第6話 またしても想定外

 「ふぁ~、うにゅ」


 「目が覚めたみたいだね。」


 運転中なのと暗くなってきたのも相まって、表情が見えないのが残念でならない。可愛いだろうにさ。


 「零、凌駕君がね、零が一番可愛いって言ってたよ。」


 「はっ、そんな事ないし!、ていうかお腹空いた~、凌駕さんまだ~。」


 「まだ少しあるね。SAとかに入る?、それとも臨海都市エリアのお店とかまで耐える?もしくは両方?」


 「両方!」


 「わかりました。では、もう少しお待ちを。レイナさんも良いですか?」


 「いいわよ、このあたりのSAとか入ってみたいし。」


 と俺らは臨海都市エリアの少し手前に位置するSAに入った。二人は、トイレらしくトイレに向かって行った。俺は店の中に入り、天気情報などを見ていた。連休中は晴れか、まぁ良いだろうね。俺は、臨海都市エリアの五十嵐のおすすめの店まで耐えることにして、カフェオレを飲み二人をまっていた。大きめのSAだと中に色々な店が入っており楽しいな。

 すると、レイナさんが戻ってきた。


 「あれ、零は?」


 「零は、抹茶ラテを買うって行っちゃった。まだなんかお腹に入れるには早いから零のところに行かない?」


 「じゃあ、迎えにいきますか」


 と零がいるであろう、俺もカフェオレを買ったコーヒーショップへ向かう。

 そこへ行くと、まさかの零がナンパされていた。金髪にイケメン風な感じで、典型的すぎるだろ。なんて事を思いながら、絶賛嫌な顔をしている零のもとへ向かう。


 「ねぇ、俺と一緒に臨海都市エリアで遊ばない?、君可愛いしさ、行かない?」


 「いやです。これから彼氏の家に行くから無理です。」


 あぁ~なんか典型的すぎて俺がどう行けばいいのか難しいなぁ。当たり前に、「彼女になにか?」な感じで言っても絶対引かなそうだしなぁ。まぁ試しに俺もナンパ風に言ってみるか。俺は零の後ろから回り、肩に手をおいた。


 「ひゃ」


 「ねぇねぇ、そいつよりもさ俺とドライブしながら飯行かない?良いところ知ってるからさ~、あと、ほら一応プラチナ免許だからさ」


 なんか恥ずかしいけどまぁ良いかな。イケメンがやれば問題ないんだよ。俺がやると単なる大根役者だな。でも、零は最初こそ驚いていたが、俺の作戦だと気づき顔はみるみる嬉しそうになった。


 「どう、一緒にいかない?」


 すると、零は俺の腕を取り、「こっちの人と遊ぶ」と冷たくナンパ野郎に告げて俺についてきた。ナンパ野郎は「えっ?」と呑み込めていない。周りは、あいつダサいなという空気になった。店に外に出て零をみるとかなり上機嫌であった。


 「大丈夫だった?、変なことされてない?」


 「うん、なんで凌駕さんもナンパしてきたの?」


 「えっ?、あぁ~ナンパしたいぐらい可愛い子がいたから。」


 「うざっ、でも………ありがと」


 と赤くなりながら、抹茶ラテを飲んでいる。ナンパ野郎に腹が立ったとは言えなくてね………、俺の方が良いだろって示したいだけだったからさ。


 「んで、なんでレイナさんが消えてんだ?」


 「さぁ~」


近くの自動ドアが開き、そこにはコーヒーショップのカップを持ったレイナさんがいた。


 「どこにいたんですか?」


 「凌駕君が零をナンパしてる時に、みんなそっち見てたからその隙に並んでる列を飛ばして、カフェオレ注文してた。」


 「さいですか。」


 この人すごい。俺の恥ずかしい思いの中でこの人は凄いことしている、完璧な割り込みだからね。

 俺は、臨海都市エリアの高速から見える景色が好きでいつも興奮するが、この日はなんとも思えなかった。



 そして、俺たちは無事に五十嵐おすすめの店に着き食事をした。洋食のお店で雰囲気もよく、俺の好きな木目調の店内。そして、料理がうまい。パスタ系がマジでいける。なぜか零からあ~んされたステーキやサラダ類もうまい。あ、これは別の要素もあるな。今度からここで外食しよう。そして、レイナさんから「会計、お願い」と言われた………まぁ良いんだけど。



 今、午後の9時半に家に着いた。 零やレイナさんは臨海都市エリアや俺の住む港都市エリアに興味津々であった。俺の家は、なんといか木のある感じが好きなために木造の家に住んでいる。広さはかなりあるし、キッチンやリビング、俺の書斎などに結構お金を使った。五十嵐からはRe〇riteみたいな家と言われた。確かにまんまな気もしないではない。



 「レイナさんと零は二階の空いてる部屋をお好きにどうぞ。」


 「「はーい。」」


 お風呂などが終わり、リビングで3人で団らんしていた。すると、レイナさんから思いもよらぬ発言が飛び出した。


 「零、3年生からこっちの学校に転校するから凌駕君、面倒見てね~。」


 「はい?、なぜですか?」


 「いえね、なんか少し前に凌駕君の話にもあった入試課の人がうちにも来て零をスカウトしたの。零も学校つまんないって言うし、その人が転校先とか目星つけてくださってね。どうせ、高校から凌駕君と同じだし、家から距離あるし、なら凌駕君と同棲させた方がいいかなって。これって親公認ってやつ?」


 うわぁ、とんでもないこと言い出したぞ。中2でスカウトとか零すごいなって感情よりこの人発言に驚愕すぎてそっちに感情の全てがもっていかれた。


 「でも、まずいでしょ?俺、男ですよ」


 「いいのよ、どうせ付き合ってるし、凌駕君なら零をお嫁に出せるし。あと、零もここで一緒に暮らせるって喜んでたし。第一、凌駕君が零を孤立させたって見方もできるのよ。それでも、零は凌駕君が傍にいない中、一年勉強頑張ってたのよ。」


 「うぅ、それは………。」


 なにも言えない。零さんも俺の腕と俺が選んだソファにご満悦でこの会話の冒頭からずっと楽しそう。そこから、なぜか上目遣いであのセリフを言われてしまった。


 「凌駕さん、私と住むの嫌?」


 「はい、一緒に住みましょう。」


 「やった~!」



 こうして、俺は零と一緒に住むこととなった。





 いや、思いの外、精神的に疲れ、俺の部屋へ向かった。書斎とは別に趣味と寝るための部屋に入り、ベットに倒れる。少しして、ノックの音が聞こえる。


 「凌駕さん、一緒に寝てもらっていい?」


 「いや、それは………。」


 答える前にベットに入ってきた、今にも襲いたくなるような際どいピンク色のパジャマを着て。


 「やっと、凌駕さんと暮らせる。転校が決まってからずっと楽しみだったんだから。また卓球場行こ!、あとオープン大会とか、あと高校なら部活とか帰りにデートとか旅行とか一緒にまたテスト勉強とか。あと………このままずっと居て、結婚とか」


 俺の隣で消え入りそうな、静かな声で聞こえてくる。そして、俺の胸で小さくなって抱き着いてきた。そして、すぅすぅと寝てしまった。見てはいけないもの、キメ細かい白肌と膨らみがすぐそこにあった。これは俺はまともに寝られるのかなぁ。


 「また、君に告白しなくちゃね。」


 少し零が動いたような気もしたが、今回は寝たふりかどうかは見当がつかない。零がうまいんじゃない、俺に正常な判断力がなくなったんだ。あまり俺に対して好意的な事を口にしない君からそう言われるとさ

 




 あまりにも嬉しくて………。



  

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