Rainbow Tone ~少女達はちっぽけな夢を歌う~

アレックス

New days are boring

1.New days are boring(1)

 4月。

 窓の外を、桜の花びらがひらひらと、風に煽られ舞い上がる。

 その先にあるのは、粒のような家々が立ち並ぶ町並み、そしてまだ頂上には雪が残る雄大な山、朝日野山。綺麗な景色だな、と思う反面、私はその雰囲気に浸る心理的余裕はなかった。

 霞ヶ丘高等学校。……その名の通り、小高い丘の上に建つ高校だ。自転車通学だと、登校する時泣きを見る。坂道を登った先にあるのが、私が通う高校。

 正確に言えば、「今日から」私が通う高校。今日は晴れて、入学を果たした生徒がウキウキワクワクを隠しきれないままに教室で自己紹介をしているのだった。

 まあ、そんな祝福ムードに浸れない生徒が、ここに一人、いた。それは、間違いない。


「――さん」


 変わらない日常、変わらない人生。そして、叶うことの無い夢。これは、中学から高校になったからと言って、変わることはないのだろうな。

 そんな、根拠はないけど、確固とした自信があった。

 人生なんて、そんなもんなんだ。


「――るとさん」


 いや、先程は夢……と言ったけれど、夢というのも烏滸がましいかもしれない。

 もし、本当に夢だと言えるのならば、それがどれほど離れていようと、叶える為に、私は辛く厳しい道を選んだだろう。

 その選択が出来る人が、羨ましいと思う。

 辛い道を辿るくらいなら。それで心を折るくらいなら。

 最初から諦めてしまった方が、楽だし、裏を返せば、絶対に後悔することはない。リスクのある挑戦は、避けた方が賢明だって、それが私の15年間が出した答えだった。

 きっと、これまでも、これからも――。


「――有遠さんッ!」

「え? は、はいっ!」


 声に気がつき、思わず前方を向く。皆の視線がこちらに集まる。担任の先生が、こちらをじっと見つめる。これは、まさか、私の自己紹介の番、か。

 ぱっと、視線を動かすと、こちらの方を見ている幼なじみの姿があった。目を細め、呆れた表情をしていた。

 恥ずかしい。

 そんな思いに顔を赤らめながら、私は立ち上がった。


「え、っと……。 鈴代 有遠すずしろ あるとです。 宜しくお願いします……」


 この状況を逆手にとって笑いを取る、なんて技術は、私には無かった。

 即行消えてしまいたい気持ちを抑えながら、私は再び席に着いた。

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