第3話
……レッドなんだ?
聞き取れたのはそこだけで、それ以外のやり取りが早すぎて全く聞き取れなかった。
使ってる言語が別のもんだと分かって、俺は軽くパニックに陥った。
小島の野郎、俺を一体どこに連れてきやがった……
「コジマアアアアアアッ」
怒りが頂点に達する。
俺は、まるで闘牛みたく、フウー、フウーと鼻息を荒くさせた。
舐めんじゃねえ!
向かってくる奴、全員ぶっ殺してやる。
だが、黒人のでかい男が前から歩いてきて、俺は思わず道の端に逃げた。
「黒人かよ……」
冗談じゃねえよ。
俺は泣きたくなった。
今なら、電車の中のガキみてーに、わめきちらしながら号泣できそうだ。
まあ、ダセーからそんなことしねーが。
とにかく、ここから脱出しねーとダメだ。
せめて、日本語の通じる所に行かねーと……
俺は、早足でその場から歩いた。
もしかしたら、この一帯がそういう場所ってだけかも知れねー。
コリアンタウンなんてもんもある。
それだったら、少し歩きゃいいだけだ。
完全に日が落ちた。
キラキラした電光掲示板のある一帯を抜けて、今はただの真っ暗な通りを歩いている。
脇を見ると、ガラスの向こうでピザ? らしきもんを食ってる奴を見かけた。
すげえ、うまそうだ。
「ああ、腹へった」
もし、歩いても歩いても、言葉が通じねえ場所だったら、どうする?
最悪の事態は、ここが完全な外国ってことだ。
そしたら、俺はどうすりゃいい?
飛行機代なんてもってねーし、そもそも、どうやってチケットを買ったらいい?
券売機の言語だって読めねえ、分かんねーから質問したって、そもそも言葉がわかんねー。
これ以上、わかんねえことを考えたって、マジで時間の無駄だ。
「あー、メシだっ」
イライラする時は、飯を食えばいい。
少しはイラつきも収まんだろ。
そう思って、俺は一旦引き返すことにした。
そして、道の脇に並ぶ店を注意深く観察する。
コンビニか、スーパーみてーな所を狙って、食うもんをくすねりゃいい。
さっきは全く店なんか気にしてなかったから分からなかったが、結構、あんな。
俺は、試しにスーパーらしき店に入ることにした。
日本のスーパーとは品揃えが全く違う。
食うもんもあるにはあるが、わけわかんねー果物とか、ビスケットみてーな魅力のねえもんばっかだ。
飲みもんも、コーラとスプライトしかねえ。
「食いてえもんがねえ」
店を後にする。
マジかよ……
ここに住んでる奴ら、こんな品揃えで満足なのか?
他の店を当たるも、並んでる商品に大差はねえ。
でけえ袋に入ったビスケットとか、そんなもんばっかだ。
俺は、思った。
もしかしたら、万引き防止のために、わざわざあんなでかいもんを置いてんのか?
そしたら、今度はこの街の治安が不安になって来る。
最悪、あの公園で寝ることになるかもと思ったが、さっきすれ違った黒人みてーなのに襲われたら、やべえ。
安全な寝床も確保しなきゃいけねーとなると、頭が痛くなってきた。
いや、今は逆に妙に頭がさえてやがるが……
とにかく、盗んでも分からねーくらいの、こぶし大のパンとか、そういうもんを盗むんだ。
俺は、3店目でめぼしい店を発見した。
ここは、駅の中にでもありそうなちっせー店だが、店番のじじいが新聞を読んでいる。
それに、バレてもダッシュで逃げれそうだ。
「……」
棚に置かれているパンを掴む。
そして、それを服の下に隠して、さりげなく店から出ようとした時だった。
「い、いでえっ!?」
突然、左腕に激痛が走って、俺はその場にかがみこんだ。
「……ダイジョ、ブデス?」
「……!」
店員に気付かれ、俺はパンを掴んだまま、ドアを開けてダッシュした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます