思わぬ訪問

「……こんにちは」

「あ、はい、こんにちは」


なんでそんな開幕から不機嫌なの。


エイグに連れられて行った応接室のような場所には、見覚えのあるエルフの少女たちとそれぞれの親らしい姿があった。

少女たちが手を振ってくれて、和んだから大丈夫かなぁと思ったのにな……。


「まず、確認しておきます。リブレさん、あなたに娘たちを救っていただいたことは間違いありませんね?」

「あ、はい、そうです」


初対面ということもあり、俺は言葉少なだ。

というかなんでこんな取り調べみたいな雰囲気なの。


「「本当にありがとうございましたー!!」」


からの渾身の土下座!

なにゆえ!?


「え、な、何ですか!?」

「娘たちの純潔を守っていただいたこと、本当に感謝しております! 私たちといえば、そんなことに気づきもせず……。町まで送っていただいたお陰で不安な思いもしなかったようですし……」


俺が少女たちを見ると、ニコッと笑い返してくれる。

いや、可愛いんだけどね?

俺、名前は出すなって言わなかったっけ?


「と、とりあえず、頭をあげてください。助けたのは俺だけじゃありませんし。というか実質レインとプリンセが助けたようなもん……」

「僕たちはリブレさんに従っただけです」

「……すごいのは、リブレさん」

「そうですか! もう、本当にこれだけでは頭を下げたりないくらいで……」


土下座で下げたりないってなに!?

土下寝?

いや、でもあれ別に頭の位置は変わってないしな。

体の位置と相対的に考えるとむしろ上がってるし。


「いや、まぁ、助けたのは事実ですし、自分としても良いことをしたと思ってましたけど、そこまでする必要は……」

「娘の純潔を守っていただいた相手には最大の感謝を捧げるでしょう!」


周りの親たちもウンウンと頷く。



少々時間を取って、落ち着いて頂く。


「敬語など使わないで下さい。恩人なのですから」

「あ、じゃあ、そこはお言葉に甘えて」

「娘たちがあのような姿で帰ってきたときは卒倒しかけましたが、何もされてないということを聞き、本当に安心しました、改めて、感謝しております」

「あ、はい、どうも」


「リブレさん、『あ、はい』って言い過ぎですよ」

「しょうがないだろ!」


こちとらいつ豹変するかとびくびくしてるんだから!


「リブレさんのことを、誤解していたかもしれません。レイン様を取られたときはどうしてやろうかと思いましたが、幸せなようですし」


レインに目をやり、そこにも理解を示してくれる。

話せばわかる人かも知れない、この人。


「お礼としては、適切なものが思い浮かばなかったもので……。何の役にも立たないかもしれませんが、私どもに協力できることであれば、協力させていただきます」


そう言ってソファーに座って深々と頭を下げる母親たち。

人妻の色気というか、具体的には少し広く開いた深い胸元に目が……。


いったが、どうにか軌道修正した。

そんなことしてる場合じゃなかったんだ。

こんなわたりに船、乗らないのはもったいない。


「なら、調べてほしいことがあるんだけど、いいかな?」

「何なりと、私どもにできることであれば」


そこまで畏まられるとやりにくいなぁ。

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