第16話

俺は今、109駅にある工業地帯で働いていて、ビスケットをひたすら詰めるっつー、クソつまらねぇ仕事に勤しんでいる。


休憩中、工場の裏で飯 (パン)を食ってると、従業員二人組に声をかけられた。




「ナニ、シテンダーヨ」




「……」




 俺が黙っていると、胸ぐらを捕まれ、張り倒された。




「オラッ、ナントカ、イエーヨ!」




 足蹴されるも、俺は連中がいなくなるまで堪えた。


ここで反撃すりゃ、今までと同じ。


殴って解決するのは、もうやめだ。


 仕事が終わり、隣駅の宿舎に向かう。


めちゃくちゃ狭え部屋で、シャワーもトイレも共用。


せめてもの救いは、相部屋じゃねえって点か。


朝早く起きて、くたびれて帰って眠る。


そんな日が続いて、一年が経過した。
















 12月24日。


その日、俺はメールを受信した。


アヤベさんからだ。




「久々に会わねーか? 夜、クリスマスパーティーやろうぜ!」




 アヤベさんが、まさか俺をパーティーに呼んでくれるとは……


しかも、ヒカリちゃんを入れて、転生者3人、水入らずだそうだ。




「っしゃ、とっとと片して、クリスマスケーキだ!」




 俺は、急にやる気を出して、職場へと向かった。
















 その夜、アヤベさんの住むホテルで、俺たちは集まった。


近況報告をし合い、チキンやクリスマスケーキを食べる。


そして、酔いが回ってきた頃、突然、アヤベさんが口を開いた。




「なあ、ヒカリちゃん。 俺とこいつ、付き合うならどっちがいい?」




「ぶっ!?」




 思わぬふりに、ドギマギする。


いやいや、俺を選ぶわけねえだろ。


すると、更に予想外の発言。




「うーん…… ゴローさんかな」




「えっ!?」




 二人が同時に返事をする。


理由は? とアヤベさんが聞く。




「ゴローさんって、見た目に寄らず、優しいから。 ギャップ萌え?」




「……ちっ。 よかったな、ゴロー」




 アヤベさん、めちゃ不機嫌じゃねーか……


それより、俺はいてもたってもいられず、トイレに向かった。




「ぐっ、うぐっ……」




 涙が、拭いても拭いても溢れて来やがる……
















 席に戻ると、俺の席がなかった。




「……あん?」




「久々ね!」




 白い少女こと、セリーヌだ。




「あなたの今年度の実績から、来年もここにいられるか、結果報告よ」




「え」




 聞いてねーぞ……


もし、不合格だったら、俺はこの世界から追放されんのか?




「結果発表。 結果は、イーブン。 つまり、ここにいても、帰ってもいい。 あなた次第ってこと」




 ……イーブン?


まじか……


正直、ここでの生活はつれえ。


だけど、向こうにはダチは一人もいねえ。


ちら、と二人を見る。




「……ここに残れよ」




 また、目頭が熱くなった。


アヤベさんが、残れっつってくれてる。


俺は、迷わず返事をした。










終わり

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