかける。まあ、こんな事に振り回されればこう聞きたくもなる。

 葉月は、んー、と考える素振りを見せる。


「……いや。 これといって」

「おい。 私をこんなに振り回しておいてその結果がそれか」


 私は、そんな抗議の声をぶつける。いや、予想していなかった訳ではないけれど。


「まあ、今日が初めてだし、今後見つかると思うけれどね」

「……部活って、そんなに躍起になって入らなきゃいけないもの?」

「そりゃそうでしょうよ。 帰宅部だなんて世間体が悪い」


 世間体……ね。

 そう言われてしまうと、心がちくりと痛む。

 動機がそれで、本当に葉月は後悔しないのかな。私は、そんな自信、無いな。

……まあ、でも、私も世間体気にして夢を諦めてるから、同じ穴の狢なのだろうけれど。

 葉月が口を開く。


「……有遠の方こそ。本当に帰宅部でいいの? 本当に興味有る部活、ない?」

「私? ……そうだな。 軽音部くらい、かな」

「軽音楽部……ねぇ」


 あ、今、バカにしたな。悪いけど、表情で全部バレてるから。

 葉月はそれ以上何も言わなかったけれど、きっと私が軽音部に入るとか言い出したら心配するんだろうな、と。

 あまりそういう反応、嬉しくないんだけど。


 道を歩く。景色が変わっていく。

 丘の上から街の方へと歩いて行き、帰宅途中のサラリーマンや学生が増えていく。銀色の摩天楼が立ち並ぶ街。夕陽に染まる街。高校生になって始めての放課後だからか、今日はここも何処かノスタルジックに感じた。

 ふと、私はその途中で立ち止まる。 ……耳に伝わる、アコースティックギターの音と、女性の歌声。


「……有遠?」


 葉月は急に立ち止まった私を見るも、すぐにその理由に気づく。


「ああ、……ストリートミュージシャンね」

「……葉月は、さ」


 私は、そんな葉月に一つ問いかける。

 葉月は「何?」と首を傾げてみせる。


「……ああいう風に、生きたい、って思わない?」

「ああいう風、って、ストリートミュージシャンみたいに? ……うーん、リスクが大きい人生は、ちょっと」

「それが、どうしてもやりたい事だったとしても?」

「それは、……。 分からない、かな」


 葉月はそう返し、私は、そう。と返し、再び歩き出す。

 葉月は急な質問に少々混乱した様子で私に付いてあるく。


「変な有遠!」


 その言葉もしっかり耳に入っていたが、聞こえなかった振りをした。


 私は葉月と別れて、家に着く。

 帰宅するなり、私は自分の部屋に行き、制服を着替えるのもそこそこに、パソコンを立ち上げ、いつもの場所へクリックした。


 ――。

 ――――。

 ――――――。


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