アキバのアイドル

「それで、リブレ、と言ったかの?」

「あぁ、俺はなんと呼べばいいんだ?」

「なんでも構わんよ。所詮、先のない年寄りじゃからの」


ふぉふぉふぉと朗らかに笑うお爺さんは俺よりも長生きしそうだ。

本当に寿命の関係上起こりうるだろうな。

なんか、悲しいな。

猫とかってこんな気持ちなのかな。

後に生まれて先に死ぬってきつい。


「じゃあ、分かりにくいけど領主って呼ばせてもらうよ」

「うむ、では本題じゃ。お主はバンフリオンのことをどう思っておる?」


ん?


「いや、そりゃ強いし、頼りがいがあると思うぞ」

「では、容姿はどうじゃ?」


は?


「……美人だとは思うけど……」

「ふむ、問題ないな」


ここまで言われればわかる。


「……俺にそういう意思はないぞ」

「そうは言うがの。ここまでくればもはや。注目すべきなのはバンフリオンがお主のことをよく思っておるという事じゃ」

「……随分な言いようだな」

「お主には悪いが、バンフリオンは今まで男性に気を許したことなどなかったのじゃ。それが見てみろ。お主にはあれほどまでに心を許しておる。となれば、お主との縁談を考えていくじゃろうよ」


悪いと思っているとか言いながら1ミリもそういう感情は出ていない。

あれか。

もはやこの人の中では決定事項なのか。


「この世界の頂点に立つ者の身が固まっておるかおらんかはかなり重大な意味を持つのじゃ。考えてもみろ。男ならまだしも、バンフリオンは女じゃ。野心のある男からすれば付け込もうと考えるじゃろうな」

「それが可能かどうかは別にしてもな」


確かに、女性の方が身を固めないといけないという意識は強いかもしれない。

リオンの婿になればこの世界の主になるに等しい。

実質的な権威はリオンにあるとしてもだ。


「となれば、わしのようにバンフリオンにしっかりとここを治めてもらいたい者にとってはバンフリオンが信頼できるものを早々に婿としておきたいのじゃよ」


まぁ、理屈はわからんでもない。


「だが、それこそ俺はともかく、リオンの許可は必要だろう」

「そこは心配ない。さっきも言ったじゃろうが。バンフリオンがお主ほどに気を許したやつはおらん。説得はどうとでもなるのじゃから」


ふーん。

こういう昔気質の人の意見を曲げるのはもはや不可能に近い。

俺にはどうしようもないだろう。


「なら、リオンに言ってみればいいだろう。なぜその話を俺に?」

「お主から言ってもらった方が話が早く進むと思ったからじゃよ。どうやらその意思はないようじゃがな」


そりゃそうだ。

レインがいるのに他の世界でプロポーズしてましたとか、それはちょっとねー。

世間は許してはくれませんよ。

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