第5話

一晩を越す場所を探して、俺は街を徘徊した。


ここは、一日中ギラギラと眩しいが、俺みてーな文無しには居場所がなかった。


金さえありゃ、バーでもホテルでも、しのぐような場所はいくらでもある。


だが、金の無いやつはお断りだ。


しばらく徘徊すると、地下への入り口を発見した。


地下鉄だ。


階段を降りると、券売機とゲート。


中で凌げるスペースはないため、他を当たる。


その内、でかいメインのステーションらしき所についた。


ここはいくつかの路線の集まった駅らしく、そこそこ広いスペースがあって、バックパックを背負ったやつなんかが、しゃがんで休憩している。


始発を待っているのか?


とにかく、ここなら変に目立つこともなく、凌ぐことができそうだ。




「……」




 明日から、どうすりゃいいんだ?


街の外まで出てみるか?


……望み薄だ。


ここは、恐らく日本じゃねー。


スーパーで見かけたビスケットの箱、街にぶら下がってる看板、全部、謎の言語で書かれている。


駅のホームにある電光掲示板。


行き先が記されているが、全く読めねー。


この地下鉄を駆使して、空港まで行ければ、日本に帰れるだろうが……


やっぱり、ここから出るには金がいる。




「……」




 ……そうだ。


俺の見立てじゃ、ここは結構色んな国から人が集まってくる。


バックパックをしょった奴も多い。


てことはだ、日本人も紛れてる可能性がある。


日系の奴を見かけて、声をかけりゃいい。


日本語が通じれば、こっちのもんだ。


金を稼がなくても、金を借りることができりゃ、それが一番手っ取り早い。


帰ったら返すとか何とか言ってな。




「……っし、決まりだ!」




 意外と何とかなっちまうかもな。


安心したら、急に眠気に襲われて、俺は眠りについた。
















 翌朝、目を覚ますと、ちらほらと人が集まって来ていた。




「良く寝たぜ」




 駅にあるデジタルの時計には、6;00と書かれている。




「5時間は寝れたか……」




 昨日駅に着いたのが深夜1;00。


すぐに眠りについたから、それくらいだ。


っし、早速、行動開始だ。














 1週間が経過した。


ここから日本人を見つける作戦は、まだ成功していない。


つか、いねえし。


日本人。


世界的にみたら、いかに日本人がレアかってのを思い知らされる。


 俺の心は日に日に荒んでいった。


まず、ここの奴らはスタイルがいい。


街を歩くのですら、嫌になって来た。


自意識過剰かも知れねーが。


すげえ惨めだ。


飯についても、限界がある。


相変わらず飯はゴミを漁ってるが、これが結構人目に着く。


警察に職質された時は、言葉が全然通じなくて呆れられたし、ゴミを食うってことは、賞味期限とかの保証がねえってことだ。


昨日はすげえ腹痛に襲われて、店のトイレで悶絶してた。


もういい加減、諦めようかって時だった。


ダメ元で、人のたくさん集まるバーに紛れていると、ある奴に話しかけられた。
















 その時は、タダで飲める水をあおりながら、日本人はいねえかと目を走らせていた。


すると、やたら背の低いチンチクリンを見つけた。




「……あれって」




 森ん中で、俺が殴り殺した奴に似ていた。


俺がそいつを凝視していると、向こうから日系の男が現れた。


そんで、俺と目が合うと、こっちにやって来た。




「お前、転生者か?」




「……あ?」




 思わず、そんな返事になっちまったが、俺は目を疑った。




「え、日本人、ですか?」




「やっぱりだわ! 俺の名前はアヤベ。 お前は?」




 

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