妹に心配される兄

「たのもう!」

「……次はなんだ……?」


 翌日、また同じような訪問者が現れる。

 違う点は、明らかに野太く男の声だった昨日に対して本日は明らかに女性の声である。

 さらに言えば、明らかに幼い。

 感覚的には14歳くらいではないか?

 いや、こっちにおける年齢で言えばどうなのかはわからんが。


「我が兄の決闘の申し込みを無下にするとは何という事か! 兄の名誉回復のため、この私が決闘を申し込む!」


 いや、まじで何言ってんの?

 そもそも決闘をしないって言ってはないけど態度に出して無視してんのに、それに怒ったから決闘しろって言ってることめちゃくちゃじゃないか?


「どういたしましょう」

「ほっとけ」

「しかし、それではご主人様の身動きが……」

「とれなくても何とかなるだろ。頼りにしてるぞ」

「お任せください」


 俺がお願いすると張り切りすぎる節はあるが、ちゃんと成果を残してくれるメイドたちだから、信頼している。


「リオンも、一応見張っておいてくれるか」

「任せてよー。どうせ、ちょっと危なくなったら助けるつもりなんでしょー?」


 こういう時に物語の主人公は楽観視して誰かがなんかされてから動き出すことの方が多いが、リオンに頼むことによってそれは限りなくゼロに近くなる。

 リオンに勝てるやつなんかまず存在しないし、互角のやつがいたとしても俺がつけばリオンが勝てるだろうからだ。

 俺が目的である以上、俺は下手に動かない方がいいのは確実だからな。


「こらー! あけろー!」

「で、宅配業務に関してなんだけど……」

「聞こえてるんだろー!」

「はい、アンリ様にも相談しましたところ、特に問題の方はないとのことでした」

「オッケー。予想通りだ。じゃあ、次は……」

「聞こえてるんだろー……? うぅ……」


 ここで大抵の人は「泣くなよ!」とか言って出ていってしまうのだろう。

 いや、俺は出ていかない。

 ここで試されるのは鋼の忍耐力。

 というか、俺からすれば仮に女の子であっても普通に知らない人なのでどうでもいい。


「オーシリアは俺についててくれ。なんかあったらすぐに移動するぞ」

「了解じゃ」

「このままじゃ兄が悪いことしちゃうよう……」


 妹に心配されるようなことしようとしてるのかあいつは……。

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