第9話
いばらの賢者像は地下鉄を使って船着場まで行き、そこから船で島に上陸した所にあるらしい。
さっそく俺らはそこに向かい、いばらの賢者像の前までやって来た。
「でけえな」
目の前には、巨大な石像。
正面の足の指に扉が付いていて、体内を散策できるみてーだ。
「そちらは観光客用でございます。 我々はこちらへ」
案内されたのは、島の端にあるボロ小屋。
扉を開けると、すぐ目の前に埃をかぶった石像がある。
「こちらが本物のいばらの賢者像でございます」
手には杖、頭にはとげとげの冠を乗せている。
小汚ぇ石像だ。
とっととぶち壊して新しいのを設置すべきだな。
俺は、石像に歩み寄り、つかんだ。
「くっそ重てぇな……」
「台座が固定されてますゆえ、素手で破壊して下さい」
「……」
最初、僕を殴り殺した時の力を使えば、簡単にぶっ壊せるか。
俺は、ガツン、と石像を殴った。
すると、ピシリとヒビが入り、バラバラに砕けた。
その時だった。
砕けた石像から、黒と白の発光体が飛び出した。
それは空中で何度も激しくぶつかり合って、火花を散らす。
白い方の発光体が弾き飛ばされ壁に激突した。
黒いのが喋った。
「俺の邪魔をするな、セリーヌ」
「ま、待ちなさいよ、ディオン」
黒い方の少年は、そのまま外へと飛び出した。
白い光を放つ少女は、杖を使ってどうにか起き上がるも、フラフラだ。
つか、こいつ、何者だ?
「おめえ、石像ん中入ってたのか?」
「……あなた、ゴブリンの親玉? 今、忙しいのよね」
「誰がゴブリンだ馬鹿野郎。 さっきの黒い奴、おめえの兄貴か? 何をするつもりだよ」
「……あれは、弟よ。 ひどく厨二のね。 早く止めないと、この街が消し飛ぶわ」
……は?
まてまて、展開についていけねーぞ。
「暇なら手を貸して。 ディオンは人間のネガティブな感情を魔力に変換できる。 私の方は、その逆。 あなたが街の人から喜ばれることをすれば、それをエネルギーに変換できるわ」
「おめえらのこと、説明しろ。 じゃねえと協力なんかできねえ」
俺は、その場に胡座をかいた。
「……めんどくさいわね」
仕方なし、と言った具合にセリーヌは話し始めた。
この兄弟はこの街に住む魔法使いで、ある日、ディオンは僕を生み出し、イタズラばかりしていたらしい。
そこで、セリーヌはそれを防止するため腕輪を作り、僕にはめた。
互いに正反対の兄弟の仲は悪く、ケンカはエスカレート。
街が壊滅する前に、自身らを石像の中に閉じ込めた、との事だ。
なるほどな。
ディオンの僕は、主を救うためにここに来たって訳だ。
「とにかく、協力して。 街のネガティブな感情次第で、ディオンの魔法の威力は核爆弾に匹敵するわ」
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