41日目 珍味

「あら、レインちゃん。今日はどうしたんだい?」

「こんにちは、おばさま。えっと、おすすめとかありますか?」

「そうねぇ、これなんてどうかしら。採れたてよ」

「じゃあ、それをお願いします」


今日も今日とて買い出しです。

リブレさんはけっこう食事にはうるさかったですが、量はあまり食べていませんでした。

むしろオーシリアさんの方が食べてましたね、杖なのに。

しかし、プリンセちゃんが放っておくといくらでも食べるのであまり食材の量は変わっていないかもしれません。


野菜は私が買い出しに行っているのですが、お肉はプリンセちゃんが森に出かけていって捌いて持ってきてくれます。

少々部位がなかったりしますが、本人にお腹は大丈夫か聞いたところ、


「……生肉、おいしいよ……?」


との事だったので大丈夫でしょう。


ちょっと前からキラさんもどこかに行ってしまっていますし、懲りたのかエルフの方も動きがありません。

リブレさんがいたころは何か起こっていないとおかしいみたいなものでしたが、流石にそうそうあんなに起こりません。

これでリブレさんがトラブルを引き寄せてしまう体質であるという事が判明しましたね。

ただ、リブレさんは今回はちゃんと寝ていてここにいるのに何も起こらないという事は、夢の中でなにかやってるかもしれませんね。


「よぉ、嬢ちゃん! こっちでも何か買ってかないかい?」

「? こちらのお店は……?」

「ドルガバの方から仕入れが入ってな! 俺に話が回ってきたんだよな!」


見たことのないお店があります。


「うわぁ……」


お魚さんがいっぱいです……。

リブレさんが好んでどこかから持ってきていましたが、そもそも私たちにはお魚を食べる習慣がありません。

プリンセちゃんは気に入っていましたが、私は生の状態のぬるぬる感が苦手です。

というか、プリンセちゃんは苦手なものがありませんからね。


「これは?」

「いや、俺も名前は知らないんだけどな」

「知らないんですか!?」


店主が売ってるもの知らないとか本当にヤバくないですか!?

こういう時にリブレさんがいたらもっとしっかりツッコんでくれるんでしょうけど。

さらに言えば、魚の説明までしてくれるんでしょうけど。


「お、珍しいものおいてんな!」

「わ! びっくりしましたよ、ケインさん……。目の調子はどうですか?」

「がはは! それがな! 見えない以外は何の問題も無いぞ!」

「いや、それが一番の問題だと思うんですけど……」


本人がこんな感じだからあまり気にしてる人がいませんが、リブレさん以外で幻想級ファンタズマルの影響を受けているのはケインさんだけなのです。

だから、私としてはケインさんの病状も気にしておきたいのですが、色々と規格外すぎて参考になりません。


「あ、そうだ。レイン嬢。王が呼んでたぞ」

「エルランド王ですか? なぜです?」

「そこまでは知らねぇな。あ、店主! これ箱1杯貰えるか?」

「! はい、ただいま!」


リブレさんじゃないですけど、私何か怒られることしましたっけ?

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