有名人嫌い

俺の自己紹介に対してむぅーと不満げなリオン。


「どうした?」

「リブレはもっと自分のことをわかった方がいいよー。そんなに謙遜して生きてたら損するよー?」


俺、なんか謙遜してたか?

自分でも一定の実力はあると自負しているが、あくまで一定である。

逆立ちしてもキラやアンリさんには勝てない。


更に言えば。


「俺が目立ちたがらないのは知ってるだろ? このくらいの自己紹介でちょうどいいんだよ」


なんならこの自己紹介もなくしたかったくらいだからな。



「ふむ、まぁよいかの。客人をいつまでも外におらせるわけにもいかんからな。ほれ、ついてこい」


くるりと背を向けて屋敷へ歩き始めるお爺さん。


「主、主。あやつ、主のことを見切っておるようじゃぞ?」


ローブの背中側、荷物を背負っているように見せかけているところから顔を出してきたオーシリアがそんなことを言う。


「そうみたいだな。油断してくれていたら良かったんだけど」


俺のような攻撃力のない奴にとっては初擊が入るかどうかは生死を分ける。

油断しているならまだしも、そうでない領主クラスに有効打を与えるのは難しいだろう。

もし、戦闘になればの話だが。


「とりあえず害意はないようだから安心だけど、俺そんなオーラ出してたか?」

「む、安心するのじゃ。主はいつもの一般人オーラでしかなかったぞ。あやつの目が凄いというだけじゃな」

「そうだよな」

「ご主人様、そこで安心されるのは少し違うと思いますが……」

「なにを言う」


自分で自分のオーラというか、存在感のようなものを操れないというのはかなり致命的だ。

俺に言わせれば「どうしても存在感が溢れてしまう」芸能人なんて存在しない。

だってあれ絶対にちょっとは気づいてほしいと思ってるじゃん!

ほんとに気づかれたくないならもうちょっと出来ることがあるだろうが!


という有名人嫌いは置いておくとして。

隠れなきゃいけないときに存在感が溢れて見つかっちゃいました、とかシャレにならんだろ。

逆に存在感の絶対値が大きければ、周りの視線を集めて他の奴に向いてる意識を散らすということもできる。


マジックとかでも代用できることはあるが、手遊びでやったことがある程度でその手のプロには遠く及ばない。

ただ、マジックの欠点として、見破られたら相手を勢いづかせてしまうというのがある。


「なるほど、勉強になります」

「まぁ、意識しといて損はないと思うぞ」

「承知いたしました」


向上心が高いのはいいことだ。



「さて、わしはバンフリオンがアンリの次を継ぐことになんの異論もないわけじゃが、他に何かあるのかの?」

「いやー、特にはないんだけどねー」

「なら、わしからそやつにいくつか質問があるんじゃが、良いかの?」

「うん、もちろんー」


あ、俺?

俺の意思関係なく?


「しばし、2人だけにしてくれんか。なに、悪いようにはせんから」


そういう時に本当に悪くしない時ないだろ……。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る