第7話 臨海都市エリアでお買い物
よく眠れたのかと聞かれると、まったくもって眠れなかったと答えるだろう。昨晩に、零が俺の部屋で寝ると言い出した時からそんな気はしたが……。俺の腕はずっと零に抱き着かれており、胸元ですーすーと寝息を立てられてしまってはもう無理である。カーテンから見える光の強さからして、まぁ朝というのはわかる。抜け出すのも無理そうなので、零を起こすとしよう。
「零、そろそろ起きよ」
「むぅ~、まだ早いよ~」
まぁ、急ぐ用事があるわけでもないしと考えたが、そこになぜかノックする音が聞こえた。
「入るね~、朝ごはんにしない~?え?」
「あ、レイナさん」「わぁ、お母さん」
「きゃあ~、零ったらやるわね~。もう私もおばあちゃんになっちゃうのか~」
「え?」
「ちょ、お母さん、やめてよ。一緒に寝てもらっただけだから」
零は、目が完全に覚めたようでレイナさんに詰め寄っていった。そして、ひそひそと話していた。零は耳が赤いようで……。
~ヒソヒソ~
「ホントに一緒に寝ただけ?何もしてないの?」
「してないよ、ちょっと……抱き着いてただけ…」
「付き合ってるんだから、ヤルことやったら?出来ちゃうのは、まぁ~ちょっと早いけど」
一通り、会話が終わったようで、一階に向かい、なぜかレイナさん作の朝食を頂いた。
「レイナさん、料理上手いですね。」
「あら、ありがとう。でも、安心して零の方が上手だから」
「あ、そうなんですか?」
「え~そうよ。だって、この一年間くらいずっと料理教室通ったり、料理雑誌見てたものね。いきなり、習い事したいって言った時は驚いたわ。」
「ちょ、お母さんやめてよ。」
「あら、いいじゃない?、ね、凌駕君も料理女子とか好きでしょ?」
「まぁ、俺はあんまり料理とか得意じゃないので、良いと思いますよ。」
「なら、今日の夕食は零が作ってみなさい、これも大事なことよ。これから凌駕君と住むんだから」
「え、ちょっと」
「俺も零の料理食べてみたいね」
「も~、凌駕さんのイジワル」
かくして、零の夕食が食べられるということで、朝食は幕を閉じた。朝にはあまり食欲の出ない俺にとっても十分に食欲そそるものだった。洗い物くらいはと考えていたが、レイナさんにこの前買った良い葉のお茶なるのものを俺の正面に出されてしまい身動きとれず。そして零が慣れた感じに流しへと空いた食器を持っていき、洗い物(なんか少し嬉しそう)。
「今日、なんだけどさ~凌駕君って予定ないよね?」
「はい、休みですからね。」
「じゃあ、このあたりのインテリアショップとか百貨店とか案内してくれないかしら?」
「別に構いませんけど、何を買うんですか?」
「零とこれから住むからその準備よ。女の子には色々必要なのよ~、高校生とかになったらほんとに大変なんだから。」
そして、なぜか女の子の大変さということについて10分程熱く語られた。時折、下着だ、なんだと、朝という時間帯にしては早い内容が含まれていたが平然に徹した。零は、顔を赤くそめるときもあったが、慣れてきたのかあまり動揺は無いようだった。
ということで、本日は色々と買い物をするということでお出かけとなった。女性陣はこれまた気合の入った感じで登場する。零は、黒のミニスカートにグレーに近めの白いニット姿。レイナさんは、ジーンズに白のシャツ、その上にグレーのロングカーディガン……どこのモデルだよ……。あ、俺はジーンズにシャツとかを適当に着ました。
「凌駕君~、今日はあの赤い車で行くの?」
「いえ、荷物多くなりそうですし、エリアもエリアなんで別の車で行きますよ、零もまだ乗ったことないと思うよ。」
「「えー」」
「え?」
「スポーツカーの助手席に座るの楽しみにしてたのに~」
「カッコいいのに乗りたい~、むー」
二人とも、今日の買い物とかよりもそれがホントの要望なのではありませんか……。
そして、玄関あたりで〇ンダのシビックRのお披露目。みなさん、目をキラキラさせております。
「凌駕さん、また買ったの?」
「今年からはこれで学校にいこうかなって思って買ってみた。」
「じゃあ、今日は私が助手席ね」
レイナさんは零の返答を待たずして、助手席に乗った。零は少し悲しげに後部座席に、そして家を後にした。
日本の都道府県という概念はおおよそ5年前に消え去った。人口減少やら市の経済的な破綻などが相次いだのが原因である。そのために、〇〇都市や都市エリアという風に日本を元々の主要都市を基本として分けることとした。以前までにあった、同一県内での市や町での格差是正のためということと、都市ということで大きく分けることにより、税金なども細かくする必要性もなくなったので成功と言えるだろう。第一都市というのは、このシステムにおいて最も主要な都市と位置付けられており、国家系の重要な建物などが数多くある。臨海都市エリアというのは、第一都市に属しており、商業や娯楽などに秀でている。ちなみに、俺の住む港都市エリアというのは、学園に近いため、そこまで店が立ち並ぶわけではないが住むには本当に申し分ないと思っている。
「やっぱり、臨海は違うわね~。私、毎日来ても飽きそうにないわ~」
「確かに、そうですね。お店とかはほとんどが本店ですからね~。融合施設などもいっぱいありますからね。」
レイナさんは声に出しての興味深々に対して、零は窓ガラスから一度も視線を外していない。声にもならないようである。
「まずは、どこにいきますか?お昼にもはやいでしょう?」
「じゃあ、まずはインテリアショップね。零もいいでしょ?」
「うん!」
「オッケーです。」
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