男にはやらねばならぬ時がある

「そろそろ、代わってくれませんか? あなただけご主人様の上に乗るのはずるいです」

「そうですよ。少しだけですが、腰も動いてしまっているではないですか」


聞き捨てならない言葉があった気がする。

これって俺がマッサージされてるだけだよな?


「では逆に聞きますが、あなたたちはご主人様に後ろからでも跨がって、腰を動かさないでいられる自信はありますか?」

「くっ、そう言われると……」

「自信はないと言わざるを得ないですね……」

「なんでそこで納得するんだよ! 止めろよ!」


全員まともじゃなかった!

普段は頼りになるのに!


「リオン! 助けてくれー!」

「はいはーい。弟君に頼られちゃったら、頑張っちゃうお姉ちゃんですよー」


リオンならメイド3人がかりでも歯が立たないのだ。

これで俺は脱出できる。


「バンフリオン様」

「なにかなー?」

「今ならそちらをお譲りしますが」

「のったー」

「秒で!?」


リオンが寝返った。

背中のメイドから俺の頭の方を示されたようなのだが、リオンはどうも俺に膝枕をするのが好きらしい。

俺は逃れられるときは逃れているのだが、今は絶賛動けない。

よって、出来ると踏んだらしい。



ふよん。


「んっ……。ちょっとくすぐったいかもー」


普段は俺が仰向けだから足にかかる俺の息がくすぐったいらしい。

反応が色っぽすぎる。

そういうのやめて。


……この状況、レインに見られたら即処刑コースだろうなぁ……。


流石に罪悪感に耐えきれなくなった俺は一度も言っていないことを口にする。


「……悪いが、俺には彼女がいるんだ。今は会えないけど、だからと言って何をしてもいいわけじゃない。その辺りも、少しは考慮してくれると助かる」

「えぇーー!!??」


とても衝撃を受けているリオンと違い、メイド3人衆は冷静だ。


「お、お姉ちゃんにそういう大事なことは言いなさいよー!」

「お姉ちゃんなら、察してくれてもいいだろ?」

「ぐっ……!」


意味不明な論理だが、なぜか効いている。


「私たちは薄々察しておりましたので」

「お側に置いていただけるだけで」

「愛人でもいっこうに構いませんので」

「身を引く方向を間違えてるな」


ある意味厄介である。


「で、でも、お姉ちゃんはお姉ちゃんだから」

「だから?」

「やましいことなんて一つもないよね!」

「その思考が出てる時点でダメだろ」

「はうっ!」


本当に何も思うところがないならそんな考えも起きない。

起きたとしても確認する必要がない。

というかむしろ、リオンにその自覚があってよかった。

本当に弟だと認識されてるのかと思ってた。


「だから、今晩から添い寝も禁止。いいな?」

「……」


返事をしないリオン。

今日からオーシリアにステッド・ファストで囲ってもらってから寝よう。


正直、もったいないと思わなくもないが、これも必要な処置なんだ……。


「ご主人様が血涙を流しているように見えます……」

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