欲に忠実すぎる
「情報をくれたのは、長の使者だよ……」
「ほう」
長、ねぇ……。
「ハンネ」
「任せなさい!」
「いや、嘘は言ってないって! あんたにならわかるんだろう!?」
「いや、まぁ、そうなんだけど。なんとなく」
「元々、こっちに補給物資を売りに来る計画はあったんだけどよ。こっちがどうなってるのかもわからないし、いきなり押し掛けていって迷惑になるのもダメだ。という事で断念しようかと思ってたんだ」
「そんなとき、エルフの長の使者を名乗るやつが来たんだ。最初はなぜエルフが俺らなんかにと思ったが、そいつが伝えるこっちの様子があまりにも細部まであったから、とりあえずそこは本当だろうと思ったんだ」
「しばらくはただ情報だけ貰っていたが、ある日商談があると言われてな。俺たちはそいつの話を元にこっちに売りに来る計画を立てていたから、役に立てればと思って聞いてみることにしたんだ」
「そこで今回のことを聞かされたと」
「そうだ。信じられるか? 俺も最初は話にならんと思ったさ。だが、計画を聞くと細部まで拘られててこれなら必ず成功すると思えるような徹底ぷりだった」
まぁ、拐うこと自体には成功してるわけだしな。
「俺たちはドルガバに避難させてもらっている身だ。どれだけ欲があってもそこで発散するというのは気が引けた」
うん、どんな倫理観だよ。
エルフならいいのか。
「当日は、俺たちが拐う相手を誘導してくれるという話だった。正直、溜まりにたまっていた俺たちはその話に乗ったんだ」
非常に胸くそわるい話だったのでまとめると、エルフから少女らを拐う誘いを受け、自らの性欲に従って動き、エルフの計画のもと実行したと。
もう、あれだな。
ため息も出ないほどのバカだな。
「キラ」
「了解」
トン。
バリッ!
キラがリーダーに触れると電流が流れ、気絶する。
気絶させた奴は他のやつらとまとめて山に放っておいて貰った。
「リブレさん、本当なんですか? あの長が……」
「問題はそこなんだよ」
俺も、流石にあの用心深い長がそんなことをするとは思えない。
だってこいつらが実行する振りだけして俺たちに報告していれば、向こうの立場がどうなっていたかわからないのだから。
「今の話自体には嘘はなかったと思う。だから、あるとすればあいつが持ってる情報がそもそも嘘だった場合だな。具体的には、長の使者だという部分」
普通に考えて、そんなことを名乗らなくないか?
人間のことを下等とみなしているエルフが人間に対する義理立てを考えるとも思えない。
「十中八九そこが違うんだろうな」
だが、相手がエルフであることにはリーダーは疑問を持ってなかった。
つまり、エルフの中に長を語ったやつがいるってことだ。
「こうなると俺は無力だな」
「わしの方から掛け合ってみるかの。じゃが、果たしてちゃんと答えてくれるかどうか……」
「あぁ、まぁ、そこはダメ元で頼むよ」
王様に正式なルートでどうにかしてもらうしかないか。
俺が出るとなんでも拒否されかねない。
「失礼します。リブレ殿に、お客様です」
エイグが謁見の間に入ってきて伝えてくれる。
俺に?
「誰?」
「いえ、私もエルフの方としか聞いておりません」
エルフ?
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