煽り性能高すぎ問題

「ま、待て! 我らは……!」

「投下」


 号令により爆弾が放り込まれ、ドゥによって次々と起爆されていく。

 そもそも、隣の爆発に巻き込まれて誘爆してるやつも多いしな。


「あ、あいつだ! あいつを狙え!」


 相手も真の馬鹿ではなかったらしく、起爆させているのがドゥだと気づく。


 ヒュヒュンッ!


 しかし、ドゥの周りに弓兵が待ち構えており、近づくに近づけない。


「弓の練習とかしてたっけ?」

「しておらんかった気がするがの」


 どう見ても狙いはてんでバラバラ。

 しかし、数の暴力と、一応前に飛ばせており、ある程度殺傷能力を持った速度は出ているという事で迂闊に飛び込めない。

 向こうからしてみればこっち陣営が弓の練習してるかどうかなんて知らないわけだし。


 弓とか銃とか、射出する系の武器は撃つだけなら簡単である。

 当てるのが非常に難しいというだけだ。

 そして、今回は当てるのが目的でなく、牽制して動かせないようにするのが目的なので乱射しておけばそれで役割を果たせるというわけだな。



「い、一騎打ちを所望する!」

「はぁ?」


 第二波が収まったくらいであのリーダーと思しき男が声を上げる。

 にしても全く的外れなのでアンも間抜けな声が出てしまっているが。


「こんなのは不当だ! 正々堂々と立ち合え!」

「立ち合う力も持たない孤児院を大人数で襲おうとしていたのはどこのどちらです?」


 全くもってその通り。


「それは代表が立ち会わなかったせいだ! 我らは関係ない!」


「はぁ? あいつ何言ってるんだ?」


 言ってることが支離滅裂すぎて理解できない。

 俺が立ちあわなかったから孤児院を襲って俺を誘い出すというところまではまぁ良しとしよう。

 いや、良くはないがこうして出てこざるを得ないわけだしな。

 だが、言うに事欠いて関係ないだと?



「アン」

「! ご主人様! よろしかったのですか?」


 出てきて、という意味だろうが。

 もちろん、出てきただけだ。


一対一タイマンであいつどうにかしろ」



「お、お前が、主人か!? 尋常に……」

「うるせぇ、三下。これ以上子供たちに理屈通らないことを聞かせんじゃねぇよ。アンが代わりに相手してやるから、精々足掻け」


 スッと前に出て槍を構えるアン。

 いつもの如く、どこから出してきたのかはわからない。


「用意」


 声をかけると、リーダーも剣を抜き、下段に構える。

 中々様になってるじゃん。


「はじめ!」


「キェアァァ!!!???」


 叫び一閃。

 強く踏み出したリーダーの声が途中から驚愕に代わる。

 最初の一瞬の気合はどこへやら、尻もちをついて逃れる始末である。


 それもそうだろう。

 あと一瞬踏み込みが早かったなら、自分の右目を貫くような軌道でアンがぶん投げた槍が通過していったのだから。


「あら? 少々高く見積もりすぎましたか。あんなに踏み込みが遅いとは……」


 アンはと言えば、余裕綽々。

 ぶつぶつと独り言を言っているが、煽り散らかしている。


 どうしてあんなに口が悪くなったんだろうな?


「十中八九、主の影響じゃな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る