逆玉の輿ってあるのかな

俺から発表があった3日後。

領主からようやく会えるとの連絡が届いた。

メイドたちは察していたと言っていた通り、俺に彼女レインがいると聞いても態度が変わることはなかった。

だが、リオンは何事かを考えこんでいるようだ。

いつもより静かだし、不用意にべたべたしてくることはなくなった。

まぁ、時々は衝動的に抱き着いてくることはあるけど。


「よし、行くとするか。道案内よろしく」

「お任せください」


とりあえず門の前までたどり着き、取り次いでもらう。


「リオン。何を考えているのかは知らんが、とりあえず帰ってこい。今はここをやり過ごすのが最優先だろ」

「あー、うん。そうだねー」


頭をフルフルっとやってちょっと気を引き締めるリオン。



「ご案内いたします」


どうやらこの人が俺たちを案内してくれるらしい。

もう、「これぞセバスチャン」って感じの執事だったのにはこの際言及しないでおこう。

この世界でそういう制度が大切にされているのはよーくわかった。


「ようこそおいでくださいました。私は……」


名前とかは覚えるのが面倒なので聞き流す。


「して、今回はどういったご用件で?」

「私の挨拶回り、といったところでしょうか。正式にご挨拶したことはなかったですよね?」


流石のリオンもちゃんとした口調になっている。

2人が言葉を交わしている間に俺は護衛の役割を果たすべく、領主を観察する。

{欺瞞}が表層にありありと出てきているところを見る限り、好意的でないのは間違いないが、どこが嘘なのかがいまいちはっきりとしない。

この辺は言葉選びが上手いな。


「なるほど。アンリ殿はバンフリオン殿にもう席をお譲りになるのですかな?」

「そういったわけではないでしょうが、将来のことを見据えているのでしょう」

「ほうほう……」


ここで領主は考え込む。


「ところでバンフリオン殿」

「なんでしょうか」

「もう身を固めることはお考えですかな?」

「は?」


唐突な言葉に素が出るリオン。


「いえ、アンリ殿も先代から役目を次ぐ頃には奥方を迎えていらっしゃったと記憶しておりますから。よろしければうちの息子を候補にでも思ったのですが……。おい」

「は」


領主がセバスチャン(仮)に指示をすると、大柄な男が入ってきた。


「うちの長男になります。実力は保証いたしますよ」


領主が言うとおり、体も大きく、膨らんだ筋肉はいかにもパワー型のようだ。

細めで策を凝らすタイプだろう領主とは逆のタイプだろう。

ありがちなパターンだとここでこの前叩きのめした偉そうだったひょろいやつが出てくるのだが、そうではなくて良かった。


だが、今は親の前なので自重しているのだろうが{情欲}しか視えないぞ、こいつはこいつで。


「いきなりそんなことを言われましても。正直、困惑しています」

「それはそうでしょうな。ですから、せめて少しでも息子のことを知ってもらうために今晩、夕食会を催したいのですがいかがでしょう。もちろん、一晩の宿くらいは用意させて頂きますよ」


親の逆玉の輿作戦が見え見えだぁ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る