研鑽の成果

「どうでしょうか?」

「おいしい!」


苦節1か月。

メイドたちによるスープ作成計画は功を奏した。

豚骨でありながら、野菜のうまみがふんだんに出ており、気持ちあっさりとしたおいしいスープとなっていたのだ。


「これなら十分に商品として出せる!」


俺のお願いなら大抵何でもすぐに叶えてくれるメイドたちだが、今回は流石に苦戦していた。

なにせ、彼女らが知らないものを俺が適当なイメージで語るものに近づけなければいけないのだ。


本当に幾度の試行があっただろうか。

彼女らがもってくる試作品のスープを飲んでみては微妙な反応を返し、がっかりする3人をなだめてどうにか次の試作へと誘導する。

3人は俺の期待に応えることを生きがいにしているまであるので、ダメ出しをするのは本当に心苦しかったが、仕方がなかったのだ。

俺がおいしいラーメンを食べたかったのだから!


あとは、麺と合わせてみてどうなるかということだが、これはもう問題ないのではないだろうか。

縮れ麺だったらこれ、とか。

ストレート麺だったらこれ、とかあるのだが、俺が作った麺はどっちつかずである。

つまり、適正であるものがない。

もうなんでもいいのではないだろうか。


そして、店の問題だが、これはミニアさんに掛け合ったところ、


「屋台くらいならうちで用意してあげるわー」


とのことだったので、ご厚意に甘えることにする。

もうそこら辺の知識は皆無に近いからな。

最初に店ごと動かしてしまえって考えた奴は天才だよな。

そりゃ野菜とかなら移動販売できるだろうが、ラーメン屋とか火を扱うわけだから。

仕組みが中々に複雑になるはずだ。

よく作ろうと思ったよな。



「どうだ?」


完成品をリオンに食べさせる。

リオンのお気に入りという売り出し文句を使う気であるので、ここの反応は非常に重要となる。

もちろん、反応が芳しくなくとも売り出し文句として使えるものは使えるだろう。

だが、まぁ嘘をつくことは出来るだけ避けたいからな。

店の信用ってやつだな。

小さな店だとそれだけで倒産するからな。


「おいしいよー! これ凄くいいと思うー!」


絶賛である。


「お! それは良かった!」


これで気兼ねなく売り出し文句を使えるな。


あとは、出資してくれたミニアさんのところにもこのまま行ってみるか。

完成したことを伝えに行かなきゃな。



「あらー、わざわざありがとうねー」

「いえいえ、当然のことですよ」


正直、馬に引かせてるとはいえ、割りと遠いので長旅ではあったが。

一週間くらいで辿り着いたのでよしとしよう。


「こちらが、完成品になります」

「じゃあ、いただいちゃおうかしら」

「よければ皆さんもどうぞ」


サンプルは多ければ多いほど良いからな。

余裕があるし、働いている人たちにも振る舞うことにしよう。

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