第5話 過去から現在へ

 それからも零へのいじめは続いた。そして、俺は過去に類を見ないほどに心労が溜まっていた。クラスの連中が酷い有様で、仕事は押し付けられた。ケガで部活を見学しているのを奴らは知っているからちょうどいいのだろう。俺はなぜかは知らないが必死になって仕事をした。多分、どこかでこの事が零にも繋がっているやもしれないと思って。零も部活に俺がいないことを心配して終わってからよく俺の教室に来た。


 「凌駕さん、部活来ないの?」


 心配してくれるのは君ひとりの様だ。少しは楽になった。あぁ、そういえば、タメ口と名前呼びになったんだった。心地がよい。俺が必死になって準備や作業しているのが不思議なのだろう。


 「あぁ、色々あってな。」


 「嘘つかないで。それ、凌駕さん一人にやらせてるんだよね。私、みんな知ってるから。凌駕さんが頭良いから、なんでもできるから、それをよく思わない人が………。」


 「ふ~ん、よく分かってるな。君ぐらいだよ、そういってくれるのは。」


 「せっかく、うまくなってきたのに凌駕さんがいないと………。」


 「ごめんな。また服とか悪戯されてないか?」


 「大丈夫、なんとかやってる。」



 こういうやり取りがそれから文化祭まで続いた。文化祭前日から風邪で寝込んでいた。過労とも言われた。文化祭当日のあと零が家に来た。零によると、俺が用意したものをなんのためらいもなく利用し、大成功などと言っていたらしい。周りからの評価も高く、これから打ち上げのようだ。

 学校に行って驚いたのは、俺を消したいらしく。教員を味方につけた奴らがいた。教員からは、なぜ、手伝わなかったのか?や学力だけじゃないんだよ?、前の頑張りはどうした?と的外れのいいとこである。何を吹き込まれたかは知らないが、もうダメそうだった。卓球部では、いままで練習をつけていた同級生や後輩から色々と言われた。ケガとかいってサボりかよ、準備もしないでさ~、先輩いなくても勝てますよとか言われたな。今までの手のひら返しだった。零もいじめは露骨になっていた。


 「なぁ、零、部活やめないか?」


 「えっ?」


 「もう部活はいいや。だから、やめて一緒にどこかの卓球場で遊ぶようにしないか?んで、オープン大会とか出ないか?」


 「うん、そうする」


そして、部活をやめた。誰も残れとは言わなかった。だろうな、やっと邪魔が部活から消えたから。



 「へぇ~、だから零が休みの日なると卓球場に行ってたのね~。」


 「結構行きましたね。オープン大会もでましたね。混合で準優勝だったかな。」


 「あぁ、それ零が景品もってきたのでしょ。零が凌駕さんとダブルスやるって張り切ってね。ユニフォームもそのために可愛いやつってずっとサイトとみらめっこしてたわ。あと、凌駕君確か、一般の部で優勝したんでしょ。」



 「まぁ、強いクラブチームの人がいなくて助かりました。」


 「零がずっとカッコいいとか、腕の筋肉すごいって」


 「それはどうも。」


 「あと、ダブルスで零のミスばっかりだけど責めないで、サーブとかですぐに取りかえしてくれたって。でも、最後は珍しく凌駕さんがミスしたって。」


 「まぁ、そんな日もありますよ。」


 決勝で零がユニフォーム変えてきて可愛いなって思ってたところに、最後の方にミスして悔しそうにポンポンと跳ねてる姿に萌え死にそうになってミスしたとは言えなかった。


 「でも、平日より全然楽しそうだったわ。」



 


 俺は受験シーズンとなった。俺はまた零と点数勝負をしていた。零は、今度は勉強のほうでもいじめは続いていたようだ。だから、なるべくそばにいて零は格が違うのだと俺が証明していた。


 そんな矢先にとある人が訪ねてきた。


 「国立第一都市大学の入試課の佐藤と申します。」


 「はぁ、あの俺、中3ですよ。」


 「はい、存じております。本日はあなたを第一高校にスカウトしに参りました。学力、スポーツともに群を抜いているようで。諜報部の調査から、テストはいつも一位で卓球もかなりの腕前だとか………。」


 「別に、俺よか優れている人間なんて、うじゃうじゃいるでしょ。」


 「その他、教員やクラスのためでなく、ある方を守るために好きでもないクラスの仕事をし、挙句に裏切られたと。」


 「なぜ、それを?そんな外部の人間なんて。」


 「うちの諜報部は優秀ですから。ある方についても特定しています。それに、その方を守る手助けもあります。」


 「なに?」


 「実は、あなたの周りにいる人間の親の職場の上層部をたどるとすべて我が大学やその研究機関にたどりつくのです。そして、我が学園に入学していただくとあなたはその親の職場よりも強い権限が学園側の意見として与えられるのです。」


 「例えば?」


 「そうですね、職場をまるごと亡き者にするなど………、国が動いてくれますからね。」


 「ほー。」


 「大事な方のためにその権限を利用できますよ。あ、ちなみにご両親の許可はすでにありますので。どうですか、今までの苦労が報われるやもしれませんよ。」


 俺は迷う余地がなかった。


 「わかりました。貴校に出願します。」


 「ありがとうございます。では、当日にこれをお持ちください。まぁ、合格の引き換え券です。気楽に筆記試験や面接をお願いします。では失礼します。これであの方をお守りできますね。必要に応じて、わが校の名前をお使いください。」


 と帰っていった。それから、一応は勉強したが、どちらかというと零に教えていた、勝負していた。零のいじめもエスカレートしたのを相まって卒業式を迎えた。


 「零さん、私と付き合って頂けませんか?」


 「いいよ。」


 わざと親や零のクラスメイトがいるところで告白した。成功したが、正直かなり緊張した。そして、白々しく「良かったね」と零に近づいてきた主犯格やそのいじめグループにこういった。



 「君らが零のこといじめているのは知ってるから、覚悟した方がいいよ。」


 「はっ?、いじめなんて遊んでるだけですよ。」


 「そうか、いじめをしていないと。では、もし零がいじめを受けたと言って来たら、君らの家の人が大変なことになるよ。俺は、国立第一都市大学付属第一高校に入るんだから。」


 そして、俺はそいつの親を解雇するという権限を使った。条件しだいではなんとかクビはやめると俺が直々に家にいった。諜報部の方も同行してもらってね。すると、そいつ優香と言ったかな親と一緒に顔色変えて、後日零と俺に謝罪してきた。


 「零、これでいじめはもうないよ。」


 「うん、でも………」


 「大丈夫、何かあったら俺に言えばいいよ。なぁ、次はないからね。分かってる?あぁ~お仲間にも伝えておいてね。君らの人生的なやつもかかわってくるからさ。」



  とぼとぼと帰っていった。あれはマジで楽しかった。


 



 「これがすべてです。」


 「凄いわぁ、零を守ってくれたのね。」


 「付き合ったのでちょこちょこどこかに連れていったりしましたね。いじめは起きなくなりましたが、零の孤立はあるようで。」


 「うれしいわ~、これなら零は凌駕君のところにお嫁に行くの決定ね。」


 「はい?」


 「いや~、たまに言うのよこの子。結婚するなら凌駕君が良いって。でも、モテそうだし他の女の人にとられないか不安だなって。」


 「モテないですし、零が一番ですからね。臨海都市エリアや学校でも可愛いなぁと思う子もいますけど、零には及ばないなって。」


 「零ったら本当にすごい人に巡り逢ったのね。」



 俺は少し、零の方をみると少し赤くなっていた。

寝たふりをするならもっとうまくやらないと、バレバレだよ、始めからさ。


 

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