先制攻撃はド派手に

「いいか、お前ら。相手も人数用意してるんだからな。遠慮する必要はないぞ」

「「おお!!」」


 どうもお相手さんもやる気のようだし。


「陣形を整備」


 ザッ!


「構え」


 一方のこっち陣営はアンの指示の下、着々と準備を進めている。

 だが、「構え」で通常構えるであろう剣などの武器の姿はなく、代わりに小さな球のようなものを持っている。

 え、あれってもしかして俺お手製の……。


「投擲」


 何のことはない、火薬の詰まった球である。

 本来爆弾に使われるような信管などあるはずもない。

 知識としてどういう仕組みのものなのかはわかっているのだが、技術が追い付いていないのだ。

 ドゥならばもしくはと思って相談してみたりもしたが、兵器を作るのと鍛冶をするのではそもそもかなり違うものであるため、試すのも危なかろうという判断になったのだ。

 そもそも爆弾を始めて作ろうとした人たちも絶対何割かは誤爆で死んでるだろうからな。

 と、いう訳でただの火薬を圧縮して詰めただけの球になっていたはずなのだが。



 ドガァァァ!!!


 爆炎が拡がる。


 それも、順番に。


「なんだなんだ!?」


 これは俺も知らんぞ!?

 どういう仕組みであれ爆発させてるんだ!?


「お、お、オーシリア。お、お前なにか知ってるか」

「落ち着くのじゃ、主。ドゥをよく見てみろ」


 言われるがままドゥを見れば、何かしらぶつぶつと呟いているのがわかる。

 爆音で何言ってるのかわからないし、唇をよもうにもそこまではっきりと発音はしていなさそうだ。


「ドゥがやってんのか……?」

「リオンから何やら学んでおったようじゃぞ」

「そりゃリオンは炎出せるけど、それはあいつが特殊なだけで……」


 というか、魔王の血筋の問題だったはずだ。

 だからアンリさんも出せるしな。


「しかし、物は試しとリオンが教えていたところ、ドゥには適性があったようじゃな。他の2人は残念だったようじゃが、そもそも適性が問題などということもわかっておらんかったから仕方ないじゃろう」

「い、いやいや! そもそも俺はその話を知らないぞ!?」

「む? 主もあやつらがリオンに稽古をつけてもらっているのは承知の上ではなかったかの?」

「それはそうだけど! 格闘とかそっちの話だと……」


 血筋で出せるもんだと思うじゃん普通は。

 思いつきもしなかったぞ。

 そんなの普通徒労に終わるに決まってんじゃん。

 何か知らんが鍛冶屋だったってのが良かったのか?

 火のイメージあるし。

 知らんけど。


 とにかく、甚大な被害だ。

 道場やぶりなんてする輩なんだ。

 そもそも近接戦しか興味がないだろう。

 鞭とかですらダメとか言うレベルなんじゃないのか?

 となると、まさかこんな先制攻撃がくるなんて思っていない。

 そもそも爆弾なんてもんが認知されていないから何をされたかもわかっていないだろう。

 受け身も取れずに吹き飛ばされたものが大半だったし、被害を受けなかったものも何が起こったのかわかっていない。


「次、行きますよ」


 アンの指示で第二射を構える子供たち。

 容赦なさすぎだろ!

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