34日目 魔境

「で、ちょっと体を動かそうと外に出たが衛兵に見つかって追いかけられたので全力で部屋に戻ったと」

「そうなるね」

「はぁ……」


カイル殿が呆れたように頭をガシガシかく。


「お前は今うちの国賓なんだから堂々としてれば良かっただろうが。獣人族の衛兵が一晩中探しても見つからなかった侵入者としてめちゃくちゃ噂になってんじゃねぇか」

「僕としては事を荒立てたくないと思った結果だったんですけどね。申し訳ない」


「まぁいい。俺が見て、問題ないと判断したことにしておく。じゃあ、行くか」

「お願いします」


遂に初の協会か。

緊張するね。



「よぉー、爺さん! 久しぶりに顔を見せたなぁ!」

「お前は俺がくるときは毎回絡んでくるのをやめれんのか」

「そう悲しいことを言うなよなー!」


山を越え、そびえ立つ凄く高い建築物に辿り着いた。

ランガルから行くには必ずドルガバ付近を通らねばならないから、国交がないうちは難しかっただろうね。


「で、お前は?」


カイル殿に絡んでいた僕と同じくらいの年の青年が声をかけてきた。


「申し遅れました。私はランガル王国の特使であり、エルランド王の……」

「あぁ、そういうのは他のやつにやってくれ。俺は興味ないから。で、お前は誰なんだ?」

「……キラと申します」

「ふーん、キラ。キラねぇ……」


少し思い出すような素振りをした後。


「あー! あいつか! ずっと98位から序列変動がない奴!」

「あ、はい、それが私ですね」

「そうかそうか! よく来たな! 歓迎するぜ!」


バシバシと肩を叩いてくるけど、まず誰なのかな?

カイル殿とは知り合いのようだけど。


「悪いな、キラ。そいつはリュート。序列は18位だ」


まさかのカイル殿より上!

一気に緊張感が増すね。


「おいおい、そう固くなんなって。俺は喧嘩とか割と嫌いだからさ!」

「どの口が言うんだお前は。毎回俺に挑んでくるくせによ」

「あんたは別だって」


序列18位が26位に挑むのか……。


「あぁ、気にすんな。とりあえずお前は来るのが初めてだからな。受付だけ済ませてしまおうぜ」

「受付?」


そんなものが?


「ようこそ協会へ。リュート様とカイル様。そちらは?」

「98位のキラ君だ。登録頼む」

「かしこまりました」


この受付の人からも強そうな気配を感じるなぁ。


「はい、登録が完了いたしました。これでいつ来てくださっても構いません」

「もうかい? 何か証明するようなものは?」

「必要ございません」

「そうか。ありがとう」


先に歩いて行っていたリュート殿とカイル殿に追い付く。


「カイル殿。あの受付の方は……」

「ん? あぁ、あいつは今何位だったっけか。56?」

「いや、54だな。この前上がってたぞ」

「まぁ、そんなところだ。物好きだよな。それで受付なんてやってるんだからな」


会う人会う人二つ名ダブル持ちの序列持ち。

凄いところだ。

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