第15話
「……何も言わないなら、言いたくなるまで殴るだけさ」
クソガキが手を叩くと、小島が動き出した。
もう少しの辛抱だ。
「おらっ」
「……今ので、38回だな」
俺は、小島のバットをつかんだ。
「なっ、お前……」
「37回までは殴られてやった。 今まで俺がお前を殴った回数だからな。 だが、38回目からはてめーの先出し、やり替えされても、文句は言わせねぇ!」
俺は、小島の腹を思い切り殴った。
小島は嘔吐いて、その場に崩れる。
そして、消滅した。
「……」
あれはただの幻影だ。
小島じゃねえ。
それに……
「そこまで過去に執着する奴なんか、いねえよ。 それより、俺が変わらねーでいる方が、失望する奴は多いだろ」
「……ふーん、やっぱり嫌いだわ、お前」
クソガキは、とんがった石を手にして、屋根から降りた。
魔法関係ねえし。
ちきしょ、足元がフラフラで動けねぇ……
「じゃーねー」
クソガキが石を掲げた時、硬直した。
「しゃあっ、成功したか!」
俺は、ぐっ、と拳を握った。
空に、色んな色の光が瞬いている。
「……貴様」
ようやく、こいつも気づいたらしい。
俺はただの時間稼ぎだ。
街の人らは、家の中からそれを見た。
カラフルな色を帯びて、プロペラのように回転して落ちてくる、雪ではない何か。
ディオンのせいで、この日催される予定だった駅前のクリスマスパーティー。
それが中止となり、みな、引きこもっていたが、いてもたってもいられず、外に出た。
「わあっ、すごい!」
空に出現した、巨大なクリスマスツリー。
そして、ほのかに甘い香りがする。
みな、すぐにそれがチョコレートだと分かった。
「全員、ぶっ殺してやる!」
クソガキは、宙に手をかざした。
「……やべえ!」
核爆弾をやる気だ。
くそっ……
結局、火に油を注いだだけか。
その時、地面から檻が生えた。
「!?」
「もう、大丈夫」
後ろを振り向くと、こいつの姉貴、白い少女が突っ立っていた。
多分、魔法を使ったんだろう。
つか、頭から血を流してっけど、平気かよ。
「急に力が沸いてきたと思ったら、これね」
空から光るチョコレートが落ちてくる。
少女は、檻をつかんで箒に跨がると、宙に浮いた。
「ありがとね」
少女は、そのまま闇の中へと消えていった。
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