1.New days are boring(2)
「相変わらずだなぁ。 入学早々、注意されるなんて」
「ほっといてよ」
この高校に入って初めての昼休み。
私は、幼なじみと一緒に、昼ご飯を食べていた。
私からしてみれば、葉月の方こそ頭が固くて、頑固で、見ててヒヤヒヤもするしイライラもするんだよな。だからちょいちょい「石頭葉月」、だなんて呼んでたりする。そう言うと、葉月は決まって怒り出す。まあ、そんな葉月を見て私は内心面白がっているんだけど。
はむ、と私はコンビニで買ったたまごサンドを咥える。ふんわりとした感触も、いつも食べてるものだからこそ、気づかないままになってしまう。
「……で? 今日は何を『哲学』してたのさ」
葉月が口を開く。私は眉をぴくり、と動かした。
別に、哲学って言える程高尚な事を考えてる訳じゃないんだけどな。
「別に。 大したことじゃない。 ……ただ、高校に入っても、私は変わらないんだろうな、って思っただけ」
「変わらない?」
「……。 代わり映えの無い日常に毒されて、色褪せた日々を送る。 きっとそんな高校生活なんだろうなってこと」
私は、ぶっきらぼうにそう言うと、またたまごサンドを口にし、ペットボトルのお茶を口に流し込んだ。
葉月は、そんな私の様子に、ふぅん、と漏らした。
「そうかな? 私は応援してるけどね。 有遠の夢」
私は、そんな葉月の言葉に思わず眉間に皺を寄らせた。
嘘ばっかり。
「応援してる」とか言って、私がやりたい事を口にすれば、「心配だ」とか「やめたほうがいい」とか色々言ってくる。この石頭、もとい石渡葉月はそういう女だって事はよおく知っている。
そもそも、この女は興味ない事を興味ある風に見せるのが下手だ。声のトーン、視線、身振り手振り。それで直ぐ分かってしまう。今だって、そんな台詞を自分の弁当箱に混入した髪の毛を取りながら言ってるから、信用ならない。
……ま、いいんだけど。本質的に、彼女が私の夢を応援しようがしまいが、私の答えが変わることはないだろうから。
それに、言ってしまえば。
彼女……葉月だって、夢と言えるほど、高尚なもの。持ってないんでしょ?
ただ決められた日々を決められたルールに従い生きれば良い。そう思ってるんでしょ?
……こんな事言ったら、流石の葉月もドン引きするだろうから、言わないけれど。
私ね。壊したいんだ。抜け出したいんだ。……こんな退屈で夢の無い日々を。出来れば、自分の力で、夢を叶えたいけれど。そんな勇気も力もない私は、全てを諦めて、受け入れるしかなくて。どうにもならない夢ならば、見ないほうがマシ。……って、考えちゃう訳。
葉月曰く、私は「中二成分が強い」らしい。
私はその自覚はないけれど、こういう事ばっかり考えてるから、そうなのかな、って思う。
もうすぐ休憩時間が終わる。私は食べ終わったゴミ屑をレジ袋の中に入れながら、一つ、溜息をついた。
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