第4話 過去のお話
四宮家を出て10分程度で零は寝てしまったようである。すると、レイナさんは少し深刻そうな声であのことについて聞いてきた。
「凌駕君は、なんで中学校がそんなに嫌いなの?詳しく教えてほしんだけどなぁ」
「中学校が嫌いというより、そこにいた人が嫌いなんすよね~、長くなりますけど?」
「うん、どうせ時間かかるでしょ。」
「それもそうですね。」
俺の中学校、つまりは零が今通っている学校はメンツが小学校からほぼ変わっていない。いわば、全員が幼馴染というわけである。小学校の時はあまり人間性というのは関心がなかったし、人の態度を注意深く見るということもなかった。だから、小学校の時はそれなりに仲は良かったと思える。しかし、そのまま中学校もというのは理想論であると感じる。
まず、俺の周囲にいた人間というのは、どこか自分のことを過大評価し、自分が一番優れているように上からの物言いをするものばかりであった。また、親も自分の子が一番できるのだと考えていた。愚かである。自分の子ができるのだという足掛かりを作るために教師に対してはへこへこして評価を得る。子供も同じように教師受けを良く、まぁゴマをすっていた。
そいつらの質の悪さは他にもあった。楽な仕事の時は、教師にアピールするかのように自ら率先するが、重要事(まぁ学校祭や式典など)の話し合いについては文句を言われたくないのか理想論ばかりで結局何も決まらない。決まったとしても、誰も実行しようとしない。なぜかというと、自分で責任を持つということをしないからである。一人で頑張るというのが怖い、誰かとでなければできない。非常時に盾にして責任転嫁のできる人間、もしくは卒なく成功への計画を作り、自分らはそれに従えばよいと思える人間が欲しいと思うから。
当時、俺は学年一位を張っていた。それによって先生からの信頼もそれなりにありにあった。そのために俺は恰好の餌食、標的となった。学校祭の構成や、所属している図書委員会の新しい取り組み内容などとてんてこ舞いだった。俺の事を褒めたり、頼りにしていると人聞きの良い言葉を並べて主要なメンバーとして名を連ねさせ、面倒ごとを押し付けられた。1年の頃は、まだ考えが甘かったせいか、純粋に頼りにされている頑張ろうと仕事をしていた。学校祭や委員会も先輩がいたから仕事も多くはなかったし、程よい疲労で済んでいた。しかし、2年になるとそれは過酷となった。先輩や先生方は俺をよく見ていたようで、評価の仕方が俺の時だけはみんなと違った。それが、やつらには面白くなかったのだろう。だから、奴らは手法を変えた。委員会では、先輩の案を優先しつつ、自分の色を出そうと自らの案を乗せていった。先生からよく言われる「よりよい案」を作った。それはそうだろう、どうせ俺が実行するはめになるのだから無理難題も言える。自分は立案者という肩書を保険にしているのだから。学校祭の出し物の話し合いでも、同じことが起こり、案がかなり上がった。俺は、呆然と見ているだけだった。そして、「推薦」という名の数の暴力によって実行委員に入れられた。そこで、俺はやつらの使えなさをまた知った。指示した仕事さえまともにできないのである、そのくせ文句は多い。そして、先生や学校祭の観客の前では、ほぼ俺の用意したものをあたかも自分が苦労してやりました、作りましたと言わんばかりに発表した。俺の功績を称える者はいなかった、みんな騙されていた。俺は、疲れ切っていた。
そして、3年生となった。新入生として零が入ってきた。また、部活動も卓球部で同じであった。俺は、自主練や親の知り合いのいる実業団の練習に参加さてもらうなど努力して2年後半には県でそこそこ名の知れる選手となった。すると、卓球部での新入生紹介で零と話した。零は、小5から卓球をやっているらしく俺を知っていた。
「荻原先輩って、この前の県立アリーナであった大会の一般の部でベスト4に入ったんですよね?」
「へぇ、よく知っているね。」
「はい、お父さんに連れていかれて中国選手みたいな動きをする中学生がいるって。」
「中国選手の練習とか真似てやったかいがあるね。でも、今はケガしているから試合できるか怪しいけどね。」
「え」
これが初めての会話だった。その大会で少し無理をして肩を痛めていた。
「やっと、零の登場なのね。」
「すみません、長くて。」
レイナさんからのご指摘が入った。都市部へとつながる高速道路へと入るところであった。
俺は、零と部活や廊下でよく話すようになっていた。零は卓球も強く、頭もよかった。そして、可愛い容姿をもっていた。また、今まで俺の周囲にいた人間と違っているように思えた。俺は、少しずつ惹かれていった。勉強では、ずっと一位のようでテストがあると俺と点数を勝負したり、俺は見学だったが部活で零はよくアドバイスを求めにきた。楽しい毎日に感じていたが、それもあまり長くはもたないようであった。
零は、いじめを受け始めていた。零の学年には俺の学年の弟や妹がいて、兄弟・姉妹して俺と零が面白くなかったのだろう。また、部活動の女子からもいじめられていた。可愛くて強いというのがむかついたらしい。
いじめとしては、俺に媚びて勉強を教えてもらっているや3年に手を出そうとしている生意気な女などだったかな。それに、部活では、練習用のTシャツをズタズタにされていたりと凄かった。
「なんにも聞いてなんだけど?、そんなことがあったの?」
「はい、まあ。レイナさんや末彦さんに迷惑を掛けたくなかったのでしょうね?」
「ダメ親ね。」
と暗くなり始めた春の空と高速道路の無機質感が相まって、この回想に深みが出てきた。
「それで、どうなったの?」
レイナさんは興味がさらに沸いたのは言うまでもなかった。
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