第14話

俺は今、ドンキ的な所で装備品を整えている。


それをかき集め、レジに進む。




「23メニーデイス」




 よくわからねえが、30メニーありゃ足りんだろ。


買い物を済ませると、路地裏で買ったもんを取り出す。


ヘルメットに、手袋、そして、膝パットだ。


建物のガラスで、自分の姿を確認する。




「……」




 ローラースケートの人みたいだが、まあいいか。


クソガキを探して街を徘徊していると、〇蘭っつーラーメン屋から、のれんをくぐって出てきやがった。




「ラーメンのクセに20メニーとか、ぼりすぎっしょ。 ……ん?」




 俺は、地面に片膝をつき、ターミネー〇2に出てくるT-800の出現シーンと同じポーズをとった。


自分で言うのもアレだが、かっけえ。




「何、お前」




「俺の名はゴロー。 表向きはただの浮浪者だが、その実態は……」




「あー、大月ゴローね。 転生者でしょ」




 知ってんのかよ。


目の前のガキは、スマホみてーな機械を取り出し、文面を読み上げている。




「前職は事務員で、友達は0。 年齢イコール彼女いない歴で、年は37か」




 なっ、俺の個人データを網羅してやがる。


しかも、年が実は37だってバレちまったじゃねーか。




「スキルは素手無双か。 だったら中距離からボコればいっしょ」




 気が付くと、クソガキは俺の手の届かない屋根の上に移動していた。


そして、建物の影から、見覚えのある奴が出て来た。




「……てめえ、小島!」




 あのヒョロヒョロのきめえシルエットは、小島だ。


小島は、手にバットを持って、こっちに近づいて来た。


暗がりから、明かりのある方に進んでくると、おかしなことに気が付いた。




「何だてめえ、その顔……」




「あんたに顔を殴られたせいだよ。 腫れがいつまでたっても引かなくて、そこから顔が腐っていったんだ」




 小島の顔が半分、腐り落ちていた。


頭蓋骨が見え、陥没した穴から虫が湧いてやがる。




「あんた、急に善人みたいなことを始めたけど、過去まで消せると思ったら大間違いなんだよ。 よく有名人がテレビとかで、昔はいじめられっ子でした、とか言って、そのいじめっ子と対面して、今は全然恨んでないから、みたいなこと言うシーンあるよね? あんなの、全部ウソ。 頭の中じゃ、怒りで煮えたぎってるから」




 小島の野郎、よくしゃべるじゃねえか。


つか、来るんじゃねえ……


確かに、俺は小島にひでえ仕打ちをした。


きめえ、っていう理由だけで、だ。


俺は、小島のことが直視できず、バットでひたすらぶん殴られても、何もできずにいた。




「がはっ」




 あばらにバットがめり込んだ。


骨、いったか。




「あはは、めっちゃ楽しい!」




 段々意識が遠のいていく。


小島は容赦なく俺の頭にバットを叩き込んで来る。


ぶっ倒れそうになった時、突然、小島の動きが止まった。


まるで、ビデオの停止ボタンを押してるみたく、微動だにしない。




「はい、そこまで。 大月ゴローさん、俺はあんたのことが好きだよ。 だから善人ぶってないで、俺とやりたい放題やろうよ? 賛成なら、世界の半分をあんたに上げたっていいと思ってる。 もしダメなら、また痛い思いするだけだよ?」




「……」


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